文献情報
文献番号
201238015A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代シークエンサーを用いた弧発性の神経難病の発症機構の解明に関する研究
課題番号
H23-実用化(難病)-一般-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
戸田 達史(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 祖父江 元(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 服部 信孝(順天堂大学 医学部)
- 青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
- 中島 健二(鳥取大学 医学部)
- 西澤 正豊(新潟大学脳研究所)
- 村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター・東京都健康長寿医療センター研究所)
- 望月 秀樹(大阪大学医学系研究科)
- 長谷川 一子(国立病院機構相模原病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(難病関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
76,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は「大部分は孤発性だが一部家族性・メンデル遺伝をとるパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)といった代表的な神経難病」を対象にする。パーキンソン病、ALS、PSP・CBDを含めたタウオパチー遺伝子を発見すべく、拠点研究班との連携のもとで、次世代シークエンサーを世界に先駆け孤発性神経難病に応用する。
研究方法
1)次世代シークエンサーによる孤発性パーキンソン病のRare variant リスクの探索 2)次世代シークエンサーを用いた遺伝性パーキンソン病の新規原因遺伝子探索 3)ALS疾患関連遺伝子の探索 4)PSP・CBDを含めたタウオパチー 5)タウオパチーのゲノム解析の意義とその目的を達成するための効果的な収集方法について
結果と考察
パーキンソン病の、エクソンに存在するRareながら強いリスク遺伝子を発見するため、パーキンソン病、とくに患者の大多数を占める孤発性発症の患者ゲノムの大規模全エクソン塩基配列解読をおこなった。400例のパーキンソン病患者ゲノムから、全エクソン(エクソーム)を抽出、HiSeq2000シークエンサーで超高速・並列シークエンスをおこなった。BWAソフトウェアで参照配列にマップし、GATKソフトウェアで、参照配列とことなるSNV (single nucleotide variant)を検出した。400検体のエクソームデータの平均被覆は146.6xであり、全エクソン配列の98.4%のエリアが10x以上で被覆された。本データを非患者対照群と比較し、全エクソン関連解析をおこない、孤発性パーキンソン病の強いRare variantリスクを発見する。本年度は対象家系3家系6例について、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を実施し、全エクソン領域の塩基配列データを得た。その結果、4家系から合計24種の候補遺伝子変異を見出した。今後見出された候補遺伝子変異について検証し原因遺伝子単離を行う。またパーキンソン病の原因分子であるα-synucleinの凝集機序のひとつにSNAP-25が関与していることを報告した。現在標的分子をもとに網羅的薬剤候補化合物探索を開始し、幾つかの候補薬剤を見つけ、関連薬剤に関して検討中である。
ALS患者の大規模前向きコホート(JaCALS)を立ち上げ、既に孤発性ALS患者760 例の前向き臨床情報、ゲノムDNAを蓄積した。孤発性ALSの疾患関連遺伝子の探索について、全エクソン配列解析を進め、得られたvariant情報からALS発症あるいは臨床経過に影響を及ぼす遺伝子の同定を目指す。また家族性ALS患者の遺伝子検査を行っており、収集した常染色体優性遺伝の遺伝形式が疑われる家族性ALSの104家系においてSOD1, FUS/TLS, TDP43, VCP、C9ORF72, Profilin1 (PFN1)についての解析を行った。その結果26家系にSOD1遺伝子変異、10家系にFUS/TLS遺伝子変異を認めたが、TDP43、VCP、C9ORF72, PFN1遺伝子異常は認めなかった。さらには今回、原因遺伝子が同定できなかった約65%の家系については新たな原因遺伝子の検索を進めていく。
タウオパチーとされるPSPやCBDを含むパーキンソン症候群(PS),前頭側頭葉変性症(FTLD)は,通常は孤発性であり,中年期以降に発症する緩徐進行性の変性疾患である.各疾患の診断,病態解明,治療法の開発に寄与する臨床情報の整ったPS・FTLDの,遺伝子試料収集体制の整備を行うことを目的とし,地域での遺伝子試料収集体制の整備を進めると共に,全国多施設共同研究体制の整備を進めてきた.共同研修施設の拡大,ならびに,診断基準や試料の取り扱いに関する整備を進めた。タウオパチーのゲノム解析の意義と,その目的を達成するための効果的な収集方法について検討した。PSP、CBDは、特定のタウ遺伝子領域のハプロタイプ(H1)が危険因子となる。欧米の報告では1000例以上の病理にて診断されたPSPを用いて解析が行われており、勝機は同領域の構造の相違にあると考える。欧米人と日本人のPSP,CBD患者で共通して認められる構造多型が疾患の危険因子となっている可能性が推察され、両者を詳細に比較することにより、この共通した遺伝子配列、ゲノム構造が同定できる可能性がある。今後、病理診断で確定診断のついた症例について、タウ遺伝子領域の詳細な構造解析を行うことの意義がある。
ALS患者の大規模前向きコホート(JaCALS)を立ち上げ、既に孤発性ALS患者760 例の前向き臨床情報、ゲノムDNAを蓄積した。孤発性ALSの疾患関連遺伝子の探索について、全エクソン配列解析を進め、得られたvariant情報からALS発症あるいは臨床経過に影響を及ぼす遺伝子の同定を目指す。また家族性ALS患者の遺伝子検査を行っており、収集した常染色体優性遺伝の遺伝形式が疑われる家族性ALSの104家系においてSOD1, FUS/TLS, TDP43, VCP、C9ORF72, Profilin1 (PFN1)についての解析を行った。その結果26家系にSOD1遺伝子変異、10家系にFUS/TLS遺伝子変異を認めたが、TDP43、VCP、C9ORF72, PFN1遺伝子異常は認めなかった。さらには今回、原因遺伝子が同定できなかった約65%の家系については新たな原因遺伝子の検索を進めていく。
タウオパチーとされるPSPやCBDを含むパーキンソン症候群(PS),前頭側頭葉変性症(FTLD)は,通常は孤発性であり,中年期以降に発症する緩徐進行性の変性疾患である.各疾患の診断,病態解明,治療法の開発に寄与する臨床情報の整ったPS・FTLDの,遺伝子試料収集体制の整備を行うことを目的とし,地域での遺伝子試料収集体制の整備を進めると共に,全国多施設共同研究体制の整備を進めてきた.共同研修施設の拡大,ならびに,診断基準や試料の取り扱いに関する整備を進めた。タウオパチーのゲノム解析の意義と,その目的を達成するための効果的な収集方法について検討した。PSP、CBDは、特定のタウ遺伝子領域のハプロタイプ(H1)が危険因子となる。欧米の報告では1000例以上の病理にて診断されたPSPを用いて解析が行われており、勝機は同領域の構造の相違にあると考える。欧米人と日本人のPSP,CBD患者で共通して認められる構造多型が疾患の危険因子となっている可能性が推察され、両者を詳細に比較することにより、この共通した遺伝子配列、ゲノム構造が同定できる可能性がある。今後、病理診断で確定診断のついた症例について、タウ遺伝子領域の詳細な構造解析を行うことの意義がある。
結論
本研究ではパーキンソン病、ALS、PSP・CBDを含めたタウオパチー遺伝子を発見すべく、拠点研究班との連携のもとで、次世代シークエンサーを世界に先駆け孤発性神経難病に応用した。
公開日・更新日
公開日
2013-07-08
更新日
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