中枢神経系の発達に及ぼす化学物質の影響に関する試験法の開発

文献情報

文献番号
201236008A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢神経系の発達に及ぼす化学物質の影響に関する試験法の開発
課題番号
H22-化学-若手-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤岡 宏樹(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター・DNA医学研究所・分子細胞生物学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 馬目 佳信(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 共用研究施設)
  • 花田 三四郎(国立国際医療研究センター研究所)
  • 井上 由理子(東邦大学 医学部 解剖学講座生体構造学分野)
  • 叶谷 文秀(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 白石 貢一(東京慈恵会医科大学 医用エンジニアリング研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は化学物質、特にナノマテリアルの中枢神経に与える毒性学的な影響を「細胞を使った評価法」、「脳スライス培養法(ex vivo)を使った評価法」、「動物個体を使った評価法」の3つの評価法を関連付けることで、「個体における中枢神経への影響を、細胞・脳スライス培養の評価から高精度に予測できる試験法」を開発することを目的とするものである。
研究方法
 本年度は、ラット血液脳関門モデルを用いたナノ粒子透過性の検証と透過機構の予測、神経幹細胞株や、ラット胎児初代培養神経細胞を使った毒性影響の検討、及び脳組織内へのナノ粒子の移行性を評価、更に脳組織内のナノ粒子の状態を検討できるシリカコーティングMRI造影剤の作製を行なった。
結果と考察
 ラット血液脳関門モデルによる評価、及びヒト神経細胞株・ラット初代培養細胞を使った細胞毒性の評価を進め、脳に影響を与える可能性がある濃度について、定量的な値を求めることができた。
 また、これらの研究成果について、Nanosafe 2012会議など国内外の学会や会議で発表を行い、これらの細胞・組織を組み合わせたボトムアップモデルによって、毒性影響を予測する試験法として活用できる可能性を講演し、試験法のバリデーションに向けた研究協力を呼びかけた。
 更に、MRI造影可能なシリカコーティング粒子の作製に成功し、今後、動物評価を行う際に必要な生体内における粒子の状態について推定することができた。
結論
 ナノ粒子が中枢神経に与える毒性学的な影響について、本研究で検討した細胞試験法を組み合わせることで、定量的な検討を行なえる可能性が示唆された。今後は、これらの試験法と既報の動物試験の結果とを比較することで、個体における影響を予測する精度を高め、国民の健康増進につなげたい。

公開日・更新日

公開日
2013-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201236008B
報告書区分
総合
研究課題名
中枢神経系の発達に及ぼす化学物質の影響に関する試験法の開発
課題番号
H22-化学-若手-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤岡 宏樹(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター・DNA医学研究所・分子細胞生物学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 馬目 佳信(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 共用研究施設)
  • 花田 三四郎(国立国際医療研究センター研究所)
  • 井上 由理子(東邦大学 医学部 解剖学講座生体構造学分野)
  • 叶谷 文秀(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 白石 貢一(東京慈恵会医科大学 医用エンジニアリング研究室)
  • 星野 昭芳(国立国際医療研究センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は化学物質、特にナノマテリアルの中枢神経に与える毒性学的な影響を「細胞を使った評価法」、「脳スライス培養法(ex vivo)を使った評価法」、「動物個体を使った評価法」の3つの評価法を関連付けることで、「個体における中枢神経への影響を、細胞・脳スライス培養の評価から高精度に予測できる試験法」を開発することを目的とするものである。本研究の遂行によって、より簡便かつ定量的な試験法を開発すると共に、動物実験の削減を目指す。
研究方法
 中枢神経系への影響を評価する方法を構築するため、次の5つの項目を検討・推進した。(1)ラット中枢細胞を使った血液脳関門(BBB)モデルによる評価法の構築、(2)ヒト神経幹細胞株、及びラット胎児の初代培養大脳皮質細胞を用いた評価法、及び脳スライス培養法を用いた評価法の構築、(3)動物個体での評価:中枢組織への侵入とその影響、(4)脳移行性解析のためのシリカ-磁性ナノ粒子作製と評価、及び(5)本研究手法の活用とバリデーションを目的とした国内外の会議・学会における研究協力の呼びかけ。
結果と考察
 (1)血液脳関門モデルが、動物試験との整合性(100 nm以上・以下で透過性が異なる点、表面修飾に依存した透過性がある点)があり、薬剤の評価で使用される透過係数Pappを用いて、定量的な評価が可能であることを示した。
 (2)中枢神経系細胞を用いた試験では、シリカ粒子の濃度と、神経シナプス数の減少、神経分化への影響についての関連性を示唆した。また、脳スライス培養法を使った試験では、次世代シーケンサ解析によって、アルツハイマー病や、若年性抑鬱の発症に関連する酵素Bace1の発現や、ALS関連遺伝子、及び細胞死に関連した遺伝子の発現を、高濃度曝露時に検出した。
 (3)動物個体を使った評価法では、100 nm未満の粒子である量子ドットを用いて、異なる投与法(静脈、腹腔)で脳内への移行を調査した。静脈からの脳への移行は確認できなかったが、腹腔から脳内への移行を観察した。特に脳組織内の分布では、大脳皮質、視床、及び嗅球において、血管周囲だけでなく、脳実質組織へ移行することが示唆された。
 (4)脳内へのナノ粒子の侵入・蓄積をより簡便に評価するため、MRIを使った非侵襲リアルタイム解析を可能にするシリカ-酸化鉄ハイブリッドナノ粒子を作製することに成功した。今後、この粒子を用いることで、脳内への侵入・蓄積がより簡便に評価できるようになることが期待される。
 (5)Nanosafe 2012会議など国内外の発表で、これらの細胞・組織を組み合わせたボトムアップモデルによって、毒性影響を予測する試験法として活用できることを講演し、試験法のバリデーションに向けた研究協力を呼びかけた。
結論
 本研究では、中枢神経系への毒性を、細胞や組織を用いるボトムアップモデルの手法を用いて定量的に評価できる方法の開発に取組んだ。今後、バリデーションを進める必要があるが、本研究で構築した試験法を用いることで、ナノ粒子への曝露によって起き得るリスクを事前に予測し、健康被害の防止やリスクの低減に貢献したい。

