ヒトの血管性認知症の病態を的確に再現し治療法開発に直結する新規ラットおよび霊長類モデルの開発研究 

文献情報

文献番号
201307024A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトの血管性認知症の病態を的確に再現し治療法開発に直結する新規ラットおよび霊長類モデルの開発研究 
課題番号
H24-創薬総合-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
猪原 匡史(独立行政法人 国立循環器病研究センター 脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 福山 秀直(京都大学大学院医学研究科附属脳機能総合研究センター)
  • 冨本 秀和(三重大学大学院医学系研究科 神経病態内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高血圧などの血管性危険因子に起因する脳小血管病変を再現する高血圧自然発症ラット(SHR)にアメロイドコンストリクター(AC)を適応することにより、ヒト血管性認知症の病態をさらに忠実に反映する画期的モデルラットの開発を試みる。最新の画像解析を用いて非侵襲的かつ経時的に脳循環代謝を評価し、行動解析や3次元組織解析などの重層的評価を行い、個体ごとの機能‐解剖‐表現型の連関解析に取り組む。また、げっ歯類よりも,脳や脳血管の構造がよりヒトに近似するアヌビスヒヒの血管性認知症モデルの確立も同時に行う.本研究により,ヒト血管性認知症の病態をより忠実に反映した,ヒトへの外挿性の高いモデル動物の確立を行い,認知症の画期的・独創的医薬品の創製に資する基盤技術とすることを主たる目的とする.
研究方法
1.SHRラットモデルの脳血流推移の解析(京都大学:福山グループ)
 SHRとその対照群となるウィスター京都ラット(WKY)に対し,両側総頸動脈結紮群(2VO),アメロイドコンストリクター装着群(AC),偽手術群を準備し,脳血流の経時的変化を観察した.
2.SHRラットモデルの組織学的変化の解析(三重大学:冨本グループ)
 SHRに対するACの装着手術後28日の時点における大脳白質部(視交叉部,脳梁部)の組織学的変化を評価した.
3.アヌビスヒヒ血管性認知症モデルの評価(国立循環器病研究センター:猪原グループ)
 アヌビスヒヒは齧歯類と異なり,ヒトに近似したWillis動脈輪を有し,慢性脳低灌流を再現するためには3動脈の結紮が必要であることが判明した.組織学的変化を観察した.
結果と考察
1.SHR-2VO群では,WKY-2VO群よりも急激な脳血流の低下が見られた.一方で,SHR-AC群では,緩徐に脳血流が低下し,処置3日後に底値を示し,急激な脳血流低下を回避できた.SHR-2VO群は約20%の死亡率を示したが,SHR-AC群では5%未満の死亡率に留まった.以上,SHRに対するACの装着により,ヒトの血管性認知症における「慢性」脳低灌流をより的確に再現することができた.
2.SHR-AC群は,SHR-2VO群に匹敵する大脳白質病変を再現できた.以上より,組織学的な観点からも,ヒト血管性認知症のモデル化を達成できた.
3.アヌビスヒヒの血管性認知症モデルの確立研究でも,3動脈結紮により脳血流低下を誘導することが出来た.組織解析を行ったところ,3動脈結紮(3VO)翌日には(I)血液脳関門が破壊され,(II)3日後にはミクログリアの活性化やIL-1βの産生が亢進し,(III)7日目以降に脱髄やオリゴデンドロサイトの減少が生じ、(IV)その後アストロサイトの活性化が起こることが組織解析の結果明らかとなった.
結論
本研究事業で確立を目指すヒト血管性認知症のモデルラットおよびモデルヒヒはともに慢性脳低灌流を的確に反映する動物モデルであることがこれまでの研究で明らかとなった.アヌビスヒヒモデルの行動学的な妥当性評価を行い,ヒトの血管性認知症の医薬品の創製に資する基盤技術モデル動物の確立を目指す.

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201307024Z