文献情報
文献番号
201308002A
報告書区分
総括
研究課題名
肝臓に対する新規DDSを活用した経口遺伝子治療法の開発
課題番号
H23-医療機器-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
横田 隆徳(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 片岡 一則(東京大学大学院 マテリアル工学専攻)
- 村上 正裕(大阪大谷大学 薬学部薬剤学)
- 和田 猛(東京理科大学 薬学部生命創薬科学科)
- 小比賀 聡(大阪大学 薬学研究科生物有機化学 核酸化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
臨床応用を念頭に、合成機能性核酸分子の安定性及び有効性の向上、脂質分散製剤の送達効率及びその変動を改善するための核酸化学的検討、マウス及び最終目的としての霊長類動物実験を行なう。
研究方法
1)VE-PEG-CCPのエンドソーム脱出能評価
マウス血清から超遠心法を用いてHDLを抽出した。このHDLにCharge Conversional Polymer (CCP)にPEGを介してビタミンE (VE)を結合させたVE-PEG-CCPとVE結合二本鎖アンチセンス核酸(heteroduplex oligonucleotide: HDO)を結合させることで、核酸送達リポ蛋白複合体を調製した。得られた核酸送達リポ蛋白複合体をマウスに静脈投与し、3日後の肝臓における標的遺伝子発現量を定量した。
2)腸管内を模した評価系における酵素耐性能の評価
腸管内を模した培養液に各種核酸を添加し、一定時間で酵素反応を停止したものをサンプルとした。各サンプルを15%ポリアクリルアミドで電気泳動後、核酸染色し、分解性の評価を行った。
3) A型二重らせん構造を有する二本鎖核酸に選択的に結合するカチオン性人工オリゴ糖による二本鎖核酸の酵素耐性能の評価
A型二重らせん構造を有する二本鎖核酸のリン酸ジエステル部位の負電荷と効果的に相互作用可能な正電荷を有するオリゴジアミノ糖として新たに合成されたオリゴ2,6-ジアミノ-2,6-ジデオキシ-β-D-ガラクトース(ODGal)を結合させた二本鎖核酸の酵素耐性能を評価した。
4)霊長類におけるVE-siRNA-混合ミセル混合物の遺伝子治療効果の評価
霊長類を用いた実験は、医薬基盤研霊長類医科学研究センターにおいて、VE-siRNA/CMによるカニクイザル及びマーモセットを用いた遺伝子治療実験計画(承認番号;DS22-11)に基づいて行った。実験前日の午後から絶食し、翌朝投薬3時間前にミルク(20g/30ml、約100kcal)を胃内投与した。各サルを麻酔下にVE-siRNA添加脂質分散製剤とした被検液3mlを直腸内投与した。投与直前および翌日に採血し、生化学検査を行って有効性及び副作用の評価を行った。
マウス血清から超遠心法を用いてHDLを抽出した。このHDLにCharge Conversional Polymer (CCP)にPEGを介してビタミンE (VE)を結合させたVE-PEG-CCPとVE結合二本鎖アンチセンス核酸(heteroduplex oligonucleotide: HDO)を結合させることで、核酸送達リポ蛋白複合体を調製した。得られた核酸送達リポ蛋白複合体をマウスに静脈投与し、3日後の肝臓における標的遺伝子発現量を定量した。
2)腸管内を模した評価系における酵素耐性能の評価
腸管内を模した培養液に各種核酸を添加し、一定時間で酵素反応を停止したものをサンプルとした。各サンプルを15%ポリアクリルアミドで電気泳動後、核酸染色し、分解性の評価を行った。
3) A型二重らせん構造を有する二本鎖核酸に選択的に結合するカチオン性人工オリゴ糖による二本鎖核酸の酵素耐性能の評価
A型二重らせん構造を有する二本鎖核酸のリン酸ジエステル部位の負電荷と効果的に相互作用可能な正電荷を有するオリゴジアミノ糖として新たに合成されたオリゴ2,6-ジアミノ-2,6-ジデオキシ-β-D-ガラクトース(ODGal)を結合させた二本鎖核酸の酵素耐性能を評価した。
4)霊長類におけるVE-siRNA-混合ミセル混合物の遺伝子治療効果の評価
霊長類を用いた実験は、医薬基盤研霊長類医科学研究センターにおいて、VE-siRNA/CMによるカニクイザル及びマーモセットを用いた遺伝子治療実験計画(承認番号;DS22-11)に基づいて行った。実験前日の午後から絶食し、翌朝投薬3時間前にミルク(20g/30ml、約100kcal)を胃内投与した。各サルを麻酔下にVE-siRNA添加脂質分散製剤とした被検液3mlを直腸内投与した。投与直前および翌日に採血し、生化学検査を行って有効性及び副作用の評価を行った。
