特定保健指導の階層化基準外の者の保健指導の有効性に関する研究

文献情報

文献番号
201301001A
報告書区分
総括
研究課題名
特定保健指導の階層化基準外の者の保健指導の有効性に関する研究
課題番号
H23-政策-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡山 明(公益財団法人結核予防会第一健康相談所 生活習慣病予防研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門・公衆衛生学)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座・疫学、公衆衛生学)
  • 坂田 清美(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座・疫学、公衆衛生学)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部・衛生学公衆衛生、疫学・公衆衛生学)
  • 日高 秀樹(滋賀医科大学医学部糖尿病腎臓神経内科)
  • 西村 邦宏(国立循環器病研究センター研究開発基盤センター予防医学・疫学情報部)
  • 中村 幸志(金沢医科大学公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定健診・保健指導制度では、腹囲を基準として未治療者に限り指導対象者の選定や方法を定めている。しかしリスクが高い非肥満のハイリスク者や、治療中の者の占める割合も高いことが報告されているが、保健指導がどのくらい効果があるかは不十分である。
本研究では特定健診・保健指導制度の向上の為に必要な疫学的エビデンスを2つの方法で明らかにする。第1は保健指導の方法と効果に関して、この研究班の元となった研究班で収集した情報、すでに研究が終了した研究、及び本研究班等ですでに行った事業結果を整理した。第2は保険者と共同で前向きに実施するプログラムで、階層化で「積極的支援又は動機づけ支援」の条件を満たすが治療中の者、及び階層化条件を満たさない治療中の者について、主治医の協力を得て保険者と共同で統一プロトコールを実施する。割り付けは保険者内仮想対照を設定して実施する。支援群には研究班の作成したプロトコールに沿って支援を実施し(平成23年度)、対照群は前向きに設定し健診結果及び医療費を定期的に収集する体制を整えた。現在研究協力施設11カ所を対象に研究を実施し、平成25年1月現在で全ての施設で12ヶ月目までの保健指導を完了した。12ヶ月までの中間解析では対象者の生活習慣及び検査結果が改善していることが明らかとなり、全ての研究が完了するのは平成27年度となる。
研究方法
重点的な6ヶ月の保健指導は特定保健指導と基本的に同じプロトコールで実施する。生活習慣及び食習慣のアセスメントに基づき、2ヶ月に1回程度の保健指導を6ヶ月間実施する。その後6ヶ月に1回面接指導を継続、希望者にはマイレージプログラムとして実践状況を記録提出することでインセンティブを与える仕組を導入し更に2年間継続支援を行い、効果を対照と比較する。長期の指導効果をみる為6ヶ月に1度身体計測・尿検査を実施する。
研修:研究班で開発した指導のプロトコールに基づいた指導が確実に実施される為に、研究開始前に3日間の保健指導のトレーニングを実施する。指導内容の適切性を確認する為、指導者から毎回指導記録を送付させ指導経過をモニタリングする。
最終的な効果評価を行う為の対照群の設定は、保健指導期間終了後(平成26年度末)に収集した保健事業と医療費データを用いて、同一施設の被保険者より傾向性スコアを用いて仮想的に設定する。
結果と考察
初年度は募集にかかる研修会を3回実施し、総参加施設は32ヶ所となり、更に研修終了後個別の募集を行う等した。その結果13保険者と最終的な交渉を行ったが、2保険者では関連組織の協力を受けることができない為辞退することとなった。最終的には被用者保険2施設、国保保険者9施設計11施設で研究を開始した。第2年度は指導を開始すると共に、6ヶ月の指導が完了した保険者では継続支援を開始した。研究当初の参加者は116名であり、6ヶ月間の支援が可能であったのは115名で殆ど脱落はなかった。長期支援ではマイレージプログラムを利用したのは103名であった。並行して医療費データの収集を行った。第3年度は参加者の指導経過をまとめ支援群内での効果評価を行った。
高血圧治療中の者に対する保健指導を1年間行ったところ、体重と腹囲では特定保健指導と同等の効果が得られ、SBP、DBPともに有意に低下した。保健指導の継続率は良好であり計画の重点支援6ヶ月に加え2年間の支援継続は可能と考えられた。
本年度は研究計画の3年目であり、助成期間の最終年度となるが研究は継続中であり順調に推移している。現在最も進んだ施設では18ヶ月目の支援が完了した。30ヶ月目の支援が完了するのは平成26年度末となる。平成27年10月に収集する特定健診データ及び特定保健指導データ、医療費データを用いて対照群を設定しての最終的な解析を予定している。
結論
