急性脳梗塞治療加速のための薬物超音波併用次世代普及型低侵襲システムの開発 

文献情報

文献番号
201308012A
報告書区分
総括
研究課題名
急性脳梗塞治療加速のための薬物超音波併用次世代普及型低侵襲システムの開発 
課題番号
H24-医療機器-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
井口 保之(東京慈恵会医科大学 内科学講座 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 峰松 一夫(国立循環器病研究センター 病院)
  • 山本 晴子(国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター)
  • 古賀 政利(国立循環器病研究センター 病院脳卒中集中治療科)
  • 小川 武希(東京慈恵会医科大学 救急医学部)
  • 横山 昌幸(東京慈恵会医科大学 医用エンジニアリング研究部)
  • 福田 隆浩(東京慈恵会医科大学 神経病理学講座)
  • 三村 秀毅(東京慈恵会医科大学 内科学講座神経内科)
  • 丸山 一雄(帝京大学 薬学部)
  • 幸 敏志(田辺三菱製薬株式会社 研究本部)
  • 川島 裕幸(株式会社カネカ 開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
28,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超急性期脳梗塞に対して強く勧められる治療法として広く行われているのがrt-PA静注療法である。この療法により、予後は一定の改善を示すが、さらに高い改善効果が強く望まれている。このrt-PAの血栓溶解作用をさらに高める方法の一つが、超音波血栓溶解促進療法である。この療法は、超音波照射によって,主にrt-PA分子のフィブリン網目への浸透が促進することで血栓溶解を促進する。この療法において最重要なことは、有効で安全な超音波照射である。当然、その浸透促進作用は超音波強度が大きければその作用は強くなるが、強い超音波照射による生体への障害が懸念されることとなる。
 これまでに、超音波血栓溶解促進療法の臨床試験は数件実施されたが、未だ認可に到った例は無い。本研究はこのrt-PA静注療法の有効性と安全性を飛躍的に高めるための新規超音波照射併用療法を開発する。この開発は、中周波数超音波照射、定在波抑制、貼付型超音波振動子、バブルリポソームの技術を組み合わせることで、より効果が高く安全な線溶療法を確立する。さらに、臨床のヒストリカルデータを精密に収集・解析することで、より少人数・短期間の臨床試験を可能とする。研究2年目の平成25年はin vivo試験を行うための超音波振動子の作製、超音波照射条件の最適化に重点を置いて研究を行った。
研究方法
1,超音波照射条件最適化
ヒト血漿血栓の超音波溶解促進作用を定量するin vitro評価システムを検討した。また、超音波の透過率が、骨と皮膚の厚さ、照射超音波周波数に応じて大きく変動することを理論的および実験的に骨ファントムモデルを用いて,それぞれ計算と実測で求めた。超音波透過率実測はAIMS装置で超音波振動子とハイドロフォンを移動させて測定した。
2,貼付型振動子を含む超音波照射装置の設計・製造
振動子、貼付ゲル、駆動装置、装着具からなるシステム作製を行った。
3,血栓選択的バブルリポソーム
ラットin vivo動脈塞栓モデルで、RGD-バブルリポソームでの超音波造影効果を測定した。
4,臨床成績の蓄積、臨床プロトコルの作製
急性期虚血性脳卒中に対するrt-PA静注療法を施行したヒストリカルデータ解析は、国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を受けておこなった。前向きに収集したデータベースを用いて,後ろ向きに検討した。単一治療群、オープンラベル、ヒストリカルデータと比較する研究デザインのプロトコルの大枠を作製した。
5,経頭蓋カラードブラ探触子固定具の開発
臨床で用い得る固定具を作製し、患者の装着感と装着に要する時間を調査した。対象は国立循環器病研究センター病院に入院した患者を対象とした。TCCSで側頭骨窓から脳血管の観察が可能な患者で、固定具を使用し頭蓋内血流が安定して観察可能か、脳梗塞の原因となる微小栓子シグナル(microembolic signal: MES)の検出が可能か、奇異性脳塞栓症の原因となる右左シャントの判定が可能か否か、血管同定までの時間と頭部装着感等をTCDの頭部固定具と比較し、それぞれについて検討した。
結果と考察
1,超音波照射条件最適化
ヒト血漿血栓の超音波溶解促進作用を定量する2D式評価システムを確立し、変調した超音波の促進作用を測定した。変調超音波の血栓溶解促進作用は相当する周波数の超音波と同等であった。超音波の透過率が、骨と皮膚の厚さ、照射超音波周波数に応じて大きく変動することを理論的および実験的に実証し、周波数変調超音波を用いることで、その変動を顕著に抑制し透過率を平準化できることが明らかになった。
2,貼付型振動子を含む超音波照射装置の設計・製造
変調超音波に対応した振動子、貼付ゲル、駆動装置、装着具からなるシステム作製において、本療法に必要な要件を満たす設計・作製に成功した。
3,血栓選択的バブルリポソーム
ラットin vivo動脈塞栓モデルで、RGD-バブルリポソームでの超音波造影効果を確認した。
4,臨床成績の蓄積、臨床プロトコルの作製
急性期虚血性脳卒中のrt-PA静注療法施行例の早期開通率、症候性頭蓋内出血率、3ヶ月後転帰のヒストリカルデータの更新とまとめを行った。また、本研究の超音波血栓溶解促進療法の治験プロトコルの大枠を作製した。
4,経頭蓋カラードブラ探触子固定具の開発
10例(男性9例、59.7±21.3歳)の患者に検査を行った。全ての症例で15~30分間の安定した固定が可能で、右左シャントを含む検査が1人で可能であった。
結論
超音波振動子の作製、超音波照射条件の最適化に主眼を置いて行った平成25年度はほぼ計画通りに研究が進行した。次年度はin vivo実験によって本療法の超音波照射安全性検証を遂行する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201308012Z