多色発光細胞を用いたhigh-throughput 免疫毒性評価試験法の開発

文献情報

文献番号
201236016A
報告書区分
総括
研究課題名
多色発光細胞を用いたhigh-throughput 免疫毒性評価試験法の開発
課題番号
H24-化学-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
相場 節也(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 近江谷 克裕((独)産業技術総合研究所(バイオメディカル研究部門))
  • 山影 康次(食品薬品安全センター・秦野研究所・代替法試験部)
  • 小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・薬理部 新規試験法評価室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,574,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日常生活において使用されている数万種にも及ぶといわれる化学物質の免疫毒性を評価するためには,動物を用いないhigh throughput screening (HTS)系の確立が不可欠である.我々は,平成18-22年NEDOプロジェクトにおいて,産業技術総合研究所が開発した3色発光細胞技術を応用し,Jurkat細胞におけるINF-γ,IL-2, G3PDHプロモーター活性,THP-1細胞におけるIL-8,IL-1β, G3PDHプロモーター活性をhigh throughputに評価できる多色発光細胞を樹立し,化学物質の免疫毒性評価システム(Multi-ImmunoTox assay; MITA)を構築した(特願2010-131362; PCT/JP2011/65090).しかし, NEDOプロジェクトにおいては,このシステムの妥当性,有用性を評価するには至らなかった.そこで, MITAが免疫毒性を正確に評価できるか否かを代表的な免疫抑制剤,免疫賦活性物質を用いて検証することを平成24年度の研究目的とした。
研究方法
現在臓器移植,骨髄移植,膠原病治療などに際し用いられる代表的免疫抑制剤11種類,また,免疫系を賦活することが知られている化学物質11種類に関して, MITAを用いて免疫毒性作用を検討する(相場,近江谷,山影).また,同時に,ヒトT 細胞由来細胞株Jurkat細胞およびヒト単球由来THP-1細胞をそれぞれPMA/CaI刺激、LPS刺激しJurkat細胞に関してはIFN-γ, IL-2 mRNA発現をTHP-1細胞に関してはIL-1β,IL-8 mRNA発現の11種類の免疫抑制剤,賦活性物質による影響を定量的real-time PCRで測定し,MITAの結果との相関を検討する(相場).すでにECVAMによるprevalidationが行われているhuman whole blood cytokine release assayにより,これらの免疫抑制剤,賦活性物質を評価し,その結果とMITAの結果とを比較し,MITAのhuman whole blood cytokine release assayの代替法として可能性を探る(相場).
結果と考察
2012年の研究計画として以下の3項目を設定した.
1) MITAを用いた免疫毒性評価妥当性の検討
免疫抑制剤11種類,炎症性疾患治療薬(免疫調節性薬剤)6種類,免疫系への影響が無い薬剤6種類をMITAにより評価した.評価に際しては,各薬剤について,最高血中濃度(Cmax)の100倍濃度から3倍希釈による11段階希釈系列を作成し評価した.その結果,Cmaxの濃度でDEXによるIL-1β,IL-8, CyA,TACによるIL-2,IFN-γ転写活性抑制作用を検出できた.さらに,スルファサラジン,ニコチン酸アミドの免疫抑制作用も確認できたが,レフルノミドを除いては,代謝拮抗作用を介する疫抑制剤の効果は検出できなかった.一方,感作性物質であるDNCB,NiCl2,CoCl2,ホルマリン,環境汚染物質diesel exhaust particlesによるIL-8転写活性の増強を確認した.
2) mRNA定量による免疫毒性評価とMITAとの相関
T細胞におけるIL-2,IFN-γmRNA,単球におけるIL-1β,IL-8mRNA発現とMITAとの極めて良好な相関関係が確認できた.
3) ヒト whole blood cytokine release assay (WBCRA)の代替法としてのMITAの可能性の検討
WBCRAとMITAとの相関に関しては,まず,その欠点であるサイトカインの蛋白定量をmRNA定量に変更する検討を行った.その結果, 6時間の反応時間で回収されたRNAを用いたreal-time PCRにより現法と同等の結果が得られ,WBCRAの評価時間の短縮化と少数検体への対応が可能となった.また,免疫抑制剤Dex, CyA, Tacの免疫抑制効果のMITAによる評価は,WBCRAによる薬剤評価と一致した.
結論
当初の予定通りに研究は進捗している.2012年度の研究を通して、MITAの免疫毒性評価系としての有用性が明らかとなった.

公開日・更新日

公開日
2013-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201236016Z