特定健診の階層化基準外の者に対する保健指導の有効性を医療費で評価するため、対象疾患を治療中の高血圧者とし、11保険者の協力を得て保健指導の介入研究を実施した。研究の進度はほぼ予定通りとなっている。医療保険者はメタボリックシンドロームを中心とした循環器疾患のハイリスク者に対する支援を行い医療費適正化に結びつけることが義務づけられている。本研究により高血圧などの治療中のものに対する保健指導を実際に保険者が実施可能であり、効果が期待できることが示された。今後の保健事業の推進の基礎的資料として活用可能と考えられる。
また既存データの解析により重症高血圧の受療勧奨の意義が医療費分析から示されたことも今後の保険者の取り組みの理論的な基礎を与えたと考えられる。20歳からの10kg以上の体重増加の有無が非肥満領域で循環器疾患リスクの有病率を高める重要な指標であることから特定健診に於ける保健指導の対象者選択の重要なツールとして使用できる。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201301001B
報告書区分
総合
研究課題名
特定保健指導の階層化基準外の者の保健指導の有効性に関する研究
課題番号
H23-政策-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡山 明(公益財団法人結核予防会第一健康相談所 生活習慣病予防研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門・公衆衛生学)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座・疫学、公衆衛生学)
  • 坂田 清美(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座・疫学、公衆衛生学)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部・衛生学公衆衛生学、疫学・公衆衛生学)
  • 日高 秀樹(滋賀医科大学医学部糖尿病腎臓神経内科)
  • 西村 邦宏(国立循環器病研究センター研究開発基盤センター予防医学・疫学情報部)
  • 中村 幸志(金沢医科大学公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定健診・保健指導制度では、腹囲を基準として未治療者に限り指導対象者の選定や方法を定めている。しかしリスクが高い非肥満のハイリスク者や、治療中の者の占める割合も高いことが報告されているが、保健指導がどのくらい効果があるかは不十分である。
本研究では特定健診・保健指導制度の向上の為に必要な疫学的エビデンスを2つの方法で明らかにする。第1は保健指導の方法と効果に関して、この研究班の元となった研究班で収集した情報、すでに研究が終了した研究、及び本研究班等ですでに行った事業結果を整理した。第2は保険者と共同で前向きに実施するプログラムで、階層化で「積極的支援又は動機づけ支援」の条件を満たすが治療中の者、及び階層化条件を満たさない治療中の者について、主治医の協力を得て保険者と共同で統一プロトコールを実施する。割り付けは保険者内仮想対照を設定して実施する。支援群には研究班の作成したプロトコールに沿って支援を実施し(平成23年度)、対照群は前向きに設定し健診結果及び医療費を定期的に収集する体制を整えた。現在研究協力施設11カ所を対象に研究を実施し、平成25年1月現在で全ての施設で12ヶ月目までの保健指導を完了した。12ヶ月までの中間解析では対象者の生活習慣及び検査結果が改善していることが明らかとなり、全ての研究が完了するのは平成27年度となる。
研究方法
重点的な6ヶ月の保健指導は特定保健指導と基本的に同じプロトコールで実施する。生活習慣及び食習慣のアセスメントに基づき、2ヶ月に1回程度の保健指導を6ヶ月間実施する。その後6ヶ月に1回面接指導を継続、希望者にはマイレージプログラムとして実践状況を記録提出することでインセンティブを与える仕組を導入し更に2年間継続支援を行い、効果を対照と比較する。長期の指導効果をみる為6ヶ月に1度身体計測・尿検査を実施する。
研修:研究班で開発した指導のプロトコールに基づいた指導が確実に実施される為に、研究開始前に3日間の保健指導のトレーニングを実施する。指導内容の適切性を確認する為、指導者から毎回指導記録を送付させ指導経過をモニタリングする。
最終的な効果評価を行う為の対照群の設定は、保健指導期間終了後(平成26年度末)に収集した保健事業と医療費データを用いて、同一施設の被保険者より傾向性スコアを用いて仮想的に設定する。
結果と考察
初年度は募集にかかる研修会を3回実施し、総参加施設は32ヶ所となり、更に研修終了後個別の募集を行う等した。その結果13保険者と最終的な交渉を行ったが、2保険者では関連組織の協力を受けることができない為辞退することとなった。最終的には被用者保険2施設、国保保険者9施設計11施設で研究を開始した。第2年度は指導を開始すると共に、6ヶ月の指導が完了した保険者では継続支援を開始した。研究当初の参加者は116名であり、6ヶ月間の支援が可能であったのは115名で殆ど脱落はなかった。長期支援ではマイレージプログラムを利用したのは103名であった。並行して医療費データの収集を行った。第3年度は参加者の指導経過をまとめ支援群内での効果評価を行った。
