メディカル・ゲノムセンター等における個人の解析結果等の報告と、公的バイオバンクの試料・情報の配布に関する論点整理と提言

文献情報

文献番号
201305027A
報告書区分
総括
研究課題名
メディカル・ゲノムセンター等における個人の解析結果等の報告と、公的バイオバンクの試料・情報の配布に関する論点整理と提言
課題番号
H25-特別-指定-035
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高坂 新一(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
  • 吉田 輝彦(国立がん研究センター研究所遺伝医学研究分野・分子腫瘍学)
  • 増井 徹(医薬基盤研究所難病・疾患資源研究部)
  • 森崎 隆幸(国立循環器病研究センター)
  • 松原 洋一(国立成育医療研究センター)
  • 新飯田 俊平(国立長寿医療研究センター)
  • 武藤 香織(東京大学医科学研究所)
  • 古川 洋一(東京大学医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人体に由来する生体試料が重要な研究資源として注目され、その取扱いの標準化等が関心を集めている。本研究班は、疾患コホートを対象としているナショナルセンター・バイオバンク・ネットワーク(NCBN)とバイオバンク・ジャパン(BBJ)の担当者を中心に研究班を組織し、(1)偶発的所見(IF)を含むゲノム網羅的解析結果の開示・報告のあり方、(2)試料・情報の産業界等外部研究者への配布のあり方に関する論点の抽出・整理、提言、(3)バイオバンクの国際標準化・規格化の動きに対応するための海外におけるバイオバンク事業等に関する研究、を行った。
研究方法
(1)研究、検査等で見いだされる偶発的所見について、予期できる、もしくは予期できない偶発的所見や意図的に探索しないと発見できない二次的所見などの用語の定義を明確にした上で、研究における偶発的、二次的所見の科学的、倫理的な取り扱いに関しての論点を整理した。その概要は、研究者の対処義務の根拠や範囲、同意取得過程における説明内容、偶発的所見の評価に関すること、及び、研究参加者への開示に関することなどである。
(2)ヒト組織を含むバイオバンク事業における試料・情報の配布のあり方を産業界の研究者への配布の場合も含めて検討した。抽出した論点に対する方針案として「本分担研究者案」をまとめた。たとえば、費用の設定は、国民の健康寿命延伸に資する研究を国が補助する観点から費用設定をする;公的資金が投入されている研究にはより多くの補助をする;付随する臨床情報の範囲・量により費用に差をつける;配布の場合はバイオバンク側は試料解析データの提供や知財の共有を要求しない;「試料・情報配付審査会(仮称)」はできるだけall Japanで連携・整合性のあるものにしていく等である。また、配布に関する論点検討の一環として国内5箇所のバイオバンクを訪問調査し、3箇所のweb公開情報等の調査を行った。
(3)日本における多様なバイオバンクにおいても、一定の標準化を考えることが求められている点について、国際標準としてISO/TC276 の策定の動向をフォローしながら、日本のバイオバイオバンクにおける手順等の標準化について検討を行った。本研究においては、TC276 の成り立ちを理解するために、OECD生物資源センターのガイドラインなど基本となるガイドラインの比較検討を行った。
結果と考察
(1)について、欧米での現状をみるに、まだ定まった対処法が確立していない様子が見て取れるが、2013年12月に米国大統領委員会からの偶発的、二次的所見に関する報告書が提示され、わが国の対応に関しても貴重な示唆を与えるものと考えられ概要部分と序論の部分の逐語訳を行い本研究報告書に添付した。わが国の遺伝医療、ゲノム医療の体制整備と連動して、できるだけ速やかな対応が望まれ、オールジャパン体制のタスクフォースを結成して迅速に活動することが重要である。
(2)については、バイオバンクの多様性があらためて明らかになるとともに、国家戦略として推進されるバイオバンク事業において、1)経済的な自立よりも健康・医療戦略への貢献を明確に示していくこと、2)その点も含めてバイオバンクの評価の時代に備える必要があること、3)高インパクトのバイオバンクの必要条件とは臨床病理情報の充実であること、4)今後は分子網羅的(omics)データベースの連結が必須であるとこと、5)試料・情報提供者(患者)からバイオバンクのインフラストラクチャーを実務・財政的に支える人々まで、バイオバンクプロジェクトに関わる人々のミッションとパッションを高い水準で堅持することが肝要である。
(3)については「米国国立がん研究所のヒト生物資源保管施設のための実務要領2011」を国内のバイオバンクの品質管理の検討の基本とすることが望ましいという結論に至った。
結論
本研究において論点整理がなされた3点、すなわち、(1)偶発的所見(IF)を含む、ゲノム網羅的解析結果の開示・報告のあり方と、(2)試料・情報の産業界等外部研究者への配布のあり方に関する論点の抽出・整理、提言、(3)バイオバンクの国際標準化・規格化の動きに対応するための海外におけるバイオバンク事業等に関する調査、はいずれも、バイオリソースを活用して「ゲノム医療」を実現化させるために不可欠な喫緊の課題であり、継続的に取り組むべきものである。特に、ゲノム情報を医療に応用する時代に備えたクリニカル・シークエンスの実証的な臨床研究、ゲノム医療の実施に必要な法的環境整備、医療政策や医療経済的な調査や国民への広報、ゲノム医療を担う人材の育成などを含めた産官学のオールジャパン体制での取り組みを必要としている。本研究成果は、そのような取り組みの基盤となるものである。

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201305027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究において論点整理がなされた3点、すなわち、(1)偶発的所見(IF)を含むゲノム網羅的解析結果の開示・報告のあり方、(2)試料・情報の産業界等外部研究者への配布のあり方に関する論点の抽出・整理、提言、(3)バイオバンクの国際標準化・規格化の動きに対応するための海外におけるバイオバンク事業等に関する調査、はいずれも、バイオリソースを活用して「ゲノム医療」を実現化させるために不可欠な喫緊の課題であり、継続的に取り組むべきものである。
臨床的観点からの成果
ゲノム情報を医療に応用する時代に備えたクリニカル・シークエンスの実証的な臨床研究、ゲノム医療の実施に必要な法的環境整備、医療政策や医療経済的な調査や国民への広報、ゲノム医療を担う人材の育成などを含めた産官学のオールジャパン体制での取り組みを必要としている。本研究成果はそのような取り組みの基盤となるものである。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
2019-05-23

収支報告書

文献番号
201305027Z