文献情報
文献番号
201237017A
報告書区分
総括
研究課題名
住民からの不当暴力やクレーム等に対峙する地域保健従事者の日常活動の「質」を保証する組織的安全管理体制の構築に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
米澤 洋美(福井大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 中板 育美(日本看護協会 )
- 平野 かよ子(東北大学大学院)
- 佐野 信也(防衛医科大学校 進学課程)
- 鳩野 洋子(九州大学大学院)
- 野村 武司(獨協大学法科大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,485,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療施設内での患者および家族からの暴力への対応は、地域保健福祉従事者の対する安全確保方策の提言としては少ない。現状を放置すると住民からの過剰な威嚇や不当クレーム、モラルを欠いた問題行動(ネットを使うなど)などの暴言や暴力への対処の負の循環を招き、職員に業務の妨害、精神的負担、明らかな心身のマイナスの影響(ストレス反応)を与え、日常活動の質の担保を著しく阻害することになりかねない。
よって次の2点を目的とした。
1)地域保健福祉従事者の職務に関連する「暴力」に対する理解を活動現場において共有
2)地域保健福祉従事者のインシデントレポートを通じて実態をタイムリーに報告する仕組みの構築
よって次の2点を目的とした。
1)地域保健福祉従事者の職務に関連する「暴力」に対する理解を活動現場において共有
2)地域保健福祉従事者のインシデントレポートを通じて実態をタイムリーに報告する仕組みの構築
研究方法
1)地域保健Web版インシデントレポートの運用と事例分析
昨年度開発した『地域保健Web版インシデントレポート』を運用し、保健従事者が住民から受けている暴力や、被害の程度、それに対する対応の実態等について数量的・質的に把握した。協力の得られた10自治体の保健師等に対し事例の集積を依頼、集められた事例を分析した。
2)コンサルテーション事業(医学/法律相談)の内容集積とFAQの作成
迅速かつ的確に対応するための知識や技術を模索することを目的に、Webを活用したコンサルテーション事業(住民からの暴力被害に関する何でも相談)に寄せられた地域保健福祉従事者からの相談事例を検討し再構成した事例でFAQを作成し公開した。
昨年度開発した『地域保健Web版インシデントレポート』を運用し、保健従事者が住民から受けている暴力や、被害の程度、それに対する対応の実態等について数量的・質的に把握した。協力の得られた10自治体の保健師等に対し事例の集積を依頼、集められた事例を分析した。
2)コンサルテーション事業(医学/法律相談)の内容集積とFAQの作成
迅速かつ的確に対応するための知識や技術を模索することを目的に、Webを活用したコンサルテーション事業(住民からの暴力被害に関する何でも相談)に寄せられた地域保健福祉従事者からの相談事例を検討し再構成した事例でFAQを作成し公開した。
結果と考察
1)地域保健Web版インシデントレポートの運用と事例分析
昨年度開発した『地域保健Web版インシデントレポート』 を運用し、保健従事者が住民から受けている暴力、被害の程度、それに対する対応の実態等について数量的・質的に把握した。全部で56件の回答が得られた。被害を受けた人の属性では実務担当者の保健師が最も多く、家庭訪問先といった他者の目が届かない場所でも生じていた。暴力の種類は、理不尽/非常識な要求の繰り返しが多いが、被害が大きいと考えられる性的ハラスメントや身体的暴力等もみられた。これらの暴力に対して、警察官への通報、所内での話し合い等は一定程度実施されてはいるが、当事者職員への対応や報告が実施されていない状況も見られた。特に新規ケースの家庭訪問の場合には2人での訪問を原則とすること、所内で発生した場合には、ひとり対応にならないコンセンサスづくりの必要性がある。そのためには、報告書等で実態を明らかにすることが必須と考えられた。また、被害を受けた対象に対する支援のあり方やプログラム等が具体的に提示される必要性も示唆された。