輸血用血液製剤及び血漿分画製剤投与時の効果的なインフォームド・コンセントの実施に関する研究

文献情報

文献番号
201235006A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液製剤及び血漿分画製剤投与時の効果的なインフォームド・コンセントの実施に関する研究
課題番号
H22-医薬-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 茂義(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学科)
  • 米村 雄士(熊本大学病院 輸血・細胞治療部)
  • 紀野 修一(旭川医科大学病院 臨床検査・輸血部)
  • 松本 雅則(奈良県立医科大学 輸血部)
  • 津野 寛和(東京大学医学部附属病院 輸血部)
  • 藤井 康彦(山口大学医学部附属病院 輸血部)
  • 高橋 孝喜(東京大学医学部附属病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、輸血用血液製剤やアルブミンなどの血漿分画製剤を含む血液製剤を使用する際の効率的なインフォームド・コンセント(IC)を実施するための説明書や環境整備を行うことである。平成24年度には、ICの案文に対する意見や問題点を集約し、最適な汎用の書式を作成する。また、アルブミン製剤の国内自給率低下に及ぼす諸因子の検討を行い、汎用輸血説明書・同意書の役割を考える。さらに、アルブミンの適正使用に関するガイドライン作成のための文献的検索を行い、エビデンスレポートを作成することで血液製剤の使用指針の改定に役立てる。
研究方法
1)作成した汎用輸血説明書を輸血実施施設に送付し、広く意見を求め修正後に最適な汎用書式にする。2)実際に研究者の施設において本輸血説明書を使用し、医療従事者からの意見を集約する。3) 血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会の最終報告書を用い、アルブミン製剤の国内自給低下に及ぼす諸因子の検討を行う。4)アルブミンの効能効果について過去20年間の文献を検索し最新の知見をまとめる。
結果と考察
血液製剤使用時のICを効率的に行うための輸血説明書を、輸血実施施設(約11,000施設)に配布しパブリックコメントを回収した。回答施設(3713施設)の42.5%(1576施設)が「使用してみたい」と答え、その年間必要部数は約30万部に達し、輸血説明書に対する医療施設の関心の高さが判明した。コメントとして、「わかり易く、是非使用した」という意見が多かったが、「院内採用製剤は国内製剤と海外製剤のうち1種類のみであるために対応が難しい」という意見もあり、血液製剤使用時とくに血漿分画製剤使用時のICを行う場合の院内環境整備(院内採用方法・部門など)の問題も大きいことが分かった。実際に研究者の施設で使用したところ、主治医の81%は説明内容が理解しやすいと回答した。改善点としては専門用語をもう少し平易な用語に変更すべきとの意見もあった。「国の血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会」では、ICの重要性が挙げられ、できる限り患者が国内献血製剤を選択できる環境整備が必要であると結論された。血漿分画製剤使用時のICの説明者としては、血漿分画製剤に精通している薬剤師等の協力を得ることで意見が一致した。そのため研究者らは各地域の薬剤師会での講演活動を実施し、パンフレット作成を含め啓蒙活動を行っている。
各施設におけるICの効率化や血漿分画製剤の国内自給推進のための環境整備として、①院内の血漿分画製剤採用基準の変更と国内製品処方のお願い、②血漿分画製剤の安全性の確認、③血漿分画製剤の輸血部管理による適正使用の推進や同意書取得率の向上、および輸血後感染症検査実施率の改善、④院内薬事委員会に輸血部スタッフが参加することによる国内製剤採用の推進効果などが挙げられた。
結論
患者に分かりやすく汎用性のある輸血説明書の運用は、ICにおいて重要であり、アルブミン製剤の国内自給推進に役立つものと考える。輸血/血漿分画製剤使用説明書の年間使用予測部数は約30万部に達し、関心の高さが窺われた。今後は日本輸血・細胞治療学会の公の説明書として配布を予定している。アルブミン製剤の適正使用に関するガイドラインに関しては、文献検索からエビデンスレベルの高い論文を選定し、アルブミン製剤の適応病態・疾患ごとにまとめている。本研究班は、①輸血/血漿分画製剤の使用説明書作成・配布、②アルブミン製剤の適正使用に関するガイドラインの作成、③医療従事者への啓蒙活動などを通じて、輸血実施施設における環境整備を行い、血液製剤投与患者に正しい情報を提供していき、結果的に「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)」の基本理念である献血による国内自給と安定供給の実現に向けて役立たせる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201235006B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血用血液製剤及び血漿分画製剤投与時の効果的なインフォームド・コンセントの実施に関する研究
