次世代型IL-6受容体抗体使用時の炎症マーカーとしてのLRG定量キットの開発と臨床応用

文献情報

文献番号
201307035A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代型IL-6受容体抗体使用時の炎症マーカーとしてのLRG定量キットの開発と臨床応用
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-バイオ-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
仲 哲治(独立行政法人 医薬基盤研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
  • 南木 敏宏(帝京大学 医学部)
  • 緒方 篤(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 角田 慎一(独立行政法人 医薬基盤研究所)
  • 服部 有宏(中外製薬株式会社 富士御殿場研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、現在使用されているIL-6R阻害抗体であるtocilizumab(商品名;アクテムラ)を含め、今後治験が予定されている次世代型IL-6受容体抗体による治療を受ける関節リウマチ(RA)患者に対し、血清leucine-rich alpha-2 glycoprotein (LRG)レベルがRAの治療効果を正確に反映し、生物学的製剤使用時に感染症を検出できるバイオマーカーであることを証明し、最終的には臨床検査試薬として血清LRG測定を実用化することである。
IL-6受容体抗体やTNF-alpha阻害抗体などの生物学的製剤はRAに対して劇的な治療効果を挙げているが、その多くは炎症の中心で作用するIL-6の作用を抑制することで抗炎症効果を示している。そのため、これら抗体医薬品使用時はIL-6で発現が誘導されるCRPが発現しないため、CRPによる炎症の評価が出来なくなる。さらに、IL-6阻害の副作用である結核等の感染症の併発について、CRPはIL-6阻害により陰性化するため、これらの抗体医薬品使用時に感染症を早期に検出出来るマーカーがないというのが現状である。従って治療効果の判定や併発感染症の発見を可能とする新たなマーカーの開発が急務である。申請者が既に報告した新規炎症マーカーである血清LRG(Serada S, Naka T. et al, ARD. 2010)はIL-6抑制下においても炎症により誘導されるため(Serada S, Naka T. et al, IBD. 2012)、LRGがIL-6受容体抗体投与時のCRPに代わる新たな炎症マーカーとしてその役割を果たす可能性がある。その結果、治療効果の正確な判定、それによる予後の改善、無効な治療による医療費の無駄の削減、感染症合併の早期発見による安全性への寄与や副作用に対する医療費の削減などに貢献すると期待される。
研究方法
(1)天然の立体構造を認識する血清LRG定量システムの開発
血清中のLRG濃度を高精度・高感度に定量するELISAシステムを開発するため、LRGの天然の立体構造を認識するに対するウサギモノクローナル抗体を樹立し、ヒト、及び、サルのLRGを高感度に検出できるサンドイッチELISAシステムを独自に確立する。
(2)次世代型IL-6受容体抗体による治療を受けるRA血清と臨床情報の収集および血清LRG濃度と疾患活動性の相関解析
慶應義塾大学、帝京大学、大阪大学医学部において、次世代型IL-6受容体抗体投与前後のRA患者血清を70例を目標に収集するシステムの構築と、血清の収集を行う。血清は薬剤開始前と投与ごとに採取する。それと同時にさまざまな臨床情報(疾患活動性スコア、CRP、WBC、MMP-3など)も記載する。
結果と考察
ヒトLRGに対する高親和性ウサギモノクローナル抗体を独自に作成した。そして、血清中のヒトLRGの天然の立体構造を認識し、定量できるELISAシステムの構築に成功した。また、ヒトLRGに対するELISAシステムがカニクイザル血中LRGを定量出来ることも明らかにした。
本研究では患者血清が必要となるが、すでに慶應義塾大学、帝京大学、大阪大学医学部、医薬基盤研究所の倫理委員会にて承認済みである。将来、次世代型IL-6受容体抗体の治験により治療を受けるRA患者の血清が必要となるが、次世代型IL-6受容体抗体を使用するRA検体の収集には時間がかかることが考えられる。そこで、まず従来型のIL-6受容体抗体により治療を受けるRA患者より血清検体を平成25年11月時点で62例を収集し、それに対応する詳細な臨床情報についても収集を継続している段階である。本研究で開発したLRGのELISAキットを用いて、収集したRA血清検体のLRG濃度を測定し、疾患活動性との相関を解析した。抗IL-6受容体抗体による治療中の関節リウマチ患者において、CRPが陰性であるにもかかわらず関節炎スコアの高い患者の中で血清LRG濃度は高値を示した。
結論
本研究成果より、LRGがCRPでは検出出来ないIL-6抑制下での炎症を検出出来ることを明らかとなった。このことは、IL-6受容体抗体投与時における疾患活動性を評価するマーカーとしてLRGがCRPよりも疾患活動性を正確に把握できるマーカーとしての有用性を示唆しており、生物学的製剤を切り替える際の客観的な指標としての有用性が期待される。さらに、血清LRG濃度は感染症患者においても血中濃度が上昇するため、生物学的製剤使用時に併発する感染症を早期に検出出来るマーカーとしての活用が出来る事が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201307035Z