文献情報
文献番号
201239018A
報告書区分
総括
研究課題名
固形がんに対する抗CCR4抗体療法第Ia/Ib相医師主導治験
課題番号
H24-実用化(がん)-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
上田 龍三(愛知医科大学 医学部腫瘍免疫寄附講座)
研究分担者(所属機関)
- 中山 睿一(川崎医療福祉大学 医療福祉学部)
- 土井 俊彦(国立がん研究センター 東病院消化管内科)
- 飯田 真介(名古屋市立大学大学院医学研究科 腫瘍・免疫内科学)
- 土岐 祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座・消化器外科学)
- 岡 三喜男(川崎医科大学 呼吸器内科学)
- 垣見 和宏(東京大学医学部附属病 院免疫細胞治療学講座)
- 舩越 建(慶應義塾大学医学部 皮膚科学)
- 石田 高司(名古屋市立大学大学院医学研究科 腫瘍・免疫内科学)
- 西川 博嘉(大阪大学・免疫学フロンティア研究センター 実験免疫学)
- 鵜殿 平一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 免疫学分野)
- 佐藤 永一(東京医科大学 臨床病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
188,974,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん免疫治療法の研究開発はこれまで、腫瘍免疫の活性化を中心として、進められ、主に、ワクチン療法の臨床試験が世界各国で実施されたが、思わしい結果は得られていない。腫瘍局所で強力な免疫抑制機構が働いていることがその原因と考えられるようになり、最近では、免疫抑制機構の制御に研究の中心が移ってきている。免疫チェックポイント分子に対するモノクローナル抗体は、いずれも単剤で、進行がんに対して劇的な治療効果が認められ、益々、この方向でのがん治療研究の重要性が認識されている。制御性T細胞(Treg)は、免疫チェックポイントと共に重要な免疫制御の一翼を担うことが知られている。Tregは腫瘍局所に多数浸潤していることが、様々ながん種で報告され、腫瘍免疫の抑制に関わっていることが強く示唆されていることなどから、Tregの制御は、免疫チェックポイントの制御と並んでがん治療研究の中心となりつつある。CCR4は、Treg上に選択的に発現するケモカインレセプターで、抗CCR4モノクローナル抗体、Mogamulizumabは、正常Tregを除去することが明らかにされており、Treg制御によるがん免疫治療薬として関心が高まっている。以上の経緯を踏まえ、進行再発固形がん患者を対象に、Mogamulizumabの医師主導第Ia/Ib相治験を実施する。
研究方法
1)治験計画書の作成
治験調整委員会を中心に、治験計画案を作成、PMDA事前面談、対面助言を経て、治験計画内容を確定する。
2)試験評価項目の標準化
①Treg測定 フローサイトメトリーによるナイーブ型Tregとエフェクター型Tregの測定
②液性免疫応答 NY-ESO-1及びXAGE1bに対する自己抗体ELISA ③免疫染色 固形がん組織でのCCR4および腫瘍精巣抗原(NY-ESO-1, XAGE1b)発現検出
3)第Ia相治験 NY-ESO-1あるいはXAGE1b抗原陽性かつCCR4陰性で、標準治療抵抗性の進行・再発固形がんのうち、肺癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、悪性黒色腫患者を対象に、Mogamulizumabの投与量増量試験を行う。Mogamulizumabを毎週1回計8回投与し、安全性及び薬物動態の検討から、忍容性の認められる用量を決定する。0.1㎎/kg投与群3例(最大6例)から開始し、0.5㎎/kg投与群3例(最大6例)、1.0mg/kg投与群3例(最大6例)に移行する。群間移行は、用量制限毒性の評価対象である第12週までのデータにて可能とする。
4)付随研究
治験と並行して、治療と免疫動態との関連について明らかにするため、特異免疫、Tregの詳細な解析を行う目的で付随研究を行う。
治験調整委員会を中心に、治験計画案を作成、PMDA事前面談、対面助言を経て、治験計画内容を確定する。
2)試験評価項目の標準化
①Treg測定 フローサイトメトリーによるナイーブ型Tregとエフェクター型Tregの測定
②液性免疫応答 NY-ESO-1及びXAGE1bに対する自己抗体ELISA ③免疫染色 固形がん組織でのCCR4および腫瘍精巣抗原(NY-ESO-1, XAGE1b)発現検出
3)第Ia相治験 NY-ESO-1あるいはXAGE1b抗原陽性かつCCR4陰性で、標準治療抵抗性の進行・再発固形がんのうち、肺癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、悪性黒色腫患者を対象に、Mogamulizumabの投与量増量試験を行う。Mogamulizumabを毎週1回計8回投与し、安全性及び薬物動態の検討から、忍容性の認められる用量を決定する。0.1㎎/kg投与群3例(最大6例)から開始し、0.5㎎/kg投与群3例(最大6例)、1.0mg/kg投与群3例(最大6例)に移行する。群間移行は、用量制限毒性の評価対象である第12週までのデータにて可能とする。
4)付随研究
治験と並行して、治療と免疫動態との関連について明らかにするため、特異免疫、Tregの詳細な解析を行う目的で付随研究を行う。
結果と考察
今期末までに、3症例について投薬(0.1mg/kg)を開始し、これまでに8回の投与を終了している。いずれも、有害事象を認めることなく、末梢血Tregの減少が確認されている。Tregはナイーブ型とエフェクター型に分類されることが報告されている。これまでの症例では、エフェクター型Tregの選択的な著減がみられている。これに比べて、ナイーブ型Tregの減少はほとんどみられていない。大阪大学西川らは、エフェクター型TregにCCR4が高発現することを見出している。また、愛知医大においても、エフェクター型TregにCCR4が高発現することと併せて、ナイーブ型TregにはCCR4の発現がみられないことを確認していることから、今回得られたMogamulizumab投与後のTreg測定データは妥当なものと考えられる。ナイーブ型Tregの減少がほとんどみられず、エフェクター型Tregのみを減少させることから、一時的に免疫抑制能の低下が起こっても、その回復は早いと思われ、このことが、有害事象がみられていない理由となっているのかもしれない。ただ、ATL患者では、臨床効果が出た後に、重篤な皮膚障害がみられているので、今後も慎重な観察が必要である。また、腫瘍局所でのTregの測定はまだなされていないが、腫瘍局所ではエフェクター型Tregの著しい侵潤がみられることを大阪大学 西川らが報告している。腫瘍局所においてもエフェクター型Tregの著減がみられるかどうか、今後の検討が待たれる。
結論
1) 治験計画書を作成、各治験施設IRBにおいて、治験承認を得た。
2) 第Ia相治験を開始し、今期末までに、3例について投薬を開始した。
3) 投薬(0.1mg/kg)した3例については8回投薬後まで有害事象はみられなかった
4) 投薬(0.1mg/kg)した3例については投薬後、エフェクターTregが著減した。ナイーブ型Tregの減少はほとんどみられなかった。
5) 試験評価項目の標準化を完了した。
2) 第Ia相治験を開始し、今期末までに、3例について投薬を開始した。
3) 投薬(0.1mg/kg)した3例については8回投薬後まで有害事象はみられなかった
4) 投薬(0.1mg/kg)した3例については投薬後、エフェクターTregが著減した。ナイーブ型Tregの減少はほとんどみられなかった。
5) 試験評価項目の標準化を完了した。
公開日・更新日
公開日
2013-06-03
更新日
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