東日本大震災等による医療・保健分野の統計調査の影響に関する高度分析と評価・推計

文献情報

文献番号
201302004A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災等による医療・保健分野の統計調査の影響に関する高度分析と評価・推計
課題番号
H24-統計-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 浩(東北大学大学院 経済学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 日下輝美(福島学院大学福祉学部)
  • 赤沼恭子(東北大学医学系研究科)
  • 小林健太郎(明星大学経済学部)
  • 宣 賢奎(ソン ヒョンギュ)(共栄大学国際経営学部)
  • 佃 良彦(東北大学経済学研究科)
  • 増田 聡(東北大学経済学研究科)
  • 目黒謙一(東北大学医学系研究科)
  • 山口拓洋(東北大学医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は東日本大震災が、
(1) 保健・医療・福祉分野等に関する統計データに及ぼした影響の評価、
(2) 国民の健康・福祉および厚生自体に及ぼした影響に関し、
(3) エビデンスと統計を収集・分類・保存し、データベース化して国民に対しわかりやすい情報提供のための研究を行うことである。
研究方法
 本研究は研究の趣旨と研究計画に基づき、
1.『国民生活基礎調査』に準拠した被災地・非被災地の健康調査を行い、統計的な分析を行った。
・第1回 震災後2年:全国健康アンケート調査の回帰分析。
 この調査は、被災3県(岩手・宮城・福島)とそれ以外の都道府県を対象とし、インターネット調査会社を通じて、全国の登録会員に調査協力を依頼し、850サンプル(うち被災3県480サンプル、その他全国の都道府県370サンプル)より1.身体の健康、2.心の健康、3.医療機関の受診状況、4.生活環境の変化、5.放射能に対する意識、6.居住地の変化に関する回答を得た。調査日は東日本大震災から2年が経過した後の2013年3月21日であった。)

2. 公表官庁統計の受けた「歪み」解題
 
医療福祉サービスの市場需給モデルや、計量経済学の識別問題の知見をもとに、地域へのヒアリングによる情報の肉付けや他の統計調査(特に供給サイド)を組み合わせることで、見かけ上の需要減少の内容を解明している。
結果と考察
(1) 被災地住民の健康の統計的な分析
 初めに東日本大震災発生後3ヶ月経過までの時点での心身の健康状態について尋ねた結果を取りまとめた。結果を見ると、身体の健康に関しては被災3県では「悪い」状態であったと答えた人の割合が14.8%である。被災地以外の全国の住民の平均8.4%より高くなっている。この傾向は心の健康ではさらに大きく、震災直後に心の健康が「悪い」状態であったと回答した人は被災3県で32.1%であり、この比率は被災3県以外の全国の平均値18.6%よりもかなり大きくなっている。
(2) 医療費と患者数
 厚生労働省による統計データの『医療費の動向調査』と『病院報告』によると、震災後に減少していた。しかし、実際には健康を損ねた人が多く存在していた。
このため、病院に行きたくても行くことができなかった、被災によって人口が減少した、あるいは医療派遣チームによって医療を受けた等の理由から、医療費と患者数の統計に反映されなかったことが考えられた。
(3) 労働求人統計
 被災3県については,2011年3月時点での第1段階の影響を受けて新規の求職者数が減少すること、011年4月時点での第1段階での影響を除いた第2段階の影響は,新規求職者の増加という形で確認されるという点が明らかになった。ただし,第2段階の影響については,3月に活動できなかった分の押しのけ効果である第1段階の影響を除いたうえで、さらに新規求職者数が増加するという効果が確認されている。

