非侵襲血中RI濃度測定を可能にするウエアラブル・サブミリ解像度PET装置の開発

文献情報

文献番号
201308016A
報告書区分
総括
研究課題名
非侵襲血中RI濃度測定を可能にするウエアラブル・サブミリ解像度PET装置の開発
課題番号
H25-医療機器-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 浩之(東京大学 大学院 工学系研究科 原子力国際専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 雅史(東京大学 大学院 工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻)
  • 島添 健次(東京大学 大学院 工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻)
  • 鎌田 圭(東北大学 未来科学技術共同研究センター)
  • 百瀬 敏光(東京大学 医学部 付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は非侵襲型血中Radioisotope(RI)濃度測定を可能とする、ウエアラブルサブミリ分解能PET装置の開発である。近年の超高齢化に伴い、癌、アルツハイマー病患者数は激増(癌6万年/年、アルツハイマー病12万人/年)している。Positron emission tomography (PET)は癌細胞の検知・アルツハイマーの部位の同定などに用いられる医療画像技術であり、早期診断法としての有効性から需要が増加し、機能向上も切望されている。一方、PET診断では、診断精度向上のため、投与したRIの分布を表すPET画像を定量化する必要がある。このため体内へのトレーサーの供給量、すなわち、動脈血液中のRI濃度を高精度かつ連続測定することが必要不可欠である。現状は長時間カテーテルを刺し続け断続的な採血を行うため、患者の苦痛が大きく、大きな負担となる。そのため、採血不要の非侵襲かつ高精度、軽量な連続的かつリアルタイム測定可能なRI濃度測定装置が強く求められている。上述の要請に答えるべく、Ce:Gd3Al2Ga3O12(GAGG)系の国産シンチレータを用いたサブミリピクセル結晶アレーと軽量、薄型のSi半導体受光素子アレーを組み合わせた、超高分解能PET装置を開発する。小型軽量なウエラブルPET装置により診断中に手首に装着することで非侵襲血中RI濃度測定が可能となる。
研究方法
本プロジェクトでは研究目的を達成するため下記の研究方法により行う。
①GAGG系シンチレータの高感度・短寿命化:μ-PD法という従来法の50~1000倍高速な単結晶作製が可能な融液成長法を駆使し、単結晶作製を行う。シンチレーション特性を測定解析し、高密度かつ蛍光寿命の短い組成を検討する。②結晶作製、シンチレータアレー作製:アレーの作製のため、微細かつ高精度な結晶加工技術と高速かつ安価なアレー作製を実現する組立治具の開発を行う③電子回路、放射線検出器の開発:GAGGを用いた微細シンチレータアレーとAPD、SiPMアレーをアッセンブリした検出器を試作する。ASICを含めた電子回路、SiPMは既存品を改良および新規開発する。④PET装置試作・評価・画像再構成:開発した放射線検出器4~8個を用いPET装置を構成する。PETリングについては手首に密接かつ、ウエアラブルにできるようなリング構造を採用する。画像再構成については、既存のAPD-PETの画像再構成法のジオメトリを変更し、最適化して対応する。試作したPETについては、PMDAとの相談の上、点線源、チューブファントム等による性能試験、専用ファントムを用いた画質評価やプールファントムによる散乱補正といった評価を経て基礎性能を確認し、装置仕様を決定する。⑤臨床試験:試作したプロトタイプPET装置を用いて東大病院において臨床試験を行う。
結果と考察
平成25年度は、GAGGの結晶組成の改良、短寿命化についての検討を行うとともに、GAGGの結晶アレーの製作に必要な治具を整備し試作を行った。GAGGに関しては今後寿命および発光量の観点から最適な組成を持つ素子を選定し開発を進めていく。また結晶のアレー化に関しては本年度の成果によりアレー化への見込みが立ったが、後段の光センサとの結合およびその際の精度について更に検討試験が必要であることが示唆された。また新規のシリコンフォトマルおよびASICの開発を行い正常な動作が確認された。光検出器およびGAGG結晶アレー単体としては500μmレベルの高分解能が達成可能であることが示唆されたが、一方で保護面による光の分散が100μmに対して300μm近く存在することが示され、保護面を設けない形での結晶との光学接合などを検討する必要が有ることが判明した。また東大病院による既存の小動物用のPETの結果から、2mmの血管に分布する放射能評価には既存の小動物用PET以上の空間分解能が必要とされることおよび感度についても十分なSNを得るためには向上が必要であることが示唆されている。
結論
結晶アレーの作成、電子回路、放射線検出器の開発および臨床試験の準備において、全体として順調に進展した。結晶アレーとしては500μm角厚み20mmのGAGGピクセルを施策した。また信号読み出し用の電流比較型TOT集積回路 (ASIC)の開発を行った。またアレー検出器の性能として既存のディジタルSiPMを用いた評価を行い問題点を洗い出した。また東大病院による小動物用PETによる測定により既存の小動物用PET以上の空間分解能が必要であることが示された。次年度は開発している放射線検出器を用いて小型PETの試作を行うことで基礎特性の取得および改良点を見出す。

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201308016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
65,000,000円
(2)補助金確定額
64,529,000円
差引額 [(1)-(2)]
471,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 40,530,468円
人件費・謝金 3,811,140円
旅費 3,807,475円
その他 1,380,624円
間接経費 15,000,000円
合計 64,529,707円

備考

備考
自己資金707円。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-