文献情報
文献番号
201308017A
報告書区分
総括
研究課題名
結紮を必要としない微細縫合糸の開発に関する前臨床試験
課題番号
H25-医療機器-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小野 稔(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
研究分担者(所属機関)
- 佐久間 一郎(東京大学大学院工学系研究科精密機械工学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は、市販のポリプロピレン糸の自由端に小さなステンレス製のカシメ固定具を圧着した単純な構造の縫合デバイスを開発した。この縫合デバイスの最大の利点は結紮を要さないことである。通常の連続吻合完了後、固定具のカシメ溝に糸を通した状態で固定具を持針器でつまむことで糸が圧着されて糸が抜けなくなる。これまで心臓外科領域においても縫合糸を用いないで吻合を行うための様々なデバイスが開発されてきた。生体糊や合成接着剤が試みられたが、確実な出血の制御が不可能である点や過剰な癒着組織の形成が認められる点が問題であった。
今回の研究では、新たに開発したデバイスの有効性と安全性を大動物における冠動脈バイパスモデル長期埋め込み実験より評価することを目的とする。
今回の研究では、新たに開発したデバイスの有効性と安全性を大動物における冠動脈バイパスモデル長期埋め込み実験より評価することを目的とする。
研究方法
急性期評価を8頭の家畜ブタで、慢性期評価を14頭のミニブタを用いて行った。全身麻酔下に開胸し剥離した左右内胸動脈をそれぞれ、左前下行枝および右冠動脈に心拍動下で吻合した。8頭の家畜ブタのうち、6頭は開発したデバイスを用いて吻合し、2頭は従来縫合糸を用いて吻合した。14頭のミニブタのうち11頭は開発したデバイスを用いて吻合し残りの3頭は従来縫合糸を用いて吻合した。慢性期実験として1ヵ月、3ヶ月、6ヵ月の各遠隔期で安楽死後、吻合部を切除し病理評価を行った。
結果と考察
吻合時間、吻合後の血液流量についてデバイス群、コントロール群に有意差は認めなかった。遠隔期での血管造影では、開存率は両群ともに100%であり吻合部狭窄も見られなかった。病理評価では、デバイス周囲に細胞浸潤、線維増生、内膜肥厚などの炎症像が見られこれらは術後1ヵ月にピークを迎え、3ヶ月、6ヵ月の経過でこれらの炎症反応は沈静化していくことが確認された。また、デバイス群とコントロール群に炎症の程度差は見られず、デバイスによる血管損傷などの組織侵襲性も見られなかった。
結論
以上より、大動物を用いた冠動脈バイパス吻合において、我々の開発したデバイスは従来の縫合糸吻合方法と同様の有効性と安全性を有することが示された。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
-