文献情報
文献番号
201307008A
報告書区分
総括
研究課題名
トランスクリプトーム解析を利用した医薬品の副作用発症機構の解明と、それに基づいた副作用予測システム、副作用治療法、及び副作用の少ない新薬の開発戦略の確立
課題番号
H23-バイオ-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(慶應義塾大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
22,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既存薬の副作用発症機構が解明されていないため、①新薬候補品の副作用予測、②副作用治療法の確立、③副作用の少ない新薬の開発が困難になっている。臨床現場で大きな問題になっている非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の胃潰瘍副作用に注目し、NSAIDが誘導する遺伝子を網羅的に解析した。その結果、NSAID 潰瘍発症機構を解明し、新薬候補品の胃潰瘍副作用を予測するスクリーニング系を確立すると共に、胃潰瘍副作用の少ないNSAIDの開発戦略を確立し、実際そのようなNSAIDを発見した。この発症機構に基づいて、その治療法、また他の薬剤による間質性肺炎副作用、及び薬疹など他の副作用に関しても、トランスクリプトーム解析を用いて副作用発症機構を解明し、新薬候補品の副作用を予測するシステムを確立すると共に、副作用の少ない新薬の開発戦略、及び副作用治療法の確立に向けた研究も行う。
研究方法
共同研究している中国企業(北京泰徳製薬)から得た漢方薬(生薬)ライブラリー(約600種)からHSPの誘導生薬をスクリーニングし、テプレノンよりも強力、かつ安全な数多くのHSP誘導生薬を得た(特許出願済み)。我々はこの中からヤバツイを選択し、そのHSP誘導物質の同定に成功した(特許出願準備中)。この誘導物質を小腸潰瘍、炎症性腸疾患、アルツハイマー病の動物モデルで評価したところ、テプレノンよりも強力な効果を示した。この結果は、漢方薬(生薬)ライブラリーからスクリーニングしたHSP誘導物質が医薬品として有用であることを示唆している。また最近我々は、HSPが間質性肺炎(有効な治療薬はなく、致死率は80%を超える)、COPD(世界中で患者数が増大しており、有効な治療薬がない)、及びALSやハンチントン舞踏症などの神経変性疾患の発症を抑制することを見出した。
そこで本研究で我々は、この漢方薬(生薬)ライブラリーをさらに充実させ、HSP誘導生薬のスクリーニングを行い、有望な生薬を複数選択する。そして、誘導物質の同定、及び動物モデルでの評価を行い、種々の疾患治療薬として開発するHSP誘導物質を決定した。
一方最近我々は、PC-SODが間質性肺炎や炎症性腸疾患だけでなく、活性酸素による組織傷害がその主な原因となっている、腎炎、肝炎、膵炎、喘息、COPD、アトピー性皮膚炎の動物モデルにおいて有効性を示すことを見出した。そこで本研究で我々は、上述のライブラリーからSOD誘導物質を検索・同定し、種々の疾患治療薬として開発するSOD誘導物質を決定した。
そこで本研究で我々は、この漢方薬(生薬)ライブラリーをさらに充実させ、HSP誘導生薬のスクリーニングを行い、有望な生薬を複数選択する。そして、誘導物質の同定、及び動物モデルでの評価を行い、種々の疾患治療薬として開発するHSP誘導物質を決定した。
一方最近我々は、PC-SODが間質性肺炎や炎症性腸疾患だけでなく、活性酸素による組織傷害がその主な原因となっている、腎炎、肝炎、膵炎、喘息、COPD、アトピー性皮膚炎の動物モデルにおいて有効性を示すことを見出した。そこで本研究で我々は、上述のライブラリーからSOD誘導物質を検索・同定し、種々の疾患治療薬として開発するSOD誘導物質を決定した。
結果と考察
小柴胡湯が活性酸素の産生酵素であるNADPHオキシダーゼを活性化すること、及び抗酸化タンパク質であるSODの発現を抑制することを見出した。また、これらの抑制がこれら医薬品による間質性肺炎の原因であることを示唆した。
一方保有する既存薬ライブラリーからSODの発現を抑制するものを検索し、それらがマウスで肺線維化を起こすのかを検討した。その結果、複数の既存薬がSODの発現を抑制すると同時に肺の線維化を起こすことを見出し、その内一部に関しては、薬剤性間質性肺炎を起こしたという臨床報告があった。以上の結果は、新薬候補品がSODの発現を抑制するのかを調べることにより、その間質性肺炎副作用を予測することが可能であることを提唱した。
一方保有する既存薬ライブラリーからSODの発現を抑制するものを検索し、それらがマウスで肺線維化を起こすのかを検討した。その結果、複数の既存薬がSODの発現を抑制すると同時に肺の線維化を起こすことを見出し、その内一部に関しては、薬剤性間質性肺炎を起こしたという臨床報告があった。以上の結果は、新薬候補品がSODの発現を抑制するのかを調べることにより、その間質性肺炎副作用を予測することが可能であることを提唱した。
結論
ゲフィチニブ(イレッサ)の間質性肺炎(肺線維症)副作用に関する研究を主に行った。ゲフィチニブによる遺伝子発現変化の網羅的解析から、ゲフィチニブが熱ショックタンパク質(HSP)70の発現を強く抑制することを発見した。またマウスを用いてゲフィチニブ依存に肺線維化を起こす系(薬剤性間質性肺炎の動物モデル)を確立し、このモデルにおいてゲフィチニブ依存にHSP70の発現が抑制されること、及びHSP70過剰発現マウスでは、ゲフィチニブ依存の肺繊維化も見られないことを見出していた。このゲフィチニブによるHSP70減少機構を解析し、ゲフィチニブがある種のmiRNAの発現を誘導し、HSP70の翻訳を抑制するというメカニズムを明らかにした。
一方、保有する既存薬ライブラリーからHSP70やHO-1の発現を抑制するものを検索し、それらがマウスで肺線維化を起こすのかを検討した。その結果、複数の既存薬がHSP70やHO-1の発現を抑制すると同時に肺の線維化を起こすことを見出し、その内一部に関しては、薬剤性間質性肺炎を起こしたという臨床報告があった。以上の結果から新薬候補品がHSP70やHO-1の発現を抑制するのかを調べることにより、その間質性肺炎副作用を予測することが可能であることを提唱した。実際、複数の製薬企業がこの方法を既に取り入れている。
一方、保有する既存薬ライブラリーからHSP70やHO-1の発現を抑制するものを検索し、それらがマウスで肺線維化を起こすのかを検討した。その結果、複数の既存薬がHSP70やHO-1の発現を抑制すると同時に肺の線維化を起こすことを見出し、その内一部に関しては、薬剤性間質性肺炎を起こしたという臨床報告があった。以上の結果から新薬候補品がHSP70やHO-1の発現を抑制するのかを調べることにより、その間質性肺炎副作用を予測することが可能であることを提唱した。実際、複数の製薬企業がこの方法を既に取り入れている。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
-