統一した分析フォーマットを用いた国際保健領域における官民連携事例の分析

文献情報

文献番号
201303018A
報告書区分
総括
研究課題名
統一した分析フォーマットを用いた国際保健領域における官民連携事例の分析
課題番号
H25-地球規模-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
湯浅 資之(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 北島 勉(杏林大学大学院 国際協力研究科 国際医療協力)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 国際保健分野における官民の連携事例は、報告書や科学論文のかたちで一定程度蓄積されてきた一方、連携事業に共通する成功の諸条件、課題、他に活用できる知見の抽出等を目的とした研究分析は未だない。また、国際保健領域における「官民連携」の定義は幾つか存在するが曖昧なままである。
 本研究では、官民連携に関係する概念や定義の整理を行う。その上で、多種多様な官民連携事例を系統立てて分析ができるように「官民連携に関した統一分析フォーマット」を開発する。途上国を中心に官民連携の成功事例を視察し、開発した分析フォーマットを活用して事業レヴューを行い、最後にそれらの結果をまとめ、今後進めるべき官民連携の教訓を導き出すことを目的とする。
研究方法
 官民連携事例に関する報告書や文献を収集・分析し、連携事業の担当者らとも意見交換を重ねて統一分析フォーマットの開発にあたった。初年度後半には、途上国を実際に訪問し、統一分析フォーマットを活用した官民連携事例の情報収集・分析を行った。湯浅は南米(ボリビア・ブラジル)、北島はアフリカ(タンザニア・ウガンダ)、白山はアジア(バングラデシュ・ラオス)の開発途上国における官民連携事例の評価を担当した。
結果と考察
 研究初年度に官民連携、BOPビジネス、ソーシャルビジネス、CSR(社会的責任)/CSV(共有価値の創造)の定義と概念を整理した上で、「官民連携とは、企業の成長を担保しつつ、公共が求める社会課題的解決のために公的機関と民間企業が協働するプロセス」と定義した。続いて、事業概要調査(事業内容の把握)、導入プロセス調査(連携のきっかけ・経緯の分析)、成果インパクト調査(連携効果の検証)、連携に関する調査(連携を可能とした諸条件の検証)の各調査項目から構成された「統一分析フォーマット」を開発した。また、フォーマットによって収集された情報を数値データ化(点数化) して評価できる「定量化・可視化のレーダーチャート(統一分析フォーマット簡易版)」を考案した。
 タンザニアでは、住友化学とタンザニアのAtoZ 社によって設立された合弁会社ベクターヘルス社によるマラリア対策用蚊帳Olyset ネットの製造に関する情報収集を行った。統一分析フォーマットを構成している項目のうち約3 割にあたる項目に関する情報収集ができなかった。
 ウガンダでは、サラヤ株式会社による新式アルコール消毒剤による感染症予防を目的としたBOP ビジネス事業準備調査について情報収集を行った。
 バングラデシュからは、日本ベーシック株式会社による「ダッカ首都圏で実施した自転車一体型浄水器を活用した水事業」について情報収集を行った。統一分析フォーマットの開発にあたり最初に想定していた評価対象がJICAによるBOP ビジネス案件であったため、ほぼ全ての項目について情報収集ができた。
 ボリビアでは、住友金属傘下のサンクリストバル鉱山周辺地域内の住民(鉱山労働者及びその家族も含む)に対する福利厚生を向上するための「サンクリストバル2次病院プロジェクト」について情報収集を行った。この事業が開始間もない時期であったことや、本案件は2次病院の建設・運営という事業内容であったことから、BOP ビジネスを念頭に置いて開発した統一分析フォーマットは、その半分以上を埋めることができなかった。
 ブラジルでは、サンパウロ州知事のイニシアティブにより建設されたサンパウロ州立がんセンターについて情報収集を行った。同センターは、その運営をサンパウロ大学医学振興財団(非営利団体)に委託したことによりセンターのパフォーマンスが多いに改善された。本件でも、当事国主導で運営された官民連携事業であるため、日本製品の普及を念頭に置いたフォーマットは適切でなく、改善が必要であった。
 ラオスでは、様々な官民連携の事例について、ラオス国保健省や国際援助機関の担当者らに対し聞き取り調査を行い、援助政策について考察した。
結論
 初年度には統一分析フォーマットを開発し、フォーマットの妥当性を検証するため途上国における事例の視察を一部実施した。BOPビジネスの視点から日本製品を普及させる官民連携事例を念頭として開発したフォーマットは、当事国主導の事業や、製品普及以外の事業を十分に分析できるフォーマットではなかった。次年度は、初年度の経験を踏まえてフォーマットの改善を図り、汎用性があるものにする必要がある。
 開発した統一分析フォーマットを活用し、官民連携の成功事例を詳細に分析することで、事業の成功条件、課題、他に生かせる知見の抽出することが可能になる。より有用な評価ツールや分析結果を提供できるよう、次年度にかけて引き続き取り組んでいく。   

公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201303018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,048,000円
(2)補助金確定額
5,048,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 296,668円
人件費・謝金 2,077,011円
旅費 1,452,551円
その他 73,770円
間接経費 1,148,000円
合計 5,048,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
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