アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201303023A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-地球規模-指定-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 上原 鳴夫(静岡県立総合病院臨床研究部医療システム研究室)
  • 野崎 慎仁郎(長崎大学国際連携研究戦略本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国が有する安全で安心な血液事業を取り巻く技術・制度の普及を通じてアジア諸国への貢献を行う方策についての調査研究を行う。特に血漿分画製剤事業分野で協力できる技術の選択と同定を行い、技術移転に伴う問題点を提示することにより国際貢献を図っていくことが研究目的である。
研究方法
ラオスと中国の血漿分画製剤の製造と使用に関する実態調査及びWHO内での血漿分画製剤の自国製造に関する議論をフォローすることを中心に調査研究を行った。また、インドネシアでのBio plasma World Asia2013に参加し各種情報を収集するとともに関連企業の幹部と意見交換し、アジアを含めた世界の闕所分画製造体制および需給についての最新の知見を得た。加えてMarket Research Bureau社が調査した世界主要国・地域の血漿分画製剤の使用状況や需要と供給の将来見込みについての資料を解析した。国内の血漿分画製剤の製造主体が統合した場合の生産性の変化などの経済的な影響について解析した。
結果と考察
アジア諸国の経済発展は目覚ましく、それに伴い医療提供体制も充実し、血漿分画製剤の使用量も年々増大している。このように血漿分画製剤の市場は近年目覚ましい広がりを見せており、欧米諸国の分画製剤会社は、安いコストで収集した原料血漿を用いて安価な血漿分画製剤を大量生産し、自国に製造技術をいまだ持たないアジア諸国への市場開拓に力を入れている。しかし、それはWHOの提唱する国内自給の動きと相反するものであり、売血を推進する結果にもつながりかねない。
 本年度は、ラオスと中国の血液事業の調査も行った。ラオスでは国の輸血事業を、組織および技術的作業を含め良好に管理することにより一歩一歩開発させることを主眼に活動を展開している。ラオス社会(コミュニティー)に、National Blood Transfusionは血液ドナーの募集や人類のための血液事業を行っており、個人の利害のために行っているのではないため、経費は顧客が負うべきであることを認知させること。一般大衆に人命救助のための血液の重要性や血液ドナーは全員の責任であり、全く危険なことではなく、慈善のための無償提供であり、売買の対象ではないことを認知させることなど、献血思想の教育や普及啓発に着手したところである。また、血液製剤の検査や製造面では、同じ標準の作業手順がなされているかなど技術面での品質管理を徹底し、十分なかつ安全な血液を社会のニーズに合わせて供給することを将来の目標としている。
 中国の動向は、アジアは言うに及ばず今後の世界の血漿分画製剤の製造・供給体制を左右する。中国は、血漿分画製剤の国内自給を目指しており、江蘇省では2か所の採血所があり、採取した原料血漿を全国主要企業10社の製造拠点に送っている。
 3年間の研究を通じて、ほぼアジア諸国の血漿分画製剤の製造体制の現状や血液製剤の使用状況などについての基礎的資料を入手することができた。
 わが国がアジア諸国の血漿分画製剤の製造体制の確立に協力するためには、足元の国内市場しか有さない国内3社の製造体制の在り方を、次の段階で調査する必要がある。その端緒として本年度は、国内メーカーが統合すると仮定した際の経済学的問題を提起した。その結果、資本投入と生産性の拡大が必ずしも指令しないことが明らかとなった。
結論
わが国のアジア諸国に対する血漿分画製剤の製造体制への協力の態様は、3方法あるものと考えられる。低い検査水準や献血者の確保体制の不備、不十分な医療提供体制などの要因により、多くのアジアの国々は、安全な輸血用血液製剤の製造・供給も儘ならない状況下にある。こうした国に対しては血漿分画製剤の製造体制以前の血液事業全般の水準向上に資する協力が必要である。2点目は、製造の受委託であるが、昨年度の報告書でも述べた輸出貿易管理令などの制度上の制約や運用上の制約・課題を解決しなければならない。3点目は、日本国内に余剰原料血漿が生じたときに製剤化して輸出などを講じることである。しかし、製品として安定的に輸出量を確保できるかということや生産コストが高い問題がある。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201303023B
報告書区分
総合
研究課題名
アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-地球規模-指定-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 上原 鳴夫(東北大学大学院 国際保健学分野)
  • 野崎 慎仁郎(長崎大学国際連携研究戦略本部)
  • 杉内 善之((財)血液製剤調査機構調査課)
  • 菅河 真紀子(東京医科歯科大学大学院 政策科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国が有する安全で安心な血液事業を取り巻く技術・制度の普及を通じてアジア諸国への貢献を行う方策についての調査研究を行う。そして協力できる技術の選択と同定を行い、技術移転に伴う問題点を提示することにより国際貢献を図っていくことである。
研究方法