結果と考察
VE-PEG-CCP、VE-HDOとHDLからなる会合体を投与した群で標的遺伝子発現量の低下が確認された。このことから、VE-PEG-CCPの存在によりVE-HDOのエンドソーム脱出が促進され、効率的にHDOを細胞質へ送達可能なことが示唆された。
化学合成した各種cRNAのマウス結腸粘膜ホモジネート中での安定性を調べた結果、コントロールとして用いた天然型RNAが5分以内に分解されるのに対し、化学修飾核酸については、その化学修飾の種類や程度に応じて分解耐性特性が異なっていた。特に安定化効果が得られたのは、配列中央部のピリミジン残基を2’-OMe体に変換した場合であった。また、RNA二重鎖と4量体のODGal(1当量)の複合体形成により、RNAの分解を抑制した。これらの結果は核酸に消化管内の各種核酸分解酵素に対する耐性を持たせることを可能とした。
最後に、霊長類におけるVE-siRNA-混合ミセル混合物の遺伝子治療効果の評価について、カニクイザルに対してAPOBを標的にしたVE -siRNAを、リノール酸(10mM)を吸収促進剤とするナノ脂質分散製剤を一日おきに合計二回、30mg/head/回で注腸投与を行った。核酸製剤投与前後に採取した血液サンプルの免疫学的及び生化学的検査から、VE-siRNA注腸剤投与による肝機能障害等の顕著な副作用は検出されなかった。これに対して、投与後の血清中のトリグリセリド(TG)及びLDLコレステロール(LDLC)の有意な減少、及びHDLコレステロール(HDLC)の有意な上昇が観察された。これらの効果は、投与したVE-siRNAによる肝臓でのAPOB遺伝子発現の抑制効果に基づくものと考えられた。
化学合成した各種cRNAのマウス結腸粘膜ホモジネート中での安定性を調べた結果、コントロールとして用いた天然型RNAが5分以内に分解されるのに対し、化学修飾核酸については、その化学修飾の種類や程度に応じて分解耐性特性が異なっていた。特に安定化効果が得られたのは、配列中央部のピリミジン残基を2’-OMe体に変換した場合であった。また、RNA二重鎖と4量体のODGal(1当量)の複合体形成により、RNAの分解を抑制した。これらの結果は核酸に消化管内の各種核酸分解酵素に対する耐性を持たせることを可能とした。
最後に、霊長類におけるVE-siRNA-混合ミセル混合物の遺伝子治療効果の評価について、カニクイザルに対してAPOBを標的にしたVE -siRNAを、リノール酸(10mM)を吸収促進剤とするナノ脂質分散製剤を一日おきに合計二回、30mg/head/回で注腸投与を行った。核酸製剤投与前後に採取した血液サンプルの免疫学的及び生化学的検査から、VE-siRNA注腸剤投与による肝機能障害等の顕著な副作用は検出されなかった。これに対して、投与後の血清中のトリグリセリド(TG)及びLDLコレステロール(LDLC)の有意な減少、及びHDLコレステロール(HDLC)の有意な上昇が観察された。これらの効果は、投与したVE-siRNAによる肝臓でのAPOB遺伝子発現の抑制効果に基づくものと考えられた。
結論
生体内遺伝子発現抑制評価において、VE-PEG-CCPの導入は標的遺伝子発現抑制効果の増強に貢献した。
化学修飾を適切に施す事により、核酸が腸管内環境下においても十分な安定性を持つ可能性が見いだされた。
A型二重らせん構造を有する二本鎖核酸に選択的に結合し、その熱力学的安定性を向上させ、ヌクレアーゼによる分解を阻害するカチオン性人工オリゴ糖として、ガラクトース誘導体が最も優れた性質を有することが示された。
VE-siRNAの脂質ナノ分散製剤が、霊長類においても、肝臓を標的とする経腸デリバリーシステムとして有効であることが示された。
以上から、最終目標である経口核酸医薬の実現に向けた様々な障害の多くを本研究で解決することに成功した。今後更なる最適化を行うことで、臨床応用に向けた進展が大いに期待される。
化学修飾を適切に施す事により、核酸が腸管内環境下においても十分な安定性を持つ可能性が見いだされた。
A型二重らせん構造を有する二本鎖核酸に選択的に結合し、その熱力学的安定性を向上させ、ヌクレアーゼによる分解を阻害するカチオン性人工オリゴ糖として、ガラクトース誘導体が最も優れた性質を有することが示された。
VE-siRNAの脂質ナノ分散製剤が、霊長類においても、肝臓を標的とする経腸デリバリーシステムとして有効であることが示された。
以上から、最終目標である経口核酸医薬の実現に向けた様々な障害の多くを本研究で解決することに成功した。今後更なる最適化を行うことで、臨床応用に向けた進展が大いに期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
-