ゲノム網羅的関連解析の大規模メタ解析を基盤としたcommon diseaseのテーラーメード医療実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201307011A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム網羅的関連解析の大規模メタ解析を基盤としたcommon diseaseのテーラーメード医療実用化に関する研究
課題番号
H23-バイオ-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
桃原 茂樹(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山中 寿(東京女子医科大学 医学部)
  • 山本 一彦(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
  • 三森 経世(京都大学大学院 医学研究科)
  • 松田 文彦(京都大学大学院 医学研究科)
  • 山田 亮(京都大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
25,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内患者数が最多(約80万人)の自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)をモデルケースに、common diseaseを対象とした大規模な疾患感受性遺伝子多型同定を創薬基盤整備に結びつけることが本研究の目的である。
研究方法
国内共同研究、さらに10万人規模の国際共同研究によるゲノムワイド関連解析(GWAS)メタ解析を行い、RAの疾患感受性遺伝子を包括的に同定する。得られた疾患感受性遺伝子情報を様々な生物学的データベース(SNPの機能分類、遺伝子発現量解析、ヒストン修飾機構、メンデル型遺伝病、悪性腫瘍体細胞変異、ノックアウトマウス形質、PubMed論文データテキストマイニング、蛋白質間相互作用、パスウェイ解析)、創薬データベースを活用して新規治療薬候補を探索するという新しいゲノム創薬手法を開発し、新規治療薬候補を同定する。
結果と考察
昨年度までに国内の主要なRA関連遺伝子研究機関を結集し、20,000人を超えるサンプルに対してGWASメタ解析を実施し、さらに25,000人以上のサンプルを用いて追認解析を行った結果、9つの新規疾患感受性遺伝子領域をはじめとして日本人におけるRA感受性遺伝子多型(common allele)を包括的に同定した(Nature Genetics 2012)。さらにこの解析の枠組みを国際共同研究に拡張し、日本人を含むアジア人集団および欧米人集団で構成された10万人以上のサンプルに対するGWASメタ解析を実施し、42の新規領域を含む、101の疾患感受性遺伝子領域を同定した(Nature 2014)。さらに、得られた疾患感受性遺伝子情報を多様な生物学的データベース(SNPの機能分類、遺伝子発現量解析、ヒストン修飾機構、メンデル型遺伝病、悪性腫瘍体細胞変異、ノックアウトマウス形質、PubMed論文データテキストマイニング、蛋白質間相互作用、パスウェイ解析)と統合するビッグデータ解析を通じて、関節リウマチの新たな病態を明らかにした。また、創薬データベース上に登録された既存もしくは臨床治験中のヒト疾患治療薬のターゲット遺伝子と疾患感受性遺伝子とのつながりを、蛋白-蛋白相互作用を考慮したネットワーク解析に基づき評価し新規治療薬候補を探す、新しいゲノム創薬手法を開発し、新規治療薬候補を同定した(CDK4/6阻害薬;Nature 2014)。このアプローチが関節リウマチにおいて有用なことが示されたおとで、今後は他のcommon diseaseにおける有効性の検討も有用と考えられた。
結論
本研究の成果は、大規模ゲノム解析を通じて疾患病態の解明や新規創薬に貢献できる可能性を切り拓いたものであり、創薬基盤整備に大きく寄与するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

