非小細胞肺癌に対するNKT細胞を用いた免疫細胞治療の開発研究

文献情報

文献番号
201309046A
報告書区分
総括
研究課題名
非小細胞肺癌に対するNKT細胞を用いた免疫細胞治療の開発研究
課題番号
H24-被災地域-指定-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
本橋 新一郎(千葉大学 未来医療教育研究センター(大学院医学研究院 兼任))
研究分担者(所属機関)
  • 吉野 一郎(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 中山 俊憲(千葉大学 未来医療教育研究センター(大学院医学研究院 兼任))
  • 花岡 英紀(千葉大学 未来医療教育研究センター(医学部附属病院 兼任) )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
42,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 原発性肺癌は高齢社会の到来と共に罹患者数・死亡者数とも増加傾向である。特に切除不能進行期および再発非小細胞肺癌の予後は未だ不良であるため、新規治療法の開発が求められている。そこで千葉大学では強力な抗腫瘍効果を持つNatural Killer T (NKT) 細胞とその特異的リガンドα-Galactosylceramide (αGalCer)に着目し、体内でNKT細胞活性化を目指すαGalCerパルス樹状細胞療法の開発研究を行っている。本研究では、進行・再発非小細胞肺癌に対するαGalCerパルス樹状細胞の静脈内投与に関する第Ⅱ相臨床研究を行い、その有効性や安全性、NKT細胞特異的免疫反応を検討することを目的とする。また、本臨床研究を適切に遂行していくため、ICH-GCP基準の臨床試験実施体制の整備を行い、これに基づく試験を展開する。
研究方法
 切除不能進行期または再発非小細胞肺癌の診断にて、初回化学療法施行後の症例に対して同意取得後に成分採血を行い、末梢血 単核球を採取、決められた手順書に従って樹状細胞の誘導を行った。投与基準に合格したαGalCerパルス樹状細胞を培養7日目と14日目に点滴静注した。これを1コースとして計2コース施行した。主要評価項目として全生存期間、副次評価項目としてRECIST ver.1.1に基づく抗腫瘍効果判定による奏功率、疾患制御率、無増悪生存期間、CTCAE ver. 4.0を用いた安全性の評価、NKT細胞特異的免疫反応の検出を検討した。投与した培養細胞は表面抗原発現の解析を行った。また臨床試験の施行にあたり実施体制、モニタリング体制、監査体制およびデータマネジメントの整備を行い、これに基づいて試験を実施した。
 本研究の実施にあたり、千葉大学大学院医学研究院倫理審査委員会による承認を受けている。また全ての被験者に対し口頭ならびに文書によるインフォームドコンセントを得ている。
結果と考察
 本年度は2014年3月末までに10名の新規登録を行い、昨年度からの治療期間継続症例1名を加えた11名で細胞治療を行った。試験開始からは19名の患者を登録した。35例の目標登録数に向けて、細胞調製室利用調整や適格症例のリクルート活動により症例登録を加速し、来年度に症例登録を完了させる予定である。治療期間終了後の全例で追跡調査を実施し、5例において原病死を確認した。これまで得られた抗腫瘍効果は、部分奏功1名、安定6名、増悪9名であった。増悪を認めなかった症例の追跡調査で、5例にて病勢の進行を認めた。今後もプロトコールに沿って追跡調査を実施し、全生存期間、無増悪生存期間を確定させる予定である。本年度に細胞投与を受けた11例で重篤な有害事象を認めなかった。1例で一過性の高血圧、2例で無症候性の血清アミラーゼ値上昇を認め、グレード3と判定した。グレード2の血清カリウム高値を3例に認め、その他の有害事象はすべてグレード1と判断された。
末梢血を用いた免疫モニタリングとして、NKT細胞数、NK細胞、αGalCer反応性インターフェロンγ産生細胞数を解析し、治療後にそれぞれ5例、10例、7例で増加を認めた。全身的なNKT細胞特異的免疫反応が臨床効果を誘導すると考え、免疫モニタリングがその証明する手段となり得るか今後症例を追加し検討していく。培養細胞の各種表面抗原分子の発現率には症例間で差を認めたものの、各症例とも4回の投与細胞で安定した発現を示した。末梢血NKT細胞の増加にはHLA-DR発現が重要な可能性があり、臨床効果との相関も含めて今後検討を継続する。
臨床試験の実施において、プロジェクトを管理する専任のスタッフを配置し、また定期的な調整会議を責任医師の出席のもと毎月行い、進捗管理・有害事象の確認等を行った。また、モニタリング業務、システムを含めた監査、データマネジメント業務を実施した。専門性をもつスタッフと責任医師等の研究チーム形成がスムーズな連携を生み、モニタリング・監査・データマネジメント業務により試験の質の確保とデータの信頼性の向上が図られた。研究遂行にはチーム内の連携が不可欠であるため、今後も効果的な方法を確立していく必要があると考える。
結論
 非小細胞肺癌に対するNKT細胞を用いた免疫細胞治療の臨床研究をICH-GCP基準として実施するための体制整備を行い、実施した。進行・再発肺癌患者末梢血を用いたαGalCerパルス樹状細胞の調製とそれを利用した細胞治療は安全に施行可能であると考えている。今後もプロトコールに沿って予定症例数まで登録を継続し、生存期間の延長効果を検討するとともに、NKT細胞特異的免疫モニタリングの有用性を検討していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201309046Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
55,575,000円
(2)補助金確定額
55,575,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 26,787,459円
人件費・謝金 15,397,026円
旅費 96,140円
その他 469,375円
間接経費 12,825,000円
合計 55,575,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
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