文献情報
文献番号
201302001A
報告書区分
総括
研究課題名
医師の地域別・診療科別分布及びキャリアパスに関する研究
課題番号
H24-統計-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(東京大学 大学院医学系研究科 医療経営政策講座)
研究分担者(所属機関)
- 井出 博生(千葉大学医学部付属病院 千葉県寄附研究部門 高齢社会医療政策研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、医師・歯科医師・薬剤師調査、医療施設静態調査、病院報告、患者調査等の既存統計データを用いて医師等の診療科別・地域別分布やキャリアパスについて詳細な検討を行うことで、医療資源分布の偏在対策に資する研究を実施することにある。
2年計画の第2年次にあたる平成25 年度は、医師の地域動態に関する研究、都道府県における医師の地域別・診療科別分布及びキャリアパスに関する研究、医師以外の医療スタッフの分布と配置の効果に関する研究を行った。
2年計画の第2年次にあたる平成25 年度は、医師の地域動態に関する研究、都道府県における医師の地域別・診療科別分布及びキャリアパスに関する研究、医師以外の医療スタッフの分布と配置の効果に関する研究を行った。
研究方法
医師・歯科医師・薬剤師調査の調査データから、医籍登録年における従事先都道府県を起点とし、その後の勤務地を集計することで、医師のキャリアパスと地域動態について把握した。また、ベイズ法を用いて医師数の将来推計を行うとともに、患者調査および医療施設調査を用いて受療行動について時間距離分析を行った。医療施設静態調査及び病院報告従事者票のデータを用い、臨床工学技士に着目して医療機器安全管理体制を分析した。
結果と考察
医師の地域動態に関する研究では、前年度の本研究で全診療科の医師について用いた方法と同様の方法を用いて、2008 年から2010 年の都道府県単位の医師の動態を小児科および産婦人科に焦点を当てて解析した。その結果、両診療科とも近隣都道府県との医師の動態が中心となっているものの、必ずしも近接性だけでは説明できない医師の動態が観察された。また、医師はキャリアの初期の段階では、比較的人口の多い地域を中心に分布をしているが、キャリアを重ねる中でより多くの地域に分布してゆくこと、近隣都道府県との動態が中心でありながらも、近接性だけでは説明できない医師の動態があることは、各医師の個別の状況もあるももの大学や病院グループ間での人的交流といった医師配分メカニズムが背景にある可能性を示唆するものであると考えられた。ただ近隣都道府県との関係は、診療科別にも異なっており更なる検討が必要な分野である。また、近隣都道府県をさらに越えた広域の医師の動態についても考慮する必要があると考えられた。これらの医師の動態は地域医療計画の策定にあたって特に留意が必要であるとともに、今後全国の医師分配機能をよりよく機能させるためには、都道府県を越えた視点も必要であることが示唆される所見と考えられた。
都道府県における医師の地域別・診療科別分布及びキャリアパスに関する研究からは、ベイズ法によって得られた首都圏全体の医師増減数の推定値は、ギブス法およびメトロポリス法でより確からしい情報を得ることが可能となった。また、時間距離に関する分析からは、入院先の病院は概ね30 分圏内であるが、高度な医療を受ける場合には時間距離は長くなるという傾向を明らかとした。患者調査、医療施設調査はそれぞれ独立した調査であるが、医療施設番号を通じて問題なくデータのリンケージが可能であり、両者を合わせた分析は全国で可能であることから今後一層の発展が期待できる分野である。同様に医療機関番号を用いたデータがより広範囲に利用できれば、それらのデータともリンケージし、分析することが可能であり、さらには横断的なリンケージだけではなく、縦断的なリンケージを行うことで、既存の統計データを利活用することでデータに基づく政策立案の大きな可能性が示されたものと考えられる。
医師以外の医療スタッフの分布と配置の効果に関する研究からは、特定機能病院に承認されている多くの施設では臨床工学技士の増員がされており、それらの施設では臨床工学技士が医療機器安全管理責任者についている傾向にあることを明らかとした。これは、医療の高度化に伴い複雑な医療機器を安全に使用するために臨床工学技士が採用されているものと推察された。また、医療機器安全管理責任者の職種を比較すると、臨床工学技士が増員されている施設では、臨床工学技士がその任についている傾向にあることがわかった。臨床工学技士が増員されている施設では、臨床工学技士への専門的な役割分担が進み、医療機器の安全管理の責任者として期待が高まっている結果であることが推察された。
都道府県における医師の地域別・診療科別分布及びキャリアパスに関する研究からは、ベイズ法によって得られた首都圏全体の医師増減数の推定値は、ギブス法およびメトロポリス法でより確からしい情報を得ることが可能となった。また、時間距離に関する分析からは、入院先の病院は概ね30 分圏内であるが、高度な医療を受ける場合には時間距離は長くなるという傾向を明らかとした。患者調査、医療施設調査はそれぞれ独立した調査であるが、医療施設番号を通じて問題なくデータのリンケージが可能であり、両者を合わせた分析は全国で可能であることから今後一層の発展が期待できる分野である。同様に医療機関番号を用いたデータがより広範囲に利用できれば、それらのデータともリンケージし、分析することが可能であり、さらには横断的なリンケージだけではなく、縦断的なリンケージを行うことで、既存の統計データを利活用することでデータに基づく政策立案の大きな可能性が示されたものと考えられる。
医師以外の医療スタッフの分布と配置の効果に関する研究からは、特定機能病院に承認されている多くの施設では臨床工学技士の増員がされており、それらの施設では臨床工学技士が医療機器安全管理責任者についている傾向にあることを明らかとした。これは、医療の高度化に伴い複雑な医療機器を安全に使用するために臨床工学技士が採用されているものと推察された。また、医療機器安全管理責任者の職種を比較すると、臨床工学技士が増員されている施設では、臨床工学技士がその任についている傾向にあることがわかった。臨床工学技士が増員されている施設では、臨床工学技士への専門的な役割分担が進み、医療機器の安全管理の責任者として期待が高まっている結果であることが推察された。
結論
医師需給を考える際には、都道府県内における医師需給・配置とともに、近隣の都道府県を含めた医師の動向を考慮に入れた検討が必要であること、各都道府県が今後地域医療ビジョンの策定の際に、時間距離分析によって実際の受療行動を明らかにすることは有益であること、医療関連職種への専門的な役割分担が進むことで安全管理体制も大きく変わってきていること等が本研究により明らかになったものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-02
更新日
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