水道水質検査における対象農薬リスト掲載農薬のうち標準検査法未設定の農薬類の分析法開発

文献情報

文献番号
201305016A
報告書区分
総括
研究課題名
水道水質検査における対象農薬リスト掲載農薬のうち標準検査法未設定の農薬類の分析法開発
課題番号
H25-特別-指定-034
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 俊也(東京都健康安全研究センター 薬事環境科学部)
  • 川元 達彦(兵庫県立健康生活科学研究所健康科学部)
  • 高木 総吉(大阪府立公衆衛生研究所衛生化学部生活環境課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 水道原水から検出される可能性が高いとして平成25年4月に厚生労働省によりリストアップされた120農薬のうち,10農薬については未だ精度の高い分析法が開発されておらず,現時点において,標準検査法が設定されていない.
 そこで本研究では,これら10農薬のうち加水分解によって水中から速やかに消失するジチアノンを除く9農薬(カルタップ,グルホシネート,ジチオカルバメート系農薬,ダゾメット,メタム(カーバム),パラコート,ピラクロニル,フェリムゾン,およびプロチオホス)の分析法を個別に開発するとともに,分析マニュアルを策定することを目的とした.
研究方法
 カルタップは,加水分解により生成したネライストキシンをLC/MS/MSを用いて測定する方法を開発した.
 グルホシネートは,FMOCによる誘導体化後に固相抽出を行い,LC/MS/MSを用いて測定する方法と,LC/MS/MSに直接注入(DI)して測定する方法を2つの分析法を開発した.
 ジチオカルバメート系農薬は,濃塩酸を加えて加熱分解して発生した二硫化炭素をヘッドスペース-GC/MSを用いて測定する方法,前処理による誘導体化後にGC/MSあるいはLC/MS/MSを用いて測定する方法の3通りの方法を開発した.
 ダゾメット,メタム(カーバム)は,いずれも水と反応して速やかにメチルイソチオシアネート(MITC)に分解するため,ダゾメットおよびメタムをMITCに分解した後,パージ・トラップ-GC/MSによりMITCの濃度を測定し,測定値をダゾメットあるいはメタムの濃度に換算する方法を開発した.
 パラコートは,高極性で水溶解度が高い物質であるため,弱陽イオン交換基と逆相の二つの保持能を併せ持つミックスモード固相を使用した前処理後にLC/MS/MSを用いて測定する方法を開発した.
 ピラクロニル,フェリムゾンは,検査試料水をLC/MS/MSに直接注入して測定する方法を開発し,既存の農薬との同時分析が可能な分析条件を設定した.
 プロチオホスは,検査試料水のpH調整後に固相抽出を行い,GC/MSを用いて測定する方法を開発した.
結果と考察
 カルタップは,分解物であるネライストキシンをLC-MS/MSにより直接定量することが有用であった.この方法は,類縁化合物であるベンスルタップとチオシクラムの影響を受けることなくカルタップ濃度を評価できると考えられた.
 グルホシネートは,FMOC-LC/MS/MSでは目標値の1/100の濃度まで,DI-LC/MS/MSでは目標値の1/10の濃度まで精度の高い分析が可能であった.
 ジチオカルバメート系農薬は,二硫化炭素をHS-GC/MSにより測定することで,目標値の1/100以下の濃度まで精度の高い分析が可能であることが示された.また,ヨウ化メチルで誘導体化後,誘導体化物をGC/MSにより測定する方法では,目標値の1/10の濃度まで精度の高い分析が可能であった.誘導体化後,LC/MS/MSにより測定する方法では,EBDC-MeやPBDC-Meを生成するジチオカーバメート系農薬を目標値の1/10まで測定することが可能であった.
 ダゾメット,メタム(カーバム),MITCをPT-GC/MSにより測定することで,いずれも目標値の1/100以下の濃度まで,精度の高い分析が可能であることが示された.
 パラコート(およびジクワット)は,ミックスモード固相を使用した前処理法およびLC/MS/MSによる分析を行うことで,いずれも目標値の1/100以下の濃度まで精度の高い分析が可能であった.
 ピラクロニル,フェリムゾンは,どちらの農薬もLCカラムの選択やグラジエント条件の検討を十分に行えば,別添方法20に記載された他の農薬とのLC/MS/MS一斉分析が可能と考えられた.しかし,フェリムゾンは,アスコルビン酸ナトリウムによる分解が示唆されたため,分析法の妥当性評価を行う際には,チオ硫酸ナトリウム等の分解反応が起きない他の脱塩素処理剤を用いて分析を行う必要があることが分かった.
 プロチオホスは,脱塩素処理後に塩酸を加えてpHを3.0に調整し,ポリマー系の固相カラムで濃縮・精製を行いGC/MS法で測定することで,目標値の1/100以下の濃度まで精度の高い分析が可能であることが示された.
結論
 本研究では,9農薬の分析法を個別に開発するとともに,分析マニュアルを策定した.
 本研究の成果は,厚生労働省の水道水質検査法検討会に提出することを予定しており,標準検査法設定の基礎資料となる.また,標準検査法の設定により,全国の衛生研究所,水道事業者等,登録検査機関等において,必要な農薬の実態調査を行うことができるようになり,我が国の水道水質管理と水道の安全確保に大きく貢献できる.

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201305016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究で開発した9農薬の分析法は,いずれもGC/MSあるいはLC/MS/MSを用いた高精度かつ高感度の分析法である.特にLC/MS/MSを用いた分析方法は,既存の農薬類の水道水質検査法の中で,HPLCやLC/MSを用いる方法と比べて選択性に優れていることから誤同定が少なく,より低濃度の試料の分析が可能である.これらの新規分析法が普及することにより,水道水中農薬の存在実態をより正確に,詳細に把握することができる.
臨床的観点からの成果
臨床研究でないため該当せず
ガイドライン等の開発
本研究で開発した9農薬の分析法は,水質管理目標設定項目の標準検査法の案として,厚生労働省の水道水質検査法検討会に提出することを計画している.本検討会での審議の後,複数機関における分析法バリデーションを行い,分析法の妥当性評価を経て,標準検査法として公式に設定される予定である.
9農薬の標準検査法が新たに設定されることにより,水道事業者等が実施する水質検査において生じている支障が解消され,我が国の水道水質管理の施策の推進に大きく貢献できる.
その他行政的観点からの成果
 全国の衛生研究所,水道事業者等,登録検査機関等は,本研究で策定した分析マニュアルを活用して,水質検査のSOP(標準作業手順書)を作成し,これらの農薬の水質検査を行うことができるようになる.その結果として,水道原水および浄水中におけるこれらの農薬の存在状況の把握が可能となり,我が国の水道水質管理と水道水の安全確保に大きく貢献できる.
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201305016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,400,000円
(2)補助金確定額
6,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,299,990円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 2,100,060円
間接経費 0円
合計 6,400,050円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
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