災害における公衆衛生的な活動を行う支援組織の創設に係る研究

文献情報

文献番号
201303013A
報告書区分
総括
研究課題名
災害における公衆衛生的な活動を行う支援組織の創設に係る研究
課題番号
H24-地球規模-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高野 健人(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大友 康裕(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 救急災害医学)
  • 中村 好一(自治医科大学 公衆衛生学)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 健康社会医学)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院 公衆衛生学)
  • 押谷 仁(東北大学大学院 微生物学・感染症学)
  • 中村 桂子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 国際保健医療協力学)
  • 笹井 康典(大阪府枚方保健所)
  • 佐々木隆一郎(長野県飯田保健福祉事務所)
  • 坂元 昇(川崎市健康福祉局)
  • 藤内 修二(大分県中部保健所)
  • 近藤 久禎(国立病院機構災害医療センター)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,950,000円
研究者交替、所属機関変更
 

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災の発災後、被災地住民の健康を守るための医療支援や公衆衛生的な支援が多くの関係者によりなされてきた。しかし、感染症対策、避難所などの環境衛生、高齢者や乳幼児また疾病など健康にリスクのある人々へのケア、広く地域の廃棄物、汚水等の衛生管理、生活環境条件への支援など、中長期にわたる一貫性のある公衆衛生的支援をするための組織的仕組みが存在せず、災害における公衆衛生的な活動を行う支援組織の必要性が新たに認識されることとなった。そこで、災害発生初期から中長期にわたり、公衆衛生的な活動を行う支援組織の創設、その支援組織の活動内容、編成・登録・研修の方法、派遣方法、また、運用計画のあるべき要件、さらにはその実行を担う人材の備えるべきコンピテンシーとその能力修得のためのプログラムを示すことを目的として本研究を行った。
研究方法
「災害時健康危機管理支援チーム(Disaster Health Emergency Assistance Team: DHEAT)(仮称)」の設立についての提言をふまえ、災害発生初期から中長期にわたり、公衆衛生的な活動を行う支援組織の創設について、(1)組織と運用、(2)官民協働、(3)人材育成、(4)国際協力の観点から、調査、検討を行った。
結果と考察
DHEATは被災地の都道府県庁、保健所、市町村の災害医療対策本部等に派遣され、その指揮のもとで被災地の災害対策を支援することが期待される。(1)DHEATの組織と運用については、①支援内容などの方法論の標準化、支援調整を担う全国的な組織、②権限を付与するしくみ、③都道府県、保健所、市町村との連携、④DMATとDHEATとの連携に関わる具体的事項、⑤災害時の公衆衛生アセスメントの標準化、⑥支援チームの標識化、について提示した。(2)官民協働については、民間支援者の被災地での活動は被災地域の保健医療の統括者からの情報をふまえる必要がある。また、公的組織の専門家だけでなく、民間、一般市民の、啓発、人材育成の重要性、これらの民間人材の組織化の推進が必要である。(3)人材育成では、DHEATに固有で必須の事項についての研修・訓練方法の開発、研修後のフォローアップの提案、行政職と非行政職別に必要な研修・訓練の提案、DHEATの受け入れ側の人材育成の必要性の提案、医学教育における人材育成プログラムの開発を行った。また、DHEATへの参加資格については、全国で標準化した研修・訓練制度を確立し、災害時の健康危機管理に対応するための専門的研修・訓練を行い、その修了者に対して資格、また登録方法などの課題を抽出した。(4)災害時の公衆衛生活動に関する国際協力活動においては、All-Hazard Approachに基づく災害対応の基本を確立させ、支援要員はCluster Approachについて十分理解しておく必要がある。災害時に海外からの医療支援をわが国で受入るには、日本の地域の医療システムや生活環境、文化を踏まえての医療調整が必要である。事前の想定に基づく受入れニーズの明確な発信が必要で、自治体ではなく国が受入れに責任を持つ体制が必要であること、事前の協力協定の締結の有用性などを指摘した。大規模災害が海外で発生した場合に、公衆衛生活動でも日本が果たすべき役割は大きいが、現状では日本がその役割を果たす体制が確立していない。DHEATの創設、人材育成は、災害時の国際的な保健医療支援とも接点を持ち、体制を構築することが望ましい。
結論
「災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)」の創設と運用について、以下を提起した。
災害時に迅速に被災地に入り、医療機関の被害の状況や、被災者の飲料水や食料、生活環境の衛生状態、感染症発生などの状況を把握して、被災地に必要な人的、物的支援の確保、供給、配置を行う「災害時健康危機管理支援チーム(Disaster Health Emergency Assistance Team: DHEAT)(仮称)」を設立する。DHEATを、被災地の都道府県庁、保健所、市町村の災害医療対策本部等に派遣し、その指揮のもとで一定の権限をを付与され被災地の災害対策を支援する。全国で標準化した研修・訓練制度を確立し、その修了者に対してDHEATへの資格を与え、登録する。民間団体やボランティア団体等に所属する公衆衛生の専門性を備えた人材も、DHEATの一員として参画できる仕組みを構築する。全国的な組織の運営、支援チーム派遣、情報管理と情報発信を担うための、各地域の実状を反映した全国的なシステムを構築する。DHEATと災害派遣医療チーム(DMAT)等との都道府県レベルにおける連携をはかり組織体制を構築する。国内の災害支援に限定せず、国際的な支援および海外からの支援受入等をも視野に入れる。

公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201303013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,522,000円
(2)補助金確定額
2,522,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 42,474円
人件費・謝金 304,000円
旅費 573,500円
その他 1,030,026円
間接経費 572,000円
合計 2,522,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
-