医薬品のライフサイクルを通じた品質確保と改善に関する研究

文献情報

文献番号
201235052A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品のライフサイクルを通じた品質確保と改善に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-021
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 香取 典子(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品規制の国際調和を目指すICHは、医薬品品質保証に品質システムの概念を導入し、最新の科学と品質リスク管理(QRM)に基づく、開発から市販後まで一貫した品質管理システムの採用と、規制の柔軟な運用を可能とする政策を打ち出した。その主要な柱がクオリティーバイデザイン(QbD)と呼ばれる体系的な開発手法である。QbDの概念は製造プロセスの構築のみならず、試験法の開発や安定性評価にも拡張されつつあり、従来の画一的な規制は変更が求められようとしている。一方で、新しい科学の進展に伴い、遺伝毒性不純物に関するガイドライン等が新たに作成中であり、製造方法や品質はより厳密な管理が要求されようとしている。
本研究は、上記の課題に対応するため、原薬および製剤を対象とし、ライフサイクルを通した医薬品の品質確保のために実施すべき課題を抽出し、我が国の実情に適した解決策を提案することを目的とした。
本年度はまず、産業界(JPMAおよび日本医薬品原薬工業会等)および規制当局(PMDA等)からなる研究チーム(原薬および製剤)を組織し、下記の研究を実施した。なお対象とする原薬は低分子化学医薬品を想定した。
研究方法
「原薬のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究」に関してはPMDAの審査・査察担当者並びに産業界からは日本製薬工業会、日本医薬品原薬工業協会等に属する企業の研究者からなる研究チームを、「製剤のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究」に関してはPMDAの審査・査察担当者および地方庁の薬事担当者並びに産業界からは日本製薬工業会等からなる研究チームを組織し、緊密に議論を実施した。
結果と考察
原薬のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究:
遺伝毒性不純物の管理およびスケールアップの際のライフサイクルマネジメントの運用管理に関して検討した。
遺伝毒性不純物に関しては、昨年度作成したS2モックであるサクラミル原薬の開発のシナリオを用い、遺伝毒性不純物の開発段階におけるケース(開発初期、開発中期、申請時)を想定し、遺伝毒性不純物の管理戦略を検討するとともに、遺伝毒性管理に関して治験届のモック案を作成した。ICHGLの円滑な実施のために治験薬における遺伝毒性不純物の管理戦略や情報伝達について関規制当局と医薬品産業界で共通の認識を得ていく必要があることが明らかになった。
ライフサイクルマネジメントに関しては、スケールから独立したパラメータを有する撹拌モデルを利用し、そのモデルから導かれるスケールファクターを持たないPv値を利用することにより、製造規模によらない工程パラメータの管理が可能となることを提案した。

製剤のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究:
管理戦略の概念整理とGMP施行通知における「バリデーション基準」およびNIRの製剤工程管理への適用事例研究に関して研究を実施した。
プロセスバリデーション(PV)のライフサイクルの概念を含む管理戦略に係る概念の基礎的な整理ができたと考える。これらを参考にし、GMP施行通知バリデーション基準改訂の論点をまとめ、改訂案作成に貢献した。また検討の過程で、一部にある誤解、及び解釈の明確化への努力も整理した。さらに、QbDコンセプトの分析分野への応用の可能性を検討し、目標分析法プロファイル(Analytical Target Profile:ATP)の概念が分析法の開発、製品ライフサイクルを通じた継続的な分析法の改善に重要な役割を果たすことが示された。
管理戦略としてNIRを利用する具体例として、混合工程ならびに滑沢剤混合工程にIn-line NIRを利用し、混合均一性をリアルタイムに管理することにより、含量均一性に与えるリスクを低減した事例を示した。さらに、PATにおいて課題となっている多数のサンプル数(Large-N)による含量均一性試験に対し、統計学的な手法を用いて欧米で採用されている試験法の妥当性について検討し、推奨されるべき判定基準を示した。
結論
医薬品のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究を実施し、原薬に関しては治験期間に応じた治験届モックの作成およびスケールに依存しないパラメータに基づく製造方法の記述法を提案した。一方、製剤に関しては、管理戦略の概念整理とGMP施行通知における「バリデーション基準」およびNIRの製剤工程管理への適用事例研究に関して研究を実施し、GMP施行通知バリデーション基準改訂の論点をまとめ、改訂案作成に貢献した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235052Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,800,000円
(2)補助金確定額
3,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,513,084円
人件費・謝金 479,296円
旅費 390,820円
その他 417,195円
間接経費 0円
合計 3,800,395円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-05-29
更新日
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