文献情報

文献番号
201307011B
報告書区分
総合
研究課題名
ゲノム網羅的関連解析の大規模メタ解析を基盤としたcommon diseaseのテーラーメード医療実用化に関する研究
課題番号
H23-バイオ-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
桃原 茂樹(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山中 寿(東京女子医科大学 医学部)
  • 山本 一彦(理化学研究所 統合生命医科学研究センター)
  • 三森 経世(京都大学大学院 医学研究科)
  • 松田 文彦(京都大学大学院 医学研究科)
  • 山田 亮(京都大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内患者数が最多(約80万人)の自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)をモデルケースに、common diseaseを対象とした大規模な疾患感受性遺伝子多型同定を創薬基盤整備に結びつけることが本研究の目的である。
研究方法
国内共同研究によりゲノムワイド関連解析(GWAS)メタ解析を行い、日本人におけるRA感受性遺伝子多型を同定する。さらに10万人規模の国際共同研究によるGWASメタ解析を行い、RAの疾患感受性遺伝子を包括的に同定する。得られた疾患感受性遺伝子情報を様々な生物学的データベース(SNPの機能分類、遺伝子発現量解析、ヒストン修飾機構、メンデル型遺伝病、悪性腫瘍体細胞変異、ノックアウトマウス形質、PubMed論文データテキストマイニング、蛋白質間相互作用、パスウェイ解析)、創薬データベースを活用して新規治療薬候補を探索するという新しいゲノム創薬手法を開発し、新規治療薬候補を同定する。
結果と考察
まず国内の主要なRA関連遺伝子研究機関を結集し、20,000人を超えるサンプルに対してGWASメタ解析を実施し、さらに25,000人以上のサンプルを用いて追認解析を行った結果、9つの新規疾患感受性遺伝子領域をはじめとして日本人におけるRA感受性遺伝子多型(common allele)を包括的に同定した(Nature Genetics 2012)。さらにこの解析の枠組みを国際共同研究に拡張し、日本人を含むアジア人集団および欧米人集団で構成された10万人以上のサンプルに対するGWASメタ解析を実施し、42の新規領域を含む、101の疾患感受性遺伝子領域を同定した(Nature 2014)。さらに、得られた疾患感受性遺伝子情報を多様な生物学的データベース(SNPの機能分類、遺伝子発現量解析、ヒストン修飾機構、メンデル型遺伝病、悪性腫瘍体細胞変異、ノックアウトマウス形質、PubMed論文データテキストマイニング、蛋白質間相互作用、パスウェイ解析)と統合するビッグデータ解析を通じて、関節リウマチの新たな病態を明らかにした。また、創薬データベース上に登録された既存もしくは臨床治験中のヒト疾患治療薬のターゲット遺伝子と疾患感受性遺伝子とのつながりを、蛋白-蛋白相互作用を考慮したネットワーク解析に基づき評価し新規治療薬候補を探す、新しいゲノム創薬手法を開発し、新規治療薬候補を同定した(CDK4/6阻害薬;Nature 2014)。このアプローチが関節リウマチにおいて有用なことが示されたおとで、今後は他のcommon diseaseにおける有効性の検討も有用と考えられた。
結論
本研究の成果は、大規模ゲノム解析を通じて疾患病態の解明や新規創薬に貢献できる可能性を切り拓いたものであり、創薬基盤整備に大きく寄与するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201307011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
世界最大級の規模で実施したゲノムワイド関連解析(GWAS)メタ解析により、関節リウマチの疾患感受性遺伝子を101領域の同定に成功した。さらに公開されている各種生物学的データベース、創薬データベースを参照することで、新たな創薬ターゲットの同定に成功した。関節リウマチをモデルケースに低コストで実施可能な新たな創薬基盤の開発に成功したことで、他のcommon diseaseも含めた創薬基盤整備に大きく寄与するものと考えられる。
臨床的観点からの成果
これまで遺伝子解析が充分に臨床に還元されてきたとは言い難いが、本研究により遺伝子解析が創薬基盤整備に直結する可能性を示すことが出来た。このプロセスは関節リウマチに特化したものではなく、各疾患に応用可能であり、広く臨床に還元することが可能である。
ガイドライン等の開発
本研究は特にガイドラインの開発などには関与していない。
その他行政的観点からの成果
現時点では審議会等で参考にされたり、行政施策に反映されたりしていないが、低コストでの創薬基盤整備を可能にしたことは国民の福祉に大きく貢献できるものと考える。今後は各製薬会社との連携が必要である。
その他のインパクト
本研究の成果(世界最大級の規模でのGWASメタ解析により関節リウマチの疾患感受性遺伝子を101領域の同定したこと、創薬に結びつく可能性があること)はNatureに掲載され、全国紙を含むマスメディアに取り上げられた。またホームページ上でも成果を公表している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
全国紙を含むマスメディアでの発表