高血圧治療中の者に対する保健指導を1年間行ったところ、体重と腹囲では特定保健指導と同等の効果が得られ、SBP、DBPともに有意に低下した。保健指導の継続率は良好であり計画の重点支援6ヶ月に加え2年間の支援継続は可能と考えられた。
本年度は研究計画の3年目であり、助成期間の最終年度となるが研究は継続中であり順調に推移している。現在最も進んだ施設では18ヶ月目の支援が完了した。30ヶ月目の支援が完了するのは平成26年度末となる。平成27年10月に収集する特定健診データ及び特定保健指導データ、医療費データを用いて対照群を設定しての最終的な解析を予定している。
結論
特定健診の階層化基準外の者に対する保健指導の有効性を医療費で評価するため、対象疾患を治療中の高血圧者とし、11保険者の協力を得て保健指導の介入研究を実施した。研究の進度はほぼ予定通りとなっている。医療保険者はメタボリックシンドロームを中心とした循環器疾患のハイリスク者に対する支援を行い医療費適正化に結びつけることが義務づけられている。本研究により高血圧などの治療中のものに対する保健指導を実際に保険者が実施可能であり、効果が期待できることが示された。今後の保健事業の推進の基礎的資料として活用可能と考えられる。
また既存データの解析により重症高血圧の受療勧奨の意義が医療費分析から示されたことも今後の保険者の取り組みの理論的な基礎を与えたと考えられる。20歳からの10kg以上の体重増加の有無が非肥満領域で循環器疾患リスクの有病率を高める重要な指標であることから特定健診に於ける保健指導の対象者選択の重要なツールとして使用できる。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201301001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班では治療中のものに医療保険者が医療機関外で保健指導を実施する仕組みを構築した。さらに長期支援の効果を実証・評価するために二つの取り組みを行った。一つはマイレージシステムで対象者が6ヶ月の集中支援後も実践に取り組む方法を開発した。また傾向性スコアを用いて類似の特性を持つ対照群を設定する方法を学術論文に公表した。さらに高血圧未治療者は翌年の高額医療の有意なリスクであることを学術論文に公表した。
臨床的観点からの成果
治療中のものであってもコントロールが不良であれば、十分な治療効果が得られないことは広く知られている。本研究班ではこうした対象者に、特定保健指導の方法を応用して保健指導を実施している。現在大きな指導効果をあげており、研究終了時には普及が課題となる。特定保健指導制度に伴い、全国各地域に保健指導を実施できる人材が育成されており、これらの人的資源を活用することで、我々の研究成果を広く全国に普及できる可能性がある。
ガイドライン等の開発
現在のところガイドラインには取り込まれていない。一方日本高血圧学会では循環器病等療養指導士制度を立ち上げた。臨床の場でも保健指導を積極的に実施することの意義が普及してきたためと考えられる。主任研究者の岡山はその構成員として発足に寄与した。今後認定制度、研修会の実施など様々な事業が予定されており、これらの場で我々の研究成果を活用可能な状況である。
その他行政的観点からの成果
特定健診保健指導制度により保険者の保健事業が開始された。医療保険者にとって、健康な人ばかりでなく現在医療費がかかっている人が適正に管理されることが大きな目標である。しかし、従来は医療保険者が医療機関で治療している場合に、どのような関わりをすべきか明かではなかった。本研究班では医療保険者と医療機関の役割分担を整理し、円滑に保健指導が可能な仕組みを構築した。これは今後の保健事業の展開のために重要な一歩といえる。
その他のインパクト
本研究班の研究成果公表の一環として、医療費と健診成績との関連を継続的に報告している。20歳から10kg以上の肥満の有無が特に非肥満領域で検査所見の悪化を来す要因となっていることを学会で報告したところ、朝日新聞に取り上げられ、健康づくりのポイントとして紹介された(朝日新聞 4月26日版)。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
2018-08-02

収支報告書

文献番号
201301001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
9,000,405円
差引額 [(1)-(2)]
-405円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,616,884円
人件費・謝金 3,067,643円
旅費 1,364,730円
その他 1,951,148円
間接経費 1,000,000円
合計 9,000,405円

備考

備考
銀行預金利息のため

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-