文献情報
文献番号
201304001A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア地域にまん延している疾病に関する研究
課題番号
H25-国医-指定-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 愛吉(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 中込 治(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 小池 和彦(東京大学 医学系研究科)
- 柴山 恵吾(国立感染症研究所 病原細菌学)
- 西渕 光昭(京都大学 東南アジア研究所)
- 牧野 正彦(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター)
- 平山 謙二(長崎大学 熱帯学 研究所)
- 稲垣 暢也(京都大学 大学院医学研究科)
- 中釜 斉(国立がん研究セン ター 分子腫瘍学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
83,538,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
佐藤栄作首相とリンドン・ジョンソン大統領の合意をもとに、アジアに蔓延する疾病を対象とする日米医学協力研究事業が開始された。1990年代から新たな感染症(新興感染症)が多数出現し、一旦制圧されたかに見えた感染症(再興感染症)もグローバルな規模で増加した。日米の医学研究者が会し、アジアの研究者も交えて専門分野の交流を推進し、感染症を中心にアジアで蔓延する疾患の対策に貢献する。
研究方法
9専門部会が、米国の研究者と協力してアジアに蔓延する疾病の基礎的、疫学的、臨床医学的な問題点を明らかにする。必要に応じて部会が米国の研究者を招聘する。第16回汎太平洋新興感染症国際会議(EID国際会議)及び日米合同医学協力委員会をアジアで開催する。
結果と考察
平成26年2月9~11日ダッカの国際的下痢症等研究機関(ICDDR,B)において第16回EID国際会議を開催し、日本から51名が参加した。開会式には、Dan W. Mozena駐バングラデシュ米国大使、佐渡島志郎駐バングラデシュ日本大使も出席した。内容的にもインパクトのあるシンポジウムとなった。平成26年2月11日~12日、日米合同のコレラ・細菌性腸管感染症部会、急性呼吸器感染症部会細菌グループと結核・ハンセン病部会、寄生虫部会を開催した。
2月11日、icddr,bで日米医学協力委員会を開催した。平成26年度の第17回EID国際会議は、平成27年1~2月に台北を第1候補として計画すること、などが話し合われた。
各部会は以下の様な専門分野の研究を行った。
コレラ・細菌性腸管感染症部会は、腸管出血性大腸菌、コレラ菌、ピロリ菌、その他多種の腸内細菌について、アジアでの環境水や患者内の変動、検査法研究した。魚介類から病原性腸炎ビブリオを定量的に検出する方法は高感度かつ途上国でも実施可能である。
急性呼吸器感染症部会によると、日本では輸入例だけだが、アジアで多剤耐性菌が広く蔓延し、医療機関において深刻である。日本ではH26年度にカルバペネム耐性菌を届出感染症にすることが検討されている。
結核・ハンセン病部会は、ベトナムの医療従事者の解析を行い、潜在結核感染群と関連する遺伝子多型を見出した。多剤耐性結核菌を解析し、ミャンマーの結核対策の問題点を明らかにした。らい菌の遺伝子診断を改良した。
寄生虫部会は、三日熱マラリアのクロロキン耐性の拡大様式、マラリアワクチンの新たな候補分子、住血吸虫ゲノム内の新たな治療薬標的分子、赤痢アメーバに特有なミトソーム関連分子、アスコフラノンの抗クリプトスポリジウム活性を発見した。
ウイルス性疾患部会は、国内でも確認された重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)に関する疫学調査を行った。アジアにおけるロタウイルスワクチンワクチンの効果を解析した。ハンタウイルスの免疫クロマト法を開発し、疫学調査を進めた。狂犬病、日本脳炎、デング出血熱の分子疫学を明らかにした。蚊媒介性フラビウイルスのNS1’蛋白質が鳥細胞での増殖能に影響する。タイから侵入したデング4型がベトナムで流行始めたことが明らかになった。
肝炎部会は、バングラデシュにおけるB型肝炎対策、肝発癌制御、E型肝炎の実態解明、A型肝炎の流行について継続調査を行った。