課題番号
H22-医薬-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 茂義(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学科)
  • 米村 雄士(熊本大学病院 輸血・細胞治療部)
  • 紀野 修一(旭川医科大学病院 臨床検査・輸血部)
  • 松本 雅則(奈良県立医科大学 輸血部 )
  • 津野 寛和(東京大学医学部附属病院 輸血部 )
  • 藤井 康彦(山口大学医学部附属病院 輸血部 )
  • 佐川 公矯(佐賀県赤十字血液センター所長(元久留米大学医学部附属病院 輸血医学教授))
  • 髙橋 孝喜(東京大学医学部附属病院 輸血部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
安全で適正な輸血療法の実践のためには、輸血の有効性と安全性に関する十分な説明と理解が必須条件であり、患者への適切な情報提供と説明なくして、患者自身による自己決定は不可能であることから、本研究の目的は、アルブミンなどの血漿分画製剤を含む血液製剤使用時に汎用し得るインフォームド・コンセント(IC)の作成である。アルブミン製剤の国内自給率低下に及ぼす諸因子の検討を行い、汎用輸血説明書・同意書の役割を考える。また、アルブミンの適正使用に関するガイドライン作成のための文献的検索を行い、エビデンスレポートを作成することで血液製剤の使用指針の改定に役立てる。
研究方法
1.日本輸血細胞治療学会が中心となって行っている総括的輸血アンケート調査結果による血液製剤使用時のICの現状把握と、一般生活人を対象にインターネット上で輸血に関する意識・認識調査を行う。2.血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会の最終報告書を用い、アルブミン製剤の国内自給低下に及ぼす諸因子の検討を行う。3.汎用輸血説明書を作成し、輸血実施施設に対し広く意見を求め、全国で使用可能な汎用性のある究極の輸血説明書を完成させる。4.アルブミンの効能効果について過去20年間の文献を検索し最新の知見をまとめる。
結果と考察
総括的輸血アンケート調査の結果、輸血用説液製剤使用時に常にICを行う施設は、ほぼ100%に達するのに対し、アルブミン製剤使用時は85%前後であり低かった。原料血漿の採血国や献血・非献血の別の情報を常に提供している施設は20%程度であった。また採血国や献血・非献血の別の情報を提供している施設では、国産アルブミン使用率が高かった。効果的なICの実施がアルブミン製剤の自給率増加に貢献する可能性が示唆された。アルブミン製剤の国内自給率の低下には、アルブミン製剤の国内および海外製剤との価格差問題が大きく影響し、DPC導入施設では病院経営上の理由で安価である輸入製剤に切り替える実態が判明している。「国の血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会」では、ICの重要性が挙げられ、できる限り患者が国内献血製剤を選択できる環境整備が必要であると結論された。輸血/血漿分画製剤使用説明書はアンケート回答施設の42.5%で使用してみたいと回答した。
結論
患者に分かりやすく汎用性のある輸血説明書の運用は、ICにおいて重要であり、アルブミン製剤の国内自給推進に役立つものと考える。輸血/血漿分画製剤使用説明書の年間使用予測部数は約30万部に達し、関心の高さが窺われた。今後は日本輸血・細胞治療学会の公の説明書として配布を予定しており、内容は適宜修正する。また、アルブミンの適正使用に関するエビデンスレポートは有用と考えられ、現在、莫大な文献を検索し作成中であり、「血液製剤の使用指針」の改定に役立てるようにする。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201235006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の目的は、輸血用血液製剤やアルブミンなどの血漿分画製剤を含む血液製剤を使用する際の効率的なインフォームド・コンセント(IC)を実施するための説明書作成や環境整備を行うことである。出来る限り分かり易い様式で輸血説明書を作成し、血漿分画製剤の採血国や採血方法についての情報も含んだものを25万部印刷し全国に配布した。さらにアルブミン製剤の適正使用に関するガイドラインを完成させ日本輸血細胞治療学会誌に報告し、適正使用の推進に役立つようにした。