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okada Y, Wu D, Trynka G, et al.
Genetics of rheumatoid arthritis contributes to biology and drug discovery.
Nature , 506 , 376-381  (2014)
10.1038/nature12873
原著論文2
Yoshida S, Ikari K, Furuya T, et al.
GC polymorphism associated with serum 25- hydroxyvitamin D level is a risk factor for hip fracture in Japanese patients with rheumatoid arthritis: 10-year follow-up of the Institute of Rheumatology, Rheumatoid Arthritis cohort study.
Arthritis Res Ther , 16 , R75-  (2014)
10.1186/ar4516
原著論文3
Terao C, Hashimoto M, Yamamoto K, et al.
Three Groups in the 28 Joints for Rheumatoid Arthritis Synovitis - Analysis Using More than 17,000 Assessments in the KURAMA Database.
PLoS One , 8 , e59341-  (2013)
原著論文4
Terao C, Ohmura K, Kawaguchi Y, et al.
PLD4 as a novel susceptibility gene for systemic sclerosis in a Japanese population.
Arthritis Rheum , 65 , 472-480  (2013)
原著論文5
Terao C, Hashimoto M, Furu M, et al.
Inverse association between air pressure and rheumatoid arthritis synovitis: an observational study.
PLoS One , 9 , e85376-  (2014)
原著論文6
Terao C, Yoshifuji H, Kimura A, et al.
Two susceptibility loci to Takayasu arteritis reveal a synergistic role of the IL12B and HLA-B regions in a Japanese population.
Am J Hum Genet , 93 , 289-297  (2013)
原著論文7
Suzuki T, Ikari K, Yano K, et al.
PADI4 and HLA-DRB1 are genetic risks for radiographic progression in RA patients, independent of ACPA status: results from the IORRA cohort study.
PLoS One , 8 , e61045-  (2013)
原著論文8
Okada Y, Terao C, Ikari K, et al.
Meta-analysis identifies nine new loci associated with rheumatoid arthritis in the Japanese population.
Nat Genet , 44 , 511-516  (2012)
原著論文9
Myouzen K, Kochi Y, Okada Y, et al.
Functional variants in NFKBIE and RTKN2 involved in activation of the NF-kappaB pathway are associated with rheumatoid arthritis in Japanese.
PLoS Genet , 8 , e1002949-  (2012)
原著論文10
Terao C, Ohmura K, Ikari K, et al.
ACPA-negative RA consists of two genetically distinct subsets based on RF positivity in Japanese.
PLoS One , 7 , e40067-  (2012)
原著論文11
Terao C, Ikari K, Ohmura K, et al.
Quantitative effect of HLA-DRB1 alleles to ACPA levels in Japanese rheumatoid arthritis: no strong genetic impact of shared epitope to ACPA levels after stratification of HLA-DRB1*09:01.
Ann Rheum Dis , 71 , 1095-1097  (2012)
原著論文12
Terao C, Ohmura K, Kochi Y, et al.
A large-scale association study identified multiple HLA-DRB1 alleles associated with ACPA-negative rheumatoid arthritis in Japanese subjects.
Ann Rheum Dis , 70 , 2134-2139  (2011)
原著論文13
Suzuki T, Ikari K, Kawaguchi Y, et al.
Non-synonymous variant (Gly307Ser) in CD226 is associated with susceptibility in Japanese rheumatoid arthritis patients.
Mod Rheumatol , 23 , 200-202  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2017-06-01

収支報告書

文献番号
201307011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
33,345,000円
(2)補助金確定額
33,345,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,690,165円
人件費・謝金 0円
旅費 315,580円
その他 4,644,255円
間接経費 7,695,000円
合計 33,345,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-