ソーシャル・キャピタルを活用した保健医療福祉ネットワークの構築-震災復興の効果的推進に向けて

文献情報

文献番号
201303016A
報告書区分
総括
研究課題名
ソーシャル・キャピタルを活用した保健医療福祉ネットワークの構築-震災復興の効果的推進に向けて
課題番号
H24-地球規模-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
濱野 強(国立大学法人 島根大学 研究機構戦略的研究推進センター)
研究分担者(所属機関)
  • 塩飽 邦憲(国立大学法人 島根大学)
  • 並河 徹(国立大学法人 島根大学 医学部)
  • 伊藤 勝久(国立大学法人 島根大学 生物資源科学部)
  • 片岡 佳美(国立大学法人 島根大学 法文学部)
  • 福間 美紀(国立大学法人 島根大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災は,死者・行方不明者が震災関連死を含め2万人を超え,避難住民が343,935名,建物の全半壊383,246戸という被害をもたらした。この数字は,多くの住民が生活の場を失っただけでなく,住民同士が地域で培ってきた関係性(=絆)も喪失したことを意味している。阪神・淡路大震災では,震災後10年間で500名以上の孤独死が報告されており,被災前の絆をいかに復興に結びつけ,活用し,醸成していくかが重要な課題である。そこで本研究では,ソーシャル・キャピタル(SC)の効用に関する国際比較とSCを基盤とした復興を支える健康医療福祉ネットワークのモデル化を行うことを最終的な目的とする。
その中で平成25年度の目的は,ソーシャル・キャピタルの評価ツールの検討,ソーシャル・キャピタルの社会的な効用に関する国際共同研究,被災地へのインタビュー調査の実施と健康医療福祉ネットワーク構築準備を実施した。
研究方法
ソーシャル・キャピタル評価ツールの検討では,既存の公表資料,研究論文,及び経済協力開発機構(OECD: Organization for Economic Co-operation and Development)でのインタビュー調査(平成25年9月17日)を参考とした。また,被災地でのヒアリング調査は,岩手県A地区(被災地の現状と課題の把握:平成25年10月9日),福島県いわき市(保健・医療・福祉ネットワークの現状と地域住民の自立のあり方の把握:平成25年11月28日)を対象として実施した。
結果と考察
(1)SCの国際比較研究と社会的効用の定量的な検討
本研究課題で求められている「SCの研究成果の集約と国際比較」の基盤となるSCの評価方法についてOECDが進めているソーシャル・キャピタルデータバンクについてヒアリング調査を行った。したがって,昨年度は,国内外の状況について個別検討を行ったが,本年度は一連の研究成果を包括的に取りまとめた。その結果,国際比較研究では,SCを「personal relationship」「social network support」「civic engagement」「trust and cooperaticve norms」の4軸で整理することが現時点で有用と結論づけられた。そして,ルンド大学(スウェーデン)との国際共同研究を実施し,SCが死亡リスク,精神疾患と関連することを大規模コホートデータに基づき明らかにした。

(2)被災地へのインタビュー調査の実施と健康医療福祉ネットワーク構築準備
上記と並行して社会的効用を踏まえ,被災地の健康医療福祉ネットワークの構築について検討を行った。具体的には,SCを活用した被災地復興の実践的な課題の把握と進捗状況の把握を目的に,被災地住民(岩手県・福島県)の健康課題についてインタビュー調査を実施するとともに,それを支える保健・医療・福祉の体制整備・連携体制に関する現状把握を行った。さらに,次年度,被災地の健康医療福祉ネットワークのモデル化を行う上での調査ツール(地域住民の関係性を「見える化」する手法)を開発した。これにより,地域のSCがどのような要素によって構築され,また,保健・医療・福祉をどのように関連づけていくかが地域の健康課題との関連性の中で整理をすることが可能となった。
結論
本年度の研究では,インタビュー調査や定量的な解析を通して,SCをどのように評価すべきか,また,その社会的効用が明らかになるよう知見の整理が図られた。それと並行して,SCをどのように形成するかという論点を明確にするために地域の人間関係の「見える化」を実施し,両者の理解に基づく健康医療福祉ネットワークの体系的な検討が可能となることを明らかにした。また,これまでの検討より被災地では,インフラ整備が進むなかで,“地域”をどのように再形成していくかという議論が未成熟であることが浮き彫りになった。したがって,本研究で得られた社会的効用を踏まえ,SC概念を軸に据えた復興計画の再検討(ハードとソフトの両面からの議論)が必要であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201303016Z