結論
 本年度の研究によって得られた主要な結論は以下の3つである。
(1) 被災地の健康状況の統計的把握
 本研究では、非被災地と比較することで、被災地住民の健康状態の悪化を検証できた。
健康悪化は、初期のショックが大であるが、必要があるのに非通院者であることも状況を悪化させている。
女性と年配者でリスクが高くなる
(2) 被災地の実態と公式厚生統計の乖離
 現時点で一般に公表されている公式の厚生統計の数値は、被災地における医療、福祉、健康の実態やサービスへの実態を特に供給制約の面からゆがめた形で表している。
 そこで、医療福祉サービスの需給モデルに基づき、供給制約を加味した解釈が必要である。
 政策判断の為の統計補正作業の必要性
 上記の2つの結論から、供給制約と健康状況の悪化という制約条件を加味した、データ復元モデルを作成することが肝要であるといえる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201302004B
報告書区分
総合
研究課題名
東日本大震災等による医療・保健分野の統計調査の影響に関する高度分析と評価・推計
課題番号
H24-統計-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 浩(東北大学大学院 経済学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 日下輝美(福島学院大学福祉学部)
  • 赤沼恭子(東北大学医学系研究科)
  • 小林健太郎(明星大学経済学部)
  • 宣 賢奎(ソン ヒョンギュ)(共栄大学国際経営学部)
  • 佃 良彦(東北大学経済学研究科)
  • 増田 聡(東北大学経済学研究科)
  • 目黒謙一(東北大学医学系研究科)
  • 山口拓洋(東北大学医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は東日本大震災が、
(1) 保健・医療・福祉分野等に関する統計データに及ぼした影響の評価、
(2) 国民の健康・福祉および厚生自体に及ぼした影響に関し、
(3) エビデンスと統計を収集・分類・保存し、データベース化して国民に対しわかりやすい情報提供のための研究を行うことである。
研究方法
 平成24年度の研究
a) 実際の医療、保健、福祉、地域統計を扱うパートと
b) 震災の影響による欠損値問題を統計学的に検討するパートの2つの柱に分けた。
 平成25年度の研究
1.『国民生活基礎調査』に準拠した被災地・非被災地の健康調査を行い、統計的な分析を行った。
2. 公表官庁統計の受けた「歪み」解題
 医療福祉サービスの市場需給モデルや、計量経済学の識別問題の知見をもとに、地域へのヒアリングによる情報の肉付けや他の統計調査(特に供給サイド)を組み合わせることで、見かけ上の需要減少の内容を解明している。
結果と考察
平成24年度の研究
a) 実際の医療、福祉統計を扱うパート
(1) 医療・健康分野
i) 医療需要に関する分析
『患者調査』の結果による外来患者の変化をみると、岩手県では減少、宮城県でも大きな増加はない。また、福島県では『患者調査』の統計そのものが欠落しており、情報の欠損が指摘できる。
いっぽう、供給サイドの統計として『医療施設調査』をみると、被災地3県は全国平均よりも減少率が大きいという結果が得られている。
(2) 福祉分野
i) 介護保険事業統計による分析
 ここでは、『介護保険事業状況報告、介護給付費実態調査』、『介護サービス施設・事業所調査』の統計データをもとに統計のゆがみと震災の需給に及ぼした影響を分析した。
東日本大震災により被災地3県における16保険者で最短で1か月、最長で16か月の介護保険事業統計が欠落しており、ここから事実把握のための統計にゆがみが生じている。
ii) 南三陸町現地ヒアリング調査
「要介護1」の介護サービスについては、その利用がなかったのではなく、福祉避難所の実施などにより介護保険サービスとして計上されていなかった。また、第一号被保険者数を把握する根拠となる住民基本台帳の整備に2011年7月までかかったことなどが統計のゆがみの原因として指摘できる。
(3) 地域統計分野
 震災前後の雇用=有効求人倍率の月次推移を通じて、被災地域の経済活動への影響と被災者の求職行動へ与えた影響を分析した。
(4) 統計理論分野
厚生政策に活用するための統計値の分析の観点から「不完全データとしての配慮が必要かどうかを判断するガイドライン」として以下の4つの視点を整理した。
1) 物理的な情報の欠落の有無
2) 情報への事実の反映の有無
3) 観測・分析上の必要情報の有無
4) 統計政策上必要な情報の有無
平成25年度の研究
(1) 被災地住民の健康の統計的な分析
身体の健康に関しては被災3県では「悪い」状態であったと答えた人の割合が14.8%である。被災地以外の全国の住民の平均8.4%より高くなっている。この傾向は心の健康ではさらに大きい。
(2) 医療費と患者数
 病院に行きたくても行くことができなかった、被災によって人口が減少した、あるいは医療派遣チームによって医療を受けた等の理由から、医療費と患者数の統計に反映されなかったことが考えられた。
(3) 労働求人統計
 被災3県については,2011年3月時点での第1段階の影響を受けて新規の求職者数が減少すること、011年4月時点での第1段階での影響を除いた第2段階の影響は,新規求職者の増加という形で確認されるという点が明らかになった。
(4)  統計調査を通常と異なる方法等で実施した場合の統計データの欠落に対する計量経済学の手法
により、被災地差ダミーを除去して、震災による歪みを除去した外来延患者数の増加修正値差分は、岩手県で501千人、宮城県で894千人、福島県で755千人と推計された。
結論
 平成24年度の研究によって得られた主要な結論は以下の3つである。
1) 被災地の実態と公式厚生統計の乖離
2) 政策判断の為の統計補正作業の必要性
) 更なる補完的情報収集の必要性
 平成25年度
(1) 被災地の健康状況の統計的把握:女性と年配者でリスクが高くなる
(2) 被災地の実態と公式厚生統計の乖離:医療福祉サービスの需給モデルに基づき、供給制約を加味した解釈が必要
(3) 政策判断の為の統計補正作業の必要性

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201302004C

収支報告書

文献番号
201302004Z