自由記載の内容分析では、不当クレーム、暴言・暴力の報告事例に対する対応策は、組織対応強化として複数対応や男性職員の同行、マニュアル作成や発生時の対応訓練や発生事例の職場内での検討と防止策の話し合いなどのより実践に即した職場環境の整備、このほか不当クレーム、暴言暴力を行った本人に対して精神疾患患者に対する日頃からのかかわりの強化や関係機関との連携等があげられた。また、性的嫌がらせの類の事例については職場内でもオープンにしづらく抱え込んでしまいやすく対応が難しいことがうかがえた。暴力の実態を組織が共有し、組織として対応する組織風土を高めるために、職場風土づくりとインシデントレポートのシステムを構築する必要性が示唆された。
2)コンサルテーション事業(医学/法律相談)の内容集積とFAQの作成
事例のテーマ、暴力が発生または発生しそうになった状況、暴力の種類、組織的対応の実態と課題、課題、に向けた解決案を分析した。その結果、家庭訪問や個別の所内相談などまさに保健師が活動の軸としている地区活動の場面で起きていた。暴力発生と保健師活動とは地続きであり、保健師が保健師の本務を効果的に遂行するためには、保健師活動の基本を学んだり、確認する機会(基礎教育場面や卒後教育/現任教育)に、暴力に関する基礎知識、対処策、防衛策の享受を加えることも考慮する必要性が示唆された。
昨年度開発した『地域保健Web版インシデントレポート』 を運用し、保健従事者が住民から受けている暴力、被害の程度、それに対する対応の実態等について数量的・質的に把握した。全部で56件の回答が得られた。被害を受けた人の属性では実務担当者の保健師が最も多く、家庭訪問先といった他者の目が届かない場所でも生じていた。暴力の種類は、理不尽/非常識な要求の繰り返しが多いが、被害が大きいと考えられる性的ハラスメントや身体的暴力等もみられた。これらの暴力に対して、警察官への通報、所内での話し合い等は一定程度実施されてはいるが、当事者職員への対応や報告が実施されていない状況も見られた。特に新規ケースの家庭訪問の場合には2人での訪問を原則とすること、所内で発生した場合には、ひとり対応にならないコンセンサスづくりの必要性がある。そのためには、報告書等で実態を明らかにすることが必須と考えられた。また、被害を受けた対象に対する支援のあり方やプログラム等が具体的に提示される必要性も示唆された。自由記載の内容分析では、不当クレーム、暴言・暴力の報告事例に対する対応策は、組織対応強化として複数対応や男性職員の同行、マニュアル作成や発生時の対応訓練や発生事例の職場内での検討と防止策の話し合いなどのより実践に即した職場環境の整備、このほか不当クレーム、暴言暴力を行った本人に対して精神疾患患者に対する日頃からのかかわりの強化や関係機関との連携等があげられた。また、性的嫌がらせの類の事例については職場内でもオープンにしづらく抱え込んでしまいやすく対応が難しいことがうかがえた。暴力の実態を組織が共有し、組織として対応する組織風土を高めるために、職場風土づくりとインシデントレポートのシステムを構築する必要性が示唆された。
2)コンサルテーション事業(医学/法律相談)の内容集積とFAQの作成
事例のテーマ、暴力が発生または発生しそうになった状況、暴力の種類、組織的対応の実態と課題、課題、に向けた解決案を分析した。その結果、家庭訪問や個別の所内相談などまさに保健師が活動の軸としている地区活動の場面で起きていた。暴力発生と保健師活動とは地続きであり、保健師が保健師の本務を効果的に遂行するためには、保健師活動の基本を学んだり、確認する機会(基礎教育場面や卒後教育/現任教育)に、暴力に関する基礎知識、対処策、防衛策の享受を加えることも考慮する必要性が示唆された。
結論
暴力被害は、保健師活動の軸である地区活動の場面で起きている。地域保健福祉従事者の質の向上に向けた知識・技術修得機会(基礎教育及び現任教育など)に暴力に関する基礎知識、対処策、防衛策の享受を加えること、組織内対応の強化、組織内・外の安全対策のための仕組みづくり(インシデント・レポートシステムの導入、警察など外部機関との日常的連携)、組織内理解を深めるためのさらなる啓発活動、被害者の二次被害防止に向けた安全文化の醸成とメンタルヘルス対策に取り掛かる必要がある。
公開日・更新日
公開日
2013-05-28
更新日
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