公開日・更新日

公開日
2013-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201236008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
細胞を使った血液脳関門モデルを使ってナノマテリアルの透過係数を定量的に算出できること、また動物試験の結果と一部整合性のある結果が得られることを示した。また、培養神経系細胞や組織を用いた試験を行い、毒性が観察される濃度とそのときの細胞・組織の状態を示した。
臨床的観点からの成果
将来的に、本研究で構築された評価手法を用いることで、ナノマテリアルがヒトの中枢神経系に影響を与える濃度について推定できる可能性がある。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発には至っていない。
その他行政的観点からの成果
現在までに行政的観点からの成果にはつながっていないが、今後、本評価手法を活用し、予測精度を高めることで、健康被害の防止や動物試験の削減につながる可能性がある。
その他のインパクト
Nanosafe2012、Nanotoxicology 2012などの国際会議や、日本動物実験代替法学会第25回大会などの国内学会で研究成果の発表を行った。また、2013年に行われた国際シンポジウムである7th International Symposium on Nanomedicine (ISNM2013)で本研究成果の発表がBest Poster Awardを受賞した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hanada S, Fujioka K, Futamura Y et al.
Evaluation of Anti-Inflammatory Drug-Conjugated Silicon Quantum Dots: Their Cytotoxicity and Biological Effect
International Journal of Molecular Sciences , 14 (1) , 1323-1334  (2013)
10.3390/ijms14011323
原著論文2
Fujoka K, Hanada S, Kanaya F et al.
Toxicity test: Fluorescent silicon nanoparticles
Journal of Physics: Conference Series , 304  (2011)
10.1088/1742-6596/304/1/012042
原著論文3
Hanada S, Fujoka K, Inoue Y et al.
Application of in vitro BBB model to measure permeability of nanoparticles
Journal of Physics: Conference Series , 429  (2013)
10.1088/1742-6596/429/1/012028
原著論文4
Hanada S, Fujioka K, Inoue Y et al.
Cell-based in vitro blood-brain barrier model can rapidly evaluate nanoparticles' brain permeability in association with particle size and surface modification.
International Journal of Molecular Sciences , 15 (2) , 1812-1825  (2014)
10.3390/ijms15021812
原著論文5
Fujioka K, Hanada S, Inoue Y et al.
Effects of silica and titanium oxide particles on a human neural stem cell line: morphology, mitochondrial activity, and gene expression of differentiation markers.
International Journal of Molecular Sciences , 15 (7) , 11742-11759  (2014)
10.3390/ijms150711742

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201236008Z