文献情報
文献番号
201301020A
報告書区分
総括
研究課題名
疾病及び生活機能に基づく保健・医療・介護・福祉等制度の包括的評価手法の開発を目的とした研究
課題番号
H25-政策-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 中川原譲二(国立循環器病研究センター 脳卒中統合イメージングセンター)
- 園田茂(藤田保健衛生大学医学部)
- 東野定律(静岡県立大学経営情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、日々、専門化・複雑化している保健、医療、介護、福祉分野等に対して、個々の分野で共通して用いることが可能とされているWHO 国際生活機能分類(以下、「ICF」という。)を用いて、他分野間で横断的な評価を可能とする手法の開発を行い、分野間における関連性を明らかにし、分野間連携の対応方法を構築するための基礎資料を提供することにある。
研究方法
(1)ICFに関する研究文献のレビューを行い、日本の臨床現場に適用可能な評価方法を確立するために文献レビューの結果、すべてのICFコードを網羅的に検討するのではなく、より利便性が高く、実用性があると示されたICF core setのgeneric setを取り上げた。これらのset及び、このマニュアルを日本語に翻訳し、調査時に提供した。(2)3病院の協力により、入院患者を対象にICF コードを用いた試行評価、並びに既存アセスメントツールによる評価結果データの記録・収集及び評価基準の共通の理解を図るために説明会を実施した。(3)説明会の後、ICFコードの評価に際しての調査をした結果を収集し、そのデータの信頼性、妥当性等の評価を統計的に分析した。
(4)患者1名に対し、5職種の評価者が互いに相談せずに採点(職種別票を記入)した。(5)同時に、当該患者のアセスメント評価データ(FIM、看護必要度等)を収集した。(6)終了時には、評価者アンケート及びヒアリング調査を実施し、ICF活用上の課題・問題点等を把握した。(7)これらの結果について、臨床現場に精通する医師、学識者からなる委員会で今回の調査結果についての分析、及び検討を行った。
(4)患者1名に対し、5職種の評価者が互いに相談せずに採点(職種別票を記入)した。(5)同時に、当該患者のアセスメント評価データ(FIM、看護必要度等)を収集した。(6)終了時には、評価者アンケート及びヒアリング調査を実施し、ICF活用上の課題・問題点等を把握した。(7)これらの結果について、臨床現場に精通する医師、学識者からなる委員会で今回の調査結果についての分析、及び検討を行った。
結果と考察
ICFに関する研究文献のレビューの結果からは、ICFベースの評価ツールの開発は国際的にも、いまだに課題とされており、ICFを基盤とする研究が必要とされている状況にあることがわかった。このため、現状のままでの利用には、日本だけでなく、各国の研究者からの懸念や、その遂行について多くの困難が表明されており、エビデンスを蓄積したうえでの慎重な対応が必要とされていることがわかった。ICFコーディング試行評価の結果から、「報酬を伴う仕事_実行状況」では非該当が180名(81.1%)ともっとも多く、「報酬を伴う仕事_能力」でも非該当が169名(77.2%)とほとんどが「非該当」であった。また、4職種の評価者による評点パターンの平均は、評価11項目で1.5~2.1通り、平均は1.9通りで、その一致率は19.3%~63.2%とばらつきがあり、その平均は31.4%であった。ICF core setのgeneric setにおける多職種間においての検者間の信頼性を分析した結果の一致係数κは0.10~0.56と低かった。一方、他アセスメントツールとの関連性については、ICFの障害の有無別のFIMや看護必要度B得点には、「d850報酬を伴う仕事」以外は、すべて関連性が示され、概ね、代替可能との結果が示された。一入院の分析からは、FIMや看護必要度得点と同様に、ICFの評価項目の「d850報酬を伴う仕事」以外は、退院時に有意に得点が変化していることを検出できる尺度となっていた。
結論
今回の研究結果からは、generic Setから「d850報酬を伴う仕事能力」を除外した6項目(評点は9項目)を「日本版ICFコアセット」の雛型として提案することとした。ICFは、WHOにより定められた世界標準(グローバルスタンダード)であり、わが国が国際的場面での発言力や情報発信力を高めるためには、ICFの概念・ルールに準拠する基礎研究や各種統計の整備・充実を積極推進する意義は大きいと思われる。しかし、現行のままで日本国内での実用化を進めることは、困難であり、これの臨床場面での利用に際しては、ICFの評価に係る研修制度の導入等、慎重な工程を計画する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2014-08-27
更新日
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