C型肝炎ウイルスワクチン実用化を目指した基礎的研究 

文献情報

文献番号
201307014A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルスワクチン実用化を目指した基礎的研究 
課題番号
H23-政策探索-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 脇田隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 明里宏文(京都大学霊長類研究所 人類進化モデル研究センター)
  • 石井孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 鈴木亮介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 中村紀子(東レ株式会社医薬研究所)
  • 成見英樹(東レ株式会社医薬研究所)
  • 松本美佐子(北海道大学大学院医学研究科 免疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
54,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々が開発したJFH-1株を用いたHCVの培養系により、培養細胞でこのウイルスを増殖させることが可能となった。またこのシステムではHCVの培養細胞への感染が観察できるため、中和活性の評価も可能である。本研究では、このJFH-1株によるHCV細胞培養系を用い、培養細胞で増殖させたウイルス粒子を免疫原として用いることでHCVワクチンの開発を行う。これまで我々は、培養細胞で大量生産したウイルス粒子を濃縮精製し、その精製粒子をワクチン抗原として接種することにより中和抗体が得られることをマウスモデルで確認している。さらにヒトに近い霊長類動物モデルであるアカゲザルでも同様の検討を行い、中和抗体の誘導を確認した。しかし、アカゲザルの検討で、中和抗体誘導が得られたのは3頭中Alumをアジュバントとして用いた1頭のみであった。そこで、本年度はマーモセットを用いて、ウイルス粒子ワクチンの安全性と有効性の評価を開始した。
研究方法
HCV粒子ワクチンの開発のため、小型霊長類モデルであるマーモセットを用いたHCV粒子ワクチンの安全性と抗体誘導能の評価、細胞性免疫応答の確認を行った。HCV粒子ワクチンとしてJ6/JFH1株のウイルス粒子を使用した。J6/JFH1株を感染させた培養細胞を大量培養し、HCV粒子を含む培養上清を限外ろ過膜とショ糖密度勾配遠心法により精製してワクチン抗原とした。1回の投与量は、1匹あたり60 pmolのHCVコアタンパク質に相当するHCV粒子とし、アジュバントにはアカゲザルで効果のあったAlumを用いた。ワクチン接種が終了したマーモセットは安全性評価のために病理組織学的検査を行った。また血中のHCV抗体価はJ6CF E1/FLAG融合組換え型タンパク質、J6CF E2/FLAG融合組換え型タンパク質および遺伝子型1のコアタンパク質であるHCV-213を用いたELISA法で定量した。
結果と考察
AlumをアジュバントとしてHCV粒子ワクチンを投与したマーモセット3頭の血漿中に含まれる抗HCV抗体価をEIAにて評価した。3頭中2頭のマーモセットで抗原投与開始後に抗E2、抗E1抗体価の上昇を認め、HCVに対する抗体誘導が確認できた。また、他の遺伝子型株に対する反応性の確認のため、ワクチンに使用した株とは異なる遺伝子型1のコアタンパク質であるHCV-213を抗原としたEIAでも確認した。その結果、抗E2、抗E1抗体価の上昇を認めた2頭のマーモセットでは、遺伝子型1に対する抗コア抗体価の上昇が確認できた。しかしワクチン投与を行ったうちの残りの1頭ではこれらの抗体誘導は確認できなかった。さらに細胞性免疫誘導の確認のため、ワクチン接種マーモセットのPBMCに、ワクチンと同じ遺伝子型2a株由来Coreペプチドを添加し刺激した。接種前のPBMCと比較して有意なIFN mRNAの発現誘導が認められた。このIFN発現はワクチン接種回数とともに上昇し、また遺伝子型1株由来のCoreペプチドでは有意な発現誘導が生じなかったことから、ワクチン抗原刺激により特異的な細胞性免疫が誘導されていると考えられた。安全性の評価のため、ワクチン投与を行った3頭のマーモセットすべてで血液検査を行ったが、肝逸脱酵素や炎症マーカーなど肝障害や他の有害事象を思わせる所見は得られなかった。3頭中1頭のマーモセットでは解剖し、病理組織学的解析を行ったが、ワクチンに由来すると思われる異常所見は認めていない。以上のような結果から、HCV粒子ワクチンのマーモセットへの投与により、一部の個体でHCV特異的抗体と細胞性免疫が誘導されている事が確認された。今後はAlumよりも効率的に抗体誘導、細胞性免疫誘導が期待できる新規アジュバントを用いて、さらに検討を進める予定である。
結論
小型霊長類モデルであるマーモセットを用い、HCV不活化粒子ワクチンの有効性と安全性について検討を行った。ワクチン投与を行った3頭のマーモセットの中で、2頭で抗HCV抗体の誘導が認められた。また細胞性免疫の誘導も確認された。ワクチン投与に関連した異常所見は認めなかった。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201307014Z