シックハウス症候群の発生予防・症状軽減のための室内環境の実態調査と改善対策に関する研究

文献情報

文献番号
201237024A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の発生予防・症状軽減のための室内環境の実態調査と改善対策に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 茂久(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 大澤 元毅(国立保健医療科学院 統括研究官 )
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター )
  • 加藤 貴彦(熊本大学 医学部 公衆衛生学)
  • 内山 巌雄((財)ルイ・パストゥール医学研究センター)
  • 東 賢一(近畿大学 医学部 環境医学)
  • 中込 秀樹(千葉大学 大学院工学研究科)
  • 嵐谷 奎一(産業医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群に関する問題は、厚生労働省による濃度指針の提示、建築基準法の改正等、幅広い産官学連携の対応により屋内空気質はずいぶんと改善してきた。しかし、濃度指針に定められなかった化学物質の濃度がむしろ増加しているとの報告もあり、H24年秋より厚生労働省「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」が再開されている。
本研究では、以下の内容を検討し、快適な住環境の供給・維持管理・改善対策を提言することを目的とした。
1.各種拡散サンプラーを用いた空気質の全国調査
2.化学物質に高感受性を示す人の分布の経年変化の評価
3.化学物質に高感受性を示す集団の宿主感受性要因の検討
研究方法
1.に関連し、オゾンおよびカルボニル類、揮発性有機化合物、酸性ガス、塩基性ガス測定用の4種の拡散サンプラーを用いた空気質のモニタリング調査を実施した。調査は平成23年度(昨年度)冬季、平成24年度夏季および冬季に全国で553軒において、同一家屋において夏季と冬季、またそれぞれ室内・外各1カ所ずつ(サンプラー総計:8,848 個)で24時間の捕集を行い分析した。同時に室温変化をモニタリングした。これらの結果から、燃焼ガスによる汚染実態、および一次汚染物質に加えオゾン等により酸化され生成される二次汚染物質を含めた幅広い種類の有害化学物質の動態を含めた評価を行った。
2.に関して、Millerらが開発したQEESI調査票を用い2012年1月に7,245名の参加によるインターネット調査の結果、Miller らの設定したカットオフ値を超過し化学物質に対して感受性が高いと考えられる人の割合は4.4%であった。今年度の調査では、ここで得た7,245名のうち、化学物質に対して感受性が高いと考えられる高感受性群と、それ以外の対照群について、化学物質への感受性に対する1年間の変化、その変化に関連するリスク要因と改善要因、心理面に関する影響について調査を行った。
3.個人の感受性要因を検討するためにQEESI評価結果からカットオフ値により化学物質への曝露に対し、感受性の高い人々を “化学物質過敏性集団”と定義し、昨年度に引き続き、薬物代謝酵素の遺伝子多型について比較検討した。今年度は751名について、抗酸化酵素であるSuperoxide dismutase 2 (SOD2) と芳香族化合物の代謝酵素であるN-acetyltransferase 2 (NAT2) の代表的な遺伝子多型頻度を比較検討した。
結果と考察
1.の空気質の全国調査においては、ホルムアルデヒド濃度は冬季には指針値を超過した家屋はなかったが夏季には0.7%で超過が認められ最大値210μg/m3を示した。アセトアルデヒド濃度は冬季に14%、夏季に4.4%の家屋で超過が観察され、一部は飲酒との関連が示唆された。オゾン濃度は冬季には圧倒的に屋内において屋外より低値を示した。室温との関連から、ホルムアルデヒド、トルエン等のように、壁材や家具等一定の発生源から温度依存的に放散量の増加が観察される化学物質と、おそらく発生源が多岐にわたり温度依存性が無いアセトアルデヒド、ベンゼン、二酸化窒素などに分かれることが確認された。また室内のオゾン濃度は、換気の指標としても使用可能であることが示唆された。その他、季節変動、各種化学物質間の濃度の関係を含め測定評価結果について検討した。
2.のQEESI調査の再調査の結果、化学物質に対する感受性の変化は、高感受性群のうち、この1年間で感受性の改善がみられたものは54.6%、対照群のうち、この1年間で感受性の増悪がみられたものは7.3%であった。化学物質への感受性増悪は、臭いや刺激への曝露がリスク要因となっていること、心理面では、自己の感情の自覚や認知の困難さ、不安や否定的感情の増加が感受性の増悪でみられること、日常生活の出来事が感受性増悪に関わっていることが明らかとなった。感受性の改善では、換気や空気清浄機の使用などの物理的な方法での改善はみられなかった。また、感受性が改善されたものには、不安や感情の不安定さの要因が改善された。感受性増悪を防止する要因としては、規則正しい生活の心掛けがあげられた。
3.の個人の感受性要因としての遺伝子多型について、SOD2、NAT2の代表的な遺伝子多型頻度とQEESI得点を比較検討したが有意な差異は認めなかった。
結論
以上を踏まえ、次年度(最終年度)は、現在の室内空気質について実態を総括し、今年度までの空気質評価からリスク評価を行い、積極的な対策の必要性の有無の確認、必要性がある場合の優先化学物質の検討などを総合的に検討を進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201237024Z