自然災害による広域災害時における効果的な初動期医療の確保及び改善に関する研究

文献情報

文献番号
201237009A
報告書区分
総括
研究課題名
自然災害による広域災害時における効果的な初動期医療の確保及び改善に関する研究
課題番号
H22-健危-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 憲彦(防衛省)
  • 大友 康裕(東京医科歯科大学)
  • 井上 潤一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 定光 大海(独立行政法人国立病院機構大坂医療センター)
  • 松本 尚(日本医科大学千葉北総病院)
  • 本間 正人(鳥取大学)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
  • 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 石原 哲(白鬚橋病院)
  • 高橋 毅(独立行政法人国立病院機構熊本医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
災害医療体制構築における課題に対して、対応のガイドライン、マニュアル等を提示することである。阪神淡路大震災においては、災害初動期の組織的な対応の不足から多くの「防ぎえた災害による死亡」を生んだことが問題とされた。この教訓から本邦では、災害拠点病院、広域災害救急医療情報システムが整備された。更に中越地震の教訓を得てDMATが設立した。しかし、このような災害医療体制は、その後も実災害や大規模な訓練の成果から課題をえて、様々な課題が提示されている。本研究は、これらの課題に対応するものであり、災害医療体制をより一層強化することにつながる。
研究方法
急性期災害医療を多方面から研究するとともに、それらの結果を連結させ包括的な災害医療体制に結び付けることである。研究課題は以下に示すように多方面に渡るため、研究分担者が分担して研究し、結果を全体会議で検討することにより有機的に結合させ、包括的な災害医療体制作りを試みた。
結果と考察
DMATの運用、ロジスティクスのあり方の方向性を示した。統括DMAT研修や都道府県担当者研修のカリキュラムを策定した。中央直轄型のロジスティックチームのあり方(ロジスティック要員の資格、研修方法、身分保障等)を示した。ロジステーションの具現化に向けて、NEXCO、JAXA等と連携した訓練を実施した。全ての災害拠点病院へDMATを配備するため、全国の災害拠点病院のDMAT配置状況を調査し、隊員養成研修の計画を立てた。3.11から得られた教訓から、隊員養成研修プログラム及び技能維持研修プログラムの改訂を行った。EMISにおけるDMAT活動拠点本部活動を支援する支援ツールを実用化した。DMAT活動拠点本部の体制管理、活動記録ならびにその共有、本部間の連絡メール、各DMATの隊員や資機材の登録などのEMISの機能強化が実現された。多機関でのEMIS情報の共有化推進については、EMISと内閣府中央防災情報システムとのリンクの設定を実現した。被災地において、複数のドクターヘリを安全に運航させるため、DMAT調整本部内におけるドクターヘリリエゾン+CSの有用性、運航動態管理システムである災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)の有効性を証明した。また、運航スタッフのためのDMAT研修プログラム、官民の枠を超えた災害時の航空燃料の確保策を提示した。広域医療搬送計画は全ての都道府県で整備すべきであること、SCUとドクターヘリの連携が重要であること、SCUの機能として「患者を出す機能」のみならず「患者を受ける機能」が不可欠であること、搬送基準は柔軟に適応すべきであることを明らかにした。新たな標準的なトリアージタッグのデザインの提案、およびトリアージタグ電子化に必要な事項を明確にした。外傷診療を想定した標準災害診療録を作成し、実際の災害訓練で使用実態を検証した。多数傷病者対応に関する医療対応の標準化されたトレーニングコース(MCLS; Mass Casualty Life Support)コース」を開発し、全国規模で標準コース、インストラクターコースを展開した。「CSMにおける現場診療指針」として策定した。指針作成の基本方針としてCSMにおける現在の国際標準に沿いつつ、医療体制や救命救急士制度の相違などを考慮し我が国の実情に即した内容とした。日本赤十字社、日本医師会、国立病院機構の医療救護班とDMATとの役割分担、連携を明確にした。
結論
本研究班の成果物して、局地災害対応、消防との連携のガイドラインの策定、統一災害カルテの開発、ドクターヘリの運用・運航ガイドラインの策定、トリアージの手法とタッグの改善案の提示、広域災害救急医療情報システム(EMIS)の改訂、DMAT隊員養成研修、統括DMAT研修、都道府県担当者研修の見直し、指揮命令系統も含めたDMAT活動要領の改訂、DMATの自己完結性を補完するロジスティック拠点の基本構想、中央直轄ロジスティックチームのあり方(ロジスティック要員の資格、研修方法、身分保障等)、日本医師会、日本赤十字社、国立病院機構等の関係組織におけるDMATとの連携方策を示した。本研究班の成果が、「災害医療等のあり方検討委員会報告書」、および「災害時医療体制の充実強化」の具現化に大きな役割を果たすことを期待する。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201237009B
報告書区分
総合
研究課題名
自然災害による広域災害時における効果的な初動期医療の確保及び改善に関する研究
課題番号
H22-健危-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 憲彦(防衛省)
  • 大友 康裕(東京医科歯科大学)
  • 井上 潤一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 定光 大海(独立行政法人国立病院機構大坂医療センター)
  • 松本 尚(日本医科大学千葉北総病院)
  • 本間 正人(鳥取大学)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
  • 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 石原 哲(白鬚橋病院)
  • 高橋 毅(独立行政法人国立病院機構熊本医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