臨床的観点からの成果
血漿分画製剤使用時のIC実施率は90%以下であり、原料血漿の採血国や採血方法の情報は患者に十分提供されていない。血液製剤使用時のリスクとベネフィットに関して、分かり易い説明書は、患者への情報提供ばかりでなく、医療従事者の時間的制約にも役立つ。血漿分画製剤の使用説明書を多くの施設で利用した結果、300床以上施設における同意書に採血国や献血・非献血の別の情報を含んだ説明同意書がある施設が約5%程度増加した。
ガイドライン等の開発
全国統一の輸血説明書を作成することで、患者にとっての最新情報を知ることが可能となる。またアルブミン製剤使用においては、適正使用病態や疾患を過去の文献的考察を行うことでエビデンスレベルを明らかにし、推奨グレードを添付したガイドラインを完成させ日本輸血細胞治療学会誌に掲載し、平成27年度適正使用調査会で発表した。さらにMindsガイドラインセンターにアップされた。これらはアルブミン製剤の適正使用推進に役立つものと考える。
その他行政的観点からの成果
輸血時のICの重要性に関しては、「血漿分画製剤の供給のあり方に関する検討会」第7回検討会(平成24年9月28日開催)に「血漿分画製剤のインフォームド・コンセントのあり方について」発表した。また、アルブミン製剤の適正使用に関するガイドラインは平成27年の適正使用調査会で、その内容を提示し、「血液製剤の使用指針」が平成29年4月に改訂され、アルブミンの項における適正使用病態の修正に大いに役立った。また、血液法の基本方針改訂の中で血液製剤のIC時に薬剤師等の活躍が期待される文言が入った。
その他のインパクト
学会誌に「チーム医療によるアルブミンの国内自給推進について」の総説を発表して、第64回日本輸血・細胞治療学会総会では、「血液製剤の国内自給と安定供給~献血現場からベッドサイドにとどくまで」のシンポジウムを開催し、国、日赤、医師、薬剤師、検査技師がそれぞれの立場で発表した。聴衆に対するインパクトは大きかった。

発表件数

原著論文(和文)
4件
チーム医療によるアルブミンの国内自給推進について.他3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
牧野茂義:輸血用血液製剤および血漿分画製剤使用時のインフォームドコンセントのあり方 検査と技術41(9):785-789,2013.他1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
牧野茂義:第66回国立病院総合医学会「血漿分画製剤の国内自給についてーインフォームド・コンセントの実施に関する環境整備ー」他3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
24件
田中朝志「アルブミン製剤の国内自給を血液新法から考える」パンフレット(Focus on ALBUMIN vol.2) その他、講演23件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
牧野茂義、田中朝志、紀野修一、他3名
2011年度日本の輸血管理体制および血液製剤使用実態調査報告
日本輸血細胞治療学会誌 , 58 (6) , 774-781  (2012)
原著論文2
田中朝志、牧野茂義、大戸斉、他2名
アルブミン製剤に関する緊急調査報告
日本輸血細胞治療学会誌 , 57 (4) , 278-282  (2011)
原著論文3
牧野茂義、田中朝志、紀野修一、他5名
2012年日本における輸血管理体制及び実施体制と血液製剤使用実態調査報告
日本輸血細胞治療学会誌 , 59 (6) , 832-841  (2013)
原著論文4
牧野茂義
チーム医療によるアルブミンの国内自給推進について
日本輸血細胞治療学会誌 , 61 (6) , 515-521  (2015)
原著論文5
牧野茂義
血液法の基本方針改正に伴う病院薬剤師の役割
医学のあゆみ , 249 (8) , 703-704  (2014)
原著論文6
牧野茂義
輸血用血液製剤および血漿分画製剤使用時のインフォームドコンセントのあり方
検査と技術 , 41 (9) , 785-789  (2013)
原著論文7
安村敏、牧野茂義、松下正、他6姪
科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン
日本輸血細胞治療学会誌 , 61 (3) , 巻末3-22  (2015)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235006Z