文献情報
文献番号
201303021A
報告書区分
総括
研究課題名
地球規模の模造薬(カウンターフィット薬)蔓延に対する規制と健康影響に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-地球規模-指定-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
- 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
- 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
- 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,220,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
一般用薬のインターネット(以下、ネット)販売に関する最高裁判決(H25 1 11)により、医薬品のネット販売が盛んになる。承認薬を国内販売する正規サイトに対して、個人輸入代行サイトは資格・免許が不要で、無承認薬、要処方せん薬の処方せん無確認販売、不適正使用誘発など重大な保健衛生問題を呈するとともに、模造薬の流入口でもあった。欧米の模造薬対策は強化され、模造薬は手薄な国・地域に向かう。そこで1)欧米のネット薬監視と模造薬規制、2)模造薬による健康被害発生調査法の評価、3)個人輸入代行サイトで販売される医薬品・医療機器の保健衛生実態調査、並びに4)模造薬鑑別法の開発により模造薬対策強化に資する。
研究方法
1)欧米のネット薬監視と模造薬規制:①担当者との交信、②文献検索・情報収集、③国際会議参加によって情報を収集・整理した。2)模造薬健康被害調査法の評価:PubMedで検索式(counterfeit OR fake OR falsified OR spurious OR bogus)AND(medicine OR drug)により得られた文献の英文要旨からキーワード抽出を行い、模造薬による健康被害論文とそうでない論文の差異を検討した。また、PubMedと3種のデータベースについて、模造薬健康被害報告の効率的収集可能性を比較・検討した。3-1)個人輸入オメプラゾール(OPZ)の観察:ネット上の日本語と英語の個人輸入代行15サイトにOPZ製剤を発注し、サイトと製品の観察した。3-2)個人輸入シアリスの真正性調査:ネット上の日本語と英語の個人輸入代行25サイトを介してシアリス錠を発注し、サイトと入手製品を観察した。3-3)個人輸入非視力補正用カラーコンタクトレンズ(CCL)の品質調査:ネット上の個人輸入代行サイトから購入したCCLの保存液中の残留モノマーと金属元素の定量並びに蛍光観察を行った。4)品質不良OPZ製剤の模造鑑別研究:途上国の薬局・薬店で購入したOPZ製剤91品目のうち主として溶出試験に不適合であった品質不良品(全て輸入品)について、電顕やX線CTで腸溶性被膜の有無や顆粒内部を検査し、胃溶顆粒と腸溶顆粒の混在状況と溶出挙動から模造性を検討した。
結果と考察
1)欧米のネット薬監視と模造薬規制:①非処方せん薬のみネット販売を認めているフランス、イタリア及び日本に対し、米国、イギリス、豪は処方せん薬もネット販売を認めていた。非合法ネット薬に対して各国政府及び地方政府が官民で協力し、サイト監視や啓発を強化していた。②米国会計検査院報告書「インターネット薬局」が公表され、サイトの大半は外国発で巧みな詐欺サイトの識別は消費者には困難だった。医薬品流通網防護法の成立により個包装レベルで流通履歴管理体制を2023までに構築する。③欧州評議会医薬品犯罪条約2011は3か国が批准、あと2か国批准すれば発効する。2)模造薬健康被害調査法の評価:H24調査で使用した検索ワードに不要なワードはなく、さらに特異的な検索ワードを挙げることも困難だった。PubMedは、模造薬による健康被害報告の文献調査に適切だった。3-1)個人輸入OPZの観察:個人輸入代行15サイトからOPZ製剤を計28サンプル入手した。すべてのサイトが、薬事法や特定商取引法に抵触する可能性があり、処方せん要求サイトは皆無であった。医薬品と分かる税関申告は9サンプルのみで、外観による製品不良が1製品あった。3-2)個人輸入シアリスの真正性調査:19サイトから24製品届いたが、観察により11製品は模造薬だった。3-3)個人輸入CCLの品質調査:MAAが11製品中4製品から最高1.9ppm検出され、また、10製品から金属元素が検出されたが、いずれも細胞毒性を引き起こす含有量ではなかった。蛍光も観察されなかった。4)品質不良OPZ製剤の模造鑑別研究:主として酸性条件下での溶出性不良品の電顕観察やCT画像観察から、カプセル内に割けた顆粒や被膜が施されていない顆粒が含まれている製品が見出された。被膜の有無による2種類の顆粒の混在は模造の可能性も推察され、電顕やX線CT観察が模造判定に有用である。
結論
欧米はネット薬に対する監視を強化し、消費者教育にも傾注していた。模造薬による健康被害報告調査は、PubMedによるキーワード検索を継続する。ネット個人輸入代行による医薬品販売は触法の虞がある広告や、処方せん無確認、外国語添付文書、税関への虚偽申告などが常態化し、シアリスは収集途中ながら半数近くが模造品だった。また、開発途上国で入手したOPZ製剤は胃溶性顆粒と腸溶性顆粒が混在し、模造性も疑われる悪質な不良品であり、製剤特性の模造にも注意を向ける必要がある。
公開日・更新日
公開日
2015-07-09
更新日
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