エイズ部会は、アジアで流行するHIVの補助レセプター指向性アッセイ系(DSP-Pheno)を開発した。東南アジア地域に特徴的なHLA B*35:05がHIVに防御的に働く。アジア地域におけるHIVワクチンに必要な中和エピトープを同定した。タイにおけるd4T服用に伴うリポアトロフィーの発症にFas遺伝子の多型が関与することを明らかにした。Ashley Haaseミネソタ大学教授(医学協力初代米側エイズ部会長、前日米医学協力委員長)を日本に招聘し、意見交換した。
栄養・代謝部会は、ベトナムやカンボジアなどの経済成長による生活環境の急激な変化が著しい地域での栄養素摂取調査や肥満や生活習慣病の頻度調査を行った。また、経済成長後の日本で得られた生活習慣病の予測因子や薬物の治療効果をこれらの地域で検証した。
環境ゲノミクス・疾病部会によると、PM2.5による大気汚染と大気中の粉塵や重金属濃度、粉塵の変異原性が関連する。日中では脂質酸化由来DNA付加体profileが異なる。ABAQはマウスモデルで大腸発がん促進作用を示した。肥満・糖尿病関連遺伝子のSNPと膵がんリスクに有意な関連を認めた。正常上皮由来3D培養系で、遺伝的再構成による発がんを確認した。
2月11日、icddr,bで日米医学協力委員会を開催した。平成26年度の第17回EID国際会議は、平成27年1~2月に台北を第1候補として計画すること、などが話し合われた。
各部会は以下の様な専門分野の研究を行った。
コレラ・細菌性腸管感染症部会は、腸管出血性大腸菌、コレラ菌、ピロリ菌、その他多種の腸内細菌について、アジアでの環境水や患者内の変動、検査法研究した。魚介類から病原性腸炎ビブリオを定量的に検出する方法は高感度かつ途上国でも実施可能である。
急性呼吸器感染症部会によると、日本では輸入例だけだが、アジアで多剤耐性菌が広く蔓延し、医療機関において深刻である。日本ではH26年度にカルバペネム耐性菌を届出感染症にすることが検討されている。
結核・ハンセン病部会は、ベトナムの医療従事者の解析を行い、潜在結核感染群と関連する遺伝子多型を見出した。多剤耐性結核菌を解析し、ミャンマーの結核対策の問題点を明らかにした。らい菌の遺伝子診断を改良した。
寄生虫部会は、三日熱マラリアのクロロキン耐性の拡大様式、マラリアワクチンの新たな候補分子、住血吸虫ゲノム内の新たな治療薬標的分子、赤痢アメーバに特有なミトソーム関連分子、アスコフラノンの抗クリプトスポリジウム活性を発見した。
ウイルス性疾患部会は、国内でも確認された重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)に関する疫学調査を行った。アジアにおけるロタウイルスワクチンワクチンの効果を解析した。ハンタウイルスの免疫クロマト法を開発し、疫学調査を進めた。狂犬病、日本脳炎、デング出血熱の分子疫学を明らかにした。蚊媒介性フラビウイルスのNS1’蛋白質が鳥細胞での増殖能に影響する。タイから侵入したデング4型がベトナムで流行始めたことが明らかになった。
肝炎部会は、バングラデシュにおけるB型肝炎対策、肝発癌制御、E型肝炎の実態解明、A型肝炎の流行について継続調査を行った。
エイズ部会は、アジアで流行するHIVの補助レセプター指向性アッセイ系(DSP-Pheno)を開発した。東南アジア地域に特徴的なHLA B*35:05がHIVに防御的に働く。アジア地域におけるHIVワクチンに必要な中和エピトープを同定した。タイにおけるd4T服用に伴うリポアトロフィーの発症にFas遺伝子の多型が関与することを明らかにした。Ashley Haaseミネソタ大学教授(医学協力初代米側エイズ部会長、前日米医学協力委員長)を日本に招聘し、意見交換した。
栄養・代謝部会は、ベトナムやカンボジアなどの経済成長による生活環境の急激な変化が著しい地域での栄養素摂取調査や肥満や生活習慣病の頻度調査を行った。また、経済成長後の日本で得られた生活習慣病の予測因子や薬物の治療効果をこれらの地域で検証した。
環境ゲノミクス・疾病部会によると、PM2.5による大気汚染と大気中の粉塵や重金属濃度、粉塵の変異原性が関連する。日中では脂質酸化由来DNA付加体profileが異なる。ABAQはマウスモデルで大腸発がん促進作用を示した。肥満・糖尿病関連遺伝子のSNPと膵がんリスクに有意な関連を認めた。正常上皮由来3D培養系で、遺伝的再構成による発がんを確認した。
結論
部会ごとの専門性を活かして、日米の研究者がアジアで蔓延する疾病の研究を推進している。EID国際会議をアジアで開催し、活発な情報交換の機会を提供した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-05
更新日
-