技術協力を効率的に行うことができる国を抽出するために、各国の調査等を行った。また、2010年11月に東京で開催されたアジア地域の赤十字社・赤新月社シンポジウムの抄録から、アジア各国の血液事業に関する知見を得た。血漿分画製剤をめぐるWHOの専門家会合や血液安全部との定期的な会合の中における議論の中身を調査した。さらに、国内の血漿分画製剤企業の生産性を算出した。事業規模の拡大と生産量の変化との関係についての経済計算も行った。インドネシアで行われた国際会議Bio plasma World Asia2013に参加し各種情報を収集するとともに関連企業の幹部と意見交換し、アジアを含めた世界の闕所分画製造体制および需給についての最新の知見を得た。
結果と考察
中国では各血液センターで血漿分画製剤を製造しているのではなく、主要企業10社の施設で国内血漿をもとに製造されている。海外との血漿分画製剤の受委託製造は行われていない。中国では、輸血用血液製剤は補助金により価格が安く設定されているものの、血漿分画製剤は価格が高く入手しにくい。フィリピンでは、血漿分画製剤は、100%輸入している。そのため、価格が高額になり患者の大きな負担となっている。一方、自国に生産施設を持たないため献血の80%が分画製剤のSource Plasmaとして他国に輸出されている。首都マニラでは、2011年12月から総合医療施設を建設し、そこで海外からの技術・製造装置を導入することにより小規模血漿分画製剤製造体制の構築を検討している。インドおよびASEAN諸国の血液事業の概要、特に血漿分画製剤の製造及び供給、使用実態であるが、インド、タイ、マレーシアにおいては、自国での生産体制を有しているか、あるいはその途上にある他の国については、製造そのものを当初から考えておらず、輸入に頼り血漿分画製剤の製造に至っていない状況であった。なお、製造をしている国においても量と質の確保は十分でなく、多くの課題を抱えていることが判明した。タイではNBCが唯一の分画製剤製造施設を持っているが、その製造能力は1万Lと規模が小さい。タイ赤十字社は韓国のグリーンクロス社の協力の下、年間20万Lのアルブミン、静注用免疫グロブリン、第Ⅷ因子製剤を製造することになった。ミャンマーは、無償の献血システムの更なる確立や検査精度の向上などを最優先課題として同国が取り組んでいることから、血漿分画事業を立ち上げることやミャンマーで集められた原料血漿を製造受委託することは現段階ではむずかしい。ベトナムは、日本からの血液製剤製造技術支援を自ら望んでいた。支援対象国として有力な候補国と思われる。WHOでは、血液安全部の主張は従来どおり、血漿分画製剤を含む血液製剤は人体からの血液を原料としており、国民全体の資産であることから、血漿分画製剤についても自国での製造を原則とすべきであるとの考え方である。一方、医薬品品質管理部は、国内自給は否定しないが血液製剤は必須医薬品の一部であり、その品質管理はGMPに基づきWHOの基準に照らし合わせて適切な管理をすべきとの主張であり、2012年末に血漿分画製剤を含む血液製剤が必須医薬品のリストに加えられることが決定された。事実上の開発途上国での血漿分画製剤の製造を断念させ、製造体制の構築を阻害するものとなり得る可能性を秘めている。アジアの血液需要は増大するが、血液の検査水準などの安全性の問題の解消に取り組む必要があることが、Bioplasma World Asia 2012の会議から総括される。製造企業の生産性から、わが国の製造3社が一体化しても、かえって生産要素の投入量が増えるにつれて限界生産力は逓減していくことが明らかとなった。
結論
アジア諸国に対する血漿分画製剤の製造体制への協力の態様は、3方法あるものと考えられる。低い検査水準や献血者の確保体制の不備、不十分な医療提供体制などの要因により、多くのアジアの国々は、安全な輸血用血液製剤の製造・供給も儘ならない状況下にある。こうした国に対しては血漿分画製剤の製造体制以前の血液事業全般の水準向上に資する協力が必要である。2点目は製造の受委託であるが、輸出貿易管理令などの制度上の制約や運用上の制約・課題を解決しなければならない。3点目は、日本国内に余剰原料血漿が生じたときに製剤化して輸出などを講じることである。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201303023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アジア諸国に対する血漿分画製剤製造体制構築の協力対象国の実情を把握することができた。同時に、WHOの政策の方向性についても知ることができた。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
該当しない
その他行政的観点からの成果
わが国の血漿分画製剤事業に将来ビジョンの構築ならびに将来のアジア諸国における安全な血漿分画製剤の供給体制の確立に資するものである。
輸出貿易管理令の存廃に関する議論につながった。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
2018-07-05

収支報告書

文献番号
201303023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,500,000円
(2)補助金確定額
16,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 49,598円
人件費・謝金 6,000,945円
旅費 2,095,270円
その他 8,354,187円
間接経費 0円
合計 16,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-