ポストミレニアム開発目標のための新保健人材戦略

文献情報

文献番号
201303009A
報告書区分
総括
研究課題名
ポストミレニアム開発目標のための新保健人材戦略
課題番号
H24-地球規模-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
神馬 征峰(東京大学大学院 医学系研究科 国際地域保健学)
研究分担者(所属機関)
  • 安岡 潤子(東京大学大学院 医学系研究科 国際地域保健学 )
  • 大塚 恵子(東京大学大学院 医学系研究科 国際地域保健学 )
  • 柴沼 晃(東京大学大学院 医学系研究科 国際地域保健学 )
  • Yamamoto Kohatsu Tamy Sofia (ヤマモト コハツ タミ ソフィア) (東京大学大学院 医学系研究科 国際地域保健学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の特色は国際機関との連携による保健政策研究とフィールド研究とを組み合わせている点にある。第1に、これまで連携してきたWHOやアジア太平洋保健人材連盟(AAAH)との協力のもとに、革新的教育手法として注目を浴びている多職間教育(IPE)推進のための研究とアジア太平洋地域の低所得国におけるミレニアム開発目標(MDG)の進捗度の分析を行った。第2に、世界で保健人材が不足している国においてフィールド研究と文献研究を行った。まずは、ペルーでユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)と保健人材の質に関する研究を、次いでタンザニアで中間レベル保健従事者の栄養改善に及ぼす役割に関する研究を行った。そして最後にこれまでのカンボジアでのフィールド研究を発展させ、包括的マラリア対策におけるコミュニティヘルスワーカー(CHW)の役割に関する研究を世界規模で行った。
研究方法
第1の世界の保健人材政策研究に関しては、とりわけ、途上国におけるIPE推進のための研究を系統レビューによって行った。MDG研究に関してはケーススタディーと文献レビューを行った。第2のフィールド研究に関しては、まずペルーにおいて横断研究を行い、健康保険加入率の高い地域における医療従事者と患者の満足度を調査し、相互の関連についても検討した。この研究はペルー市郊外のカヤオ地域において、21か所のプライマリヘルスケアセンターに勤務する363名の医療従事者とそこに通う1,556名の患者に対してなされた。次ににタンザニアにおいては、中間医療従事者の役割に関する系統レビューを行った後、中間レベル保健従事者対象の栄養教育トレーニングが、HIV陽性児ケアに及ぼす効果についてランダム化比較試験を用いて実施した。最後にCHWの働きに関しては、生態学分野で用いられているループアナリシスの手法を用い、世界の包括的マラリア対策においてCHWの果たす役割について分析した。
結果と考察
第1にIPE研究は、途上国ではほとんどなされていなかった。しかしながら、IPEは保健従事者の質をあげ、同時に多職種を教育できるという利点があり、途上国でも採用すべき優れた手法であることを文献レビューによって示した。その結果はWHOガイドラインにも掲載された。また先進国でなされた研究よりIPEの10の教訓を抽出し、その教訓をもとに途上国でもIPEを推進し得ることを示した。次にアジア太平洋地域におけるMDGの進捗分析を行い、MDG指標のみによって一国の発展の進捗は知り得るものではないこと、また、国独自の発展の進捗を多彩な角度から分析し結果を示すことが、その国の今後の発展計画を作る上で有効であることを示した。ペルーにおけるUHC研究においては、保険加入率が研究対象地域では93%まであがっていた。ところが、医療従事者の就業満足度も患者満足度も3割~4割程度でしかなかった。UHCを推進するにあたり、量拡大だけでなく質の向上も同時に検討すべきことが示唆された。タンザニアにおける中間レベル保健医療従事者の役割については、彼らへの栄養教育トレーニングが、知識、能力及び低栄養児の健康管理全ての向上において効果があることが分かった。更に、栄養教育とレーニングは、ケアを受ける子供たちのエネルギー摂取、食事回数及び食事の種類も有意に改善することも分かった。第二に、保健従事者対象の栄養教育トレーニングがHIV陽性児ケアに及ぼす効果についてのランダム化比較試験を実施してきた結果、このトレーニングは、栄養カウンセリング、食品衛生及び食事供給行動を含む、栄養関連の一般知識及びHIV関連知識を向上させることが分かってきた。最後に、包括的マラリア対策において、CHWを含む住民対象の教育や意識向上のための介入は、他の全ての介入を促進する効果を示した。他方、介入の組み合わせによっては(例えば殺虫剤の使用と殺虫剤処理済蚊帳)、マラリア発症率減少への効果を阻害しうるものがあることも分かった。地域に適した介入の組み合わせを検討することは、CHWに課せられた重大な任務であることが再認識された。
結論
第1に、保健分野における革新的教育手法の一つとして、途上国においてもIPEは有効でありうることを示した。第2に、アジアにおけるMDGの進捗度を分析することにより、国別の健康指標をより詳細に分析し、国独自の発展指標をみていくことの重要性を示した。第3に、UHCの推進にあたっては質の確保が重要でありうることを示した。最後に中間レベル保健従事者とCHWが栄養対策やマラリア対策に大きな貢献をなしうることを示した。以上より、保健人材不足の途上国においても、教育段階から革新的教育を試みる価値はあり、保健人材戦略の推進にあたっては、国独自の発展指標を定め、量だけでなく質を意識して取り組むことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201303009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,850,000円
(2)補助金確定額
4,850,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 260,677円
人件費・謝金 1,310,092円
旅費 1,321,500円
その他 857,731円
間接経費 1,100,000円
合計 4,850,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
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