地域医療における薬剤師の積極的な関与の方策に関する研究

文献情報

文献番号
201235022A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療における薬剤師の積極的な関与の方策に関する研究
課題番号
H23-医薬-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 秀昭(医療法人社団明芳会イムス三芳総合病院 薬剤科)
  • 土屋 文人(国際医療福祉大学 薬学部)
  • 賀勢 泰子(医療法人久仁会鳴門山上病院 薬剤部)
  • 棗 則明(医療法人社団誠馨会総泉病院 薬剤部)
  • 源川 奈穂(日本電気(株) 本社健康管理センター薬局)
  • 大倉 輝明(長野県厚生農業協同組合連合会富士見高原医療福祉センター富士見高原病院)
  • 武藤 浩司(医療法人知命堂病院 薬剤科)
  • 赤沢 学(明治薬科大学 薬学部)
  • 恩田 光子(大阪薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現状の医療システムでは、薬剤師の専門性や職能を十分に発揮できる環境ではなく、薬剤師の専門的な能力を有効活用できる医療システムを構築する必要がある。研究班が目指しているのは、抽象的な理論を述べることではなく、正確な現状分析および具体的な方策の提示にあり、実証研究による科学的な根拠(エビデンス)を獲得することにある。超高齢社会を迎えて地域の薬剤師が果たすべき本質的な役割は何かを検討することを研究の理念に据えている。
研究方法
(1)処方変更の要因と患者アウトカムに関する研究:
外来処方の長期投薬患者への薬剤師の拡大的機能評価のための研究では「投与日数が長い慢性疾患を有する外来患者を対象に据え、処方変更に影響を及ぼす要因を解析し、薬物療法における薬剤師の役割を明らかにすること」を目的にした要因分析を行った。
(2)在宅医療における薬局薬剤師の実態と機能的役割の検討:
医療提供体制が施設から在宅にシフトする構造的な変化が進展する中、地域の薬剤師が果たすべき役割は大きく積極的な関与が期待されている。「現状の実態」を把握し、そこからどのように発展させていくかが今後の課題である。しかしながら、現状では薬剤師がどのような役割を担っているのか、どのくらいの薬局数があるのか、従事している薬剤師は何人か、患者数や疾患はどのようなものか、さらにはどのくらい臨床アウトカムに貢献しているか、など正確な現状把握がなされていない。本研究は、本邦初となる在宅医療における薬剤師業務の全国調査を最終目的にしている。
結果と考察
(1)処方変更の要因と患者アウトカムに関する研究:
分析の結果、薬剤師の処方設計への参画は、慢性疾患患者の処方変更に大きく影響を及ぼしていることが明らかとなった。直接患者から聴取した自他覚症状および重複処方、投与禁忌など服薬指導前にカルテから収集した情報の提供が処方変更に影響を及ぼすことも明らかになった。すなわち、薬剤処方の変更の要因に副作用症状などの臨床情報と安全性など医薬品の適正使用情報が大きくかかわることが示唆された。さらに調査研究の精度を上げるために、病院・診療所・保険薬局のデータを使用して薬剤師が処方設計に参画した場合は患者アウトカムが改善するか否かを明らかにする大規模研究を開始した。対象は投与日数が長い慢性疾患患者2,000症例程度とし、過去3年間の診療カルテや調剤録を使用し処方変更に影響を及ぼす要因の調査を始め、本年度から来年度半ばまでに実地調査を完了し解析を行う予定である。
(2)在宅医療における薬局薬剤師の実態と機能的役割の検討:
地域の保険薬局における在宅訪問業務の実施有無と薬局属性との関連、在宅訪問に係る業務量とアウトカムとの関連、薬局薬剤師による在宅訪問と服薬アドヒアランスの関連、薬局薬剤師による在宅訪問業務のアウトカムと他職種連携との関連が示唆された。
結論
超高齢社会が進展する中、高齢者の医療需要は増加し、その多くが慢性疾患で薬物療法が中心になっている。こうした医療環境の急速な変化に直面して、地域の薬剤師が従来からの固定した役割から脱却し、具体的な「適切な処方設計(再提案)」あるいは「適切な薬物療法の管理」の専門的な職能を発揮できる新しい積極的な役割を見出して行かなければならない。ここで意味する薬剤師の積極的な役割とは、薬局薬剤師や病院薬剤師が地域医療で行われるチーム医療(医師・看護師など他の医療従事者)において薬剤師の専門性を発揮しかつ連携強化を実行すること、在宅医療で患者情報を共有して適切な薬物療法が実施されること、薬剤師がより一層処方設計で中心的な役割を果たすこと、などである。本研究成果はこれらを明示するエビデンスに成り得る。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,275円
差引額 [(1)-(2)]
-275円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 303,227円
人件費・謝金 2,740,920円
旅費 1,544,930円
その他 5,411,198円
間接経費 0円
合計 10,000,275円

備考

備考
超過分は自己負担

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-