災害医療体制構築における課題に対して、対応のガイドライン、マニュアル等を提示することである。阪神淡路大震災においては、災害初動期の組織的な対応の不足から多くの「防ぎえた災害による死亡」を生んだことが問題とされた。この教訓から本邦では、災害拠点病院、広域災害救急医療情報システムが整備された。更に中越地震の教訓を得てDMATが設立した。しかし、このような災害医療体制は、その後も実災害や大規模な訓練の成果から課題をえて、様々な課題が提示されている。本研究は、これらの課題に対応するものであり、災害医療体制をより一層強化することにつながる。
研究方法
急性期災害医療を多方面から研究するとともに、それらの結果を連結させ包括的な災害医療体制に結び付けることである。研究課題は以下に示すように多方面に渡るため、研究分担者が分担して研究し、結果を全体会議で検討することにより有機的に結合させ、包括的な災害医療体制作りを試みた。
結果と考察
DMATの運用、ロジスティクスのあり方の方向性を示した。統括DMAT研修や都道府県担当者研修のカリキュラムを策定した。中央直轄型のロジスティックチームのあり方(ロジスティック要員の資格、研修方法、身分保障等)を示した。ロジステーションの具現化に向けて、NEXCO、JAXA等と連携した訓練を実施した。全ての災害拠点病院へDMATを配備するため、全国の災害拠点病院のDMAT配置状況を調査し、隊員養成研修の計画を立てた。3.11から得られた教訓から、隊員養成研修プログラム及び技能維持研修プログラムの改訂を行った。EMISにおけるDMAT活動拠点本部活動を支援する支援ツールを実用化した。DMAT活動拠点本部の体制管理、活動記録ならびにその共有、本部間の連絡メール、各DMATの隊員や資機材の登録などのEMISの機能強化が実現された。多機関でのEMIS情報の共有化推進については、EMISと内閣府中央防災情報システムとのリンクの設定を実現した。被災地において、複数のドクターヘリを安全に運航させるため、DMAT調整本部内におけるドクターヘリリエゾン+CSの有用性、運航動態管理システムである災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)の有効性を証明した。また、運航スタッフのためのDMAT研修プログラム、官民の枠を超えた災害時の航空燃料の確保策を提示した。広域医療搬送計画は全ての都道府県で整備すべきであること、SCUとドクターヘリの連携が重要であること、SCUの機能として「患者を出す機能」のみならず「患者を受ける機能」が不可欠であること、搬送基準は柔軟に適応すべきであることを明らかにした。新たな標準的なトリアージタッグのデザインの提案、およびトリアージタグ電子化に必要な事項を明確にした。外傷診療を想定した標準災害診療録を作成し、実際の災害訓練で使用実態を検証した。多数傷病者対応に関する医療対応の標準化されたトレーニングコース(MCLS; Mass Casualty Life Support)コース」を開発し、全国規模で標準コース、インストラクターコースを展開した。「CSMにおける現場診療指針」として策定した。指針作成の基本方針としてCSMにおける現在の国際標準に沿いつつ、医療体制や救命救急士制度の相違などを考慮し我が国の実情に即した内容とした。日本赤十字社、日本医師会、国立病院機構の医療救護班とDMATとの役割分担、連携を明確にした。
結論
本研究班の成果物して、局地災害対応、消防との連携のガイドラインの策定、統一災害カルテの開発、ドクターヘリの運用・運航ガイドラインの策定、トリアージの手法とタッグの改善案の提示、広域災害救急医療情報システム(EMIS)の改訂、DMAT隊員養成研修、統括DMAT研修、都道府県担当者研修の見直し、指揮命令系統も含めたDMAT活動要領の改訂、DMATの自己完結性を補完するロジスティック拠点の基本構想、中央直轄ロジスティックチームのあり方(ロジスティック要員の資格、研修方法、身分保障等)、日本医師会、日本赤十字社、国立病院機構等の関係組織におけるDMATとの連携方策を示した。本研究班の成果が、「災害医療等のあり方検討委員会報告書」、および「災害時医療体制の充実強化」の具現化に大きな役割を果たすことを期待する。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201237009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現在の災害医療体制は、阪神・淡路大震災の教訓と課題により構築された。今回の東日本大震災(以下3.11)において、DMAT(災害派遣医療チーム)、災害拠点病院は機能したと言えるが、3.11は、地震・津波・放射線災害という複合災害であり、医療ニーズは全く違うものであり、新たな課題も多く生まれた。本研究班は、3.11における災害医療の課題抽出とその対応策案を練った。これらの成果は更なる災害医療体制構築のために寄与するものと考える。
臨床的観点からの成果
3.11のDMAT活動経験をもとに、DMATの活動要領改定案を作成した。DMAT活動要領改定案に伴い活動要領が改訂され、それに基づいてDMAT隊員養成研修、維持機能研修の内容が一新され、DMAT隊員に3.11の経験がフィードバックされた。DMATのロジスティックス強化のため、中央直轄のロジスティクチームのあり方を示した。広域医療搬送、地域医療搬送に関して、より現実性、効率性の高い計画案を作成した。
ガイドライン等の開発
本研究の目的は、新たな課題を踏まえ更なる災害医療体制構築のための対応ガイドラインン、マニュアルを提示することである。ロジスティック拠点のガイドライン、地域医療搬送(ドクターヘリ含む)のガイドライン、多数傷病者対応のガイドライン、標準災害診療記録の案等を作成した。
その他行政的観点からの成果
3.11における災害医療の課題抽出と対応策案に関しては、厚生労働省「災害医療等のあり方に関する検討会報告書」(平成23年10月)及び厚生労働省医政局長通知「災害時における医療体制の充実強化について」(平成24年3月)に活かされた。また、「災害時における医療体制の充実強化について」において、具体的な9つの目標が示されたが、これらを具現化するための方策を提示した。
その他のインパクト
「多数傷病者対応標準化トレーニングプログラム」であるMCLS(Mass Casualty Life Support)に関しては、平成23年度8月から正式コースを全国開催しており、既に122回のコース、1,212人が受講した。今後、全国の消防職員への普及されることにより、災害現場における消防と医療の連携力強化が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
62件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201237009Z