文献情報
文献番号
201301005A
報告書区分
総括
研究課題名
医療における情報活用を行う上での適切な国際疾病分類に関する研究
課題番号
H23-政策-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 菅野健太郎(自治医科大学 消化器内科)
- 落合 和徳(東京慈恵会医科大学付属病院 産婦人科)
- 中谷 純(東北大学大学院 医学系研究科)
- 大江 和彦(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
- 小川 俊夫(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ICD(International Classification of Disease、国際疾病分類)は、死亡統計のみならず患者調査、DPCなど医療保険制度、診療情報管理など、広く医療情報全般において活用される重要な分類体系である。現行のICDは1989年に策定されたICD-10で、その導入から20年近くが経ち、医療技術やIT技術の進歩等を踏まえ、現状に即した新たなICD改訂が望まれていた。本研究は昨年度に引き続き、ICDの改訂によるわが国への影響が医療全般に関わることを念頭におき、医療における情報活用を行う上での適切な疾病分類をとりまとめることを目的とする。また、ICD-11がわが国にとってより適切なものとなるよう、わが国としてWHOの検討の場で行うべき対応に資する基礎資料を作成することも目的としている。
研究方法
本研究は、専門的な見地から既存のICD分類に関する問題点について把握を行い、現存するエビデンスを収集したうえで体系的なレビューを実施し、それを元に分類の改善すべき点について提案を作成するというプロセスで展開した。そのため、第一線の専門家が研究に参画して最新の知見を収集し、必要に応じて調査や分析を行えるように会議体を組織した。同時に提案に関連するWHOの動向についても把握すると共に、積極的な対外情報発信を行った。本研究においては、医療における情報活用を行う上での適切な疾病分類の構築を、問題点の抽出、課題の整理、改善案の提示、WHOの動向の把握の4つのサイクルにより実施した。本年度は、内科系領域や腫瘍系領域におけるICD改訂に際しての問題点や課題を洗い出すと共に、研究から判断された必要性に応じ、検討内容の充実を目指すものとした。さらに、昨年度本研究班が中心となって取りまとめたICD-11のαドラフト(構造変更の提案)の重複領域の調整の支援や、βフェーズで実施される予定のフィールドトライアルとレビューについて情報収集を実施した。
結果と考察
本研究において、昨年度と同様に国内内科TAG検討会、国内腫瘍TAG検討会を組織して、ICDの構造に関する意見の集約を実施した。特に内科分野のICD-11の構造に関しては、昨年度提案した構造変更案を用いて重複領域の話し合い等を行い、またフィールドトライアル、レビュー等のβフェーズでの作業について、国際会議への出席やWHO文書の収集、また構造変更案の最終版等を収集して取りまとめと分析を実施し、これらの分析結果をWHO主催の会議や学会などで発信した。本研究の一環として、改訂に向けたスケジュール管理を実施し、WHOやWHO内科TAGメンバー、内科TAGマネージングエディタとの情報交換を行うことで、WHO内科TAGの作業進捗のまさに中心として機能したといえよう。このように国内の意見集約を行い、各種国際会議へ出席して議論をリードしたことや、スケジュール管理支援を行ってきたことは、今後のICD改訂や日本のプレゼンス向上に関して重要な意義を持つものである。
結論
ICD改訂作業において、本研究班は内科および腫瘍TAG検討会においてわが国の関係者間での意見集約を実施した上で、内科領域の構造変更の完成に大きく寄与したと考えられる。また、ICD改訂に関わる情報収集と発信、さらに改訂作業の進捗管理支援を行ってきたことにより、本研究班はICD改訂作業全般に大きく貢献したと考えられる。さらに、本研究の成果を積極的に対外発信したことなどにより、ICD改訂作業における日本のプレゼンス向上に関しても概ね目標を達成できたといえる。今後は、レビューの実施など新たな作業が始まると同時に、ICD-11の活用についてより具体的な議論が必要になると考えられる。今後、さらなる議論および緻密なスケジュール管理が必要である。本研究の成果より、特に疾病に関する医療における情報の質の向上を実現し、厚生統計、医療保険制度、EBMに基づく各種施策等の質の向上が図られ、最終的には、医療の質の向上に貢献する研究であるといえる。
公開日・更新日
公開日
2014-08-27
更新日
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