血液・尿中バイオマーカーの非臨床・臨床適用に関する評価要件の確立研究

文献情報

文献番号
201235059A
報告書区分
総括
研究課題名
血液・尿中バイオマーカーの非臨床・臨床適用に関する評価要件の確立研究
課題番号
H24-医薬-指定-028
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷 雄治(北里大学 医学部 附属臨床研究センター)
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 前川 京子(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、バイオマーカーの医薬品開発における利用を促進するための評価要件案作成の一環として、血液・尿中バイオマーカーに関し、特に問題となる測定用試料の採取条件、および非臨床動物で見出されたバイオマーカーのヒトへの外挿、に関する評価要件案の作成を最終目標として、1) バイオマーカーの開発動向調査(平成24年度)、2) 測定用血液・尿の採取に関する要件の明確化(平成24~25年度)、3) ヒト副作用試料の収集・バンク化(平成24~26年度)、4) 動物モデルおよびヒトバンク試料を用いた外挿性に関する実践的検証・検討と、注意すべき評価要件の明確化(平成25~26年度)、を行う。
研究方法
臓器障害バイオマーカーの開発動向および臨床適用について、各診療領域専門家との協議、文献的調査、北里大のデータベース検索等を行った。
血液および尿に関し、採取条件によるマーカー濃度への影響を明らかにし、安定的に測定しうる試料の採取要件を明確化するため、まずヒト血液試料およびラット尿に関し、蛋白質および内在性代謝物濃度への採取・背景条件(性別、年齢、血漿・血清)及び保管条件(凍結融解)の影響を、蛋白質を網羅的に測定するプロテオーム解析系および内在性代謝物を網羅的に測定するメタボローム系を用いて明らかにした。
結果と考察
腎障害のL-FABPのような障害に特異的なマーカーを除き、多くのマーカーは比較的非特異的であった。また近年、肝障害や腎障害を中心に数種の蛋白質や代謝物がマーカーになりうると報告されているが、多くのケースでは、副作用特異性が不明で、かつ別群での検証がされていなかった。また採取条件の影響も検討されていなかった。
ヒト血液を対象にしたメタボローム解析で、イオン性及び疎水性代謝物共に、一部の分子種では、そのレベルが血漿・血清間、男女間、若年・老年間で大きく異なることが明らかになった。プロテオームに関しては、マーカー同定に低レベル蛋白質の同定・定量が必要と考えられたため、抽出系の改良を行い、一回の分析で700以上の蛋白質を同定しうる系を構築した。この手法を用いて、性差、絶食の有無、採血時間など基本的な実験条件がラット尿プロテオームに与える影響を検討した。その結果、雌雄間で最も大きな差が見られ、雄または雌特異的に発現している蛋白質を同定した。絶食に関しては大きな影響は認められなかった。
副作用発生時および回復時の血液・尿試料を収集しバンク化するため、北里臨床研究センター内に臨床研究事務局を設置し、学内各診療領域の専門家を含め臨床研究体制を構築し、試験計画書作成を開始した。また別途、国立衛研でも重篤副作用試料の収集を開始した。
結論
バイオマーカーの開発動向調査の結果、医薬品開発の点からは、特に肝障害と間質性肺障害に関するマーカー探索・検証の必要性が高いと考えられたため、この2種のいずれかを対象に、外挿性の検討を行うこととした。
ヒト血液中の内在性代謝物に関しては、親水性及び疎水性代謝物共に、一部の分子種では、そのレベルがマトリックスの影響を大きく受けることが明らかになり、特にこれらの分子種をバイオマーカーとして用いる場合には、早期にマトリックスを統一すべきであることが示された。結果を総合的に評価すると、血液凝固に伴う蛋白質除去で濃縮されるため感度が良く(特にアミノ酸等)、かつ数回の凍結融解後も比較的安定に測定できるため、イオン性代謝物に関しては血清が適していること、一方、疎水性代謝物に関しては、機能脂質であるLPC等のレベルが凝固反応の影響を受けない血漿が適していることが示唆された。さらに一部の代謝物では、性別や年齢によりレベルが大きく異なることから、探索したバイオマーカーが、これらに該当する場合には、診断の際に注意を要することが示唆された。一方、凍結融解の影響は疎水性代謝物で大きく、これらをバイオマーカーとして探索・診断する場合には、特に保管条件に注意すべきと考えられた。
 またラット尿中の蛋白質に関しては、雌雄それぞれに特異的な蛋白質が多く存在し、非臨床におけるバイオマーカー候補の選択には注意を要することが示唆された。
 以上の成果は、非臨床動物およびヒトにおける血液・尿を対象とした試料採取要件に含める予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235059Z