国際協調を重視した化粧品・医薬部外品における安全性試験法の再評価に関する研究

文献情報

文献番号
201235001A
報告書区分
総括
研究課題名
国際協調を重視した化粧品・医薬部外品における安全性試験法の再評価に関する研究
課題番号
H22-医薬-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター薬理部新規試験法評価室)
研究分担者(所属機関)
  • 大野泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 松永佳世子(藤田保健衛生大学医学部)
  • 杉浦伸一(名古屋大学医学系研究医療システム管理学寄付講座)
  • 杉山真理子(日本化粧品工業連合会 技術部会 動物実験代替専門委員会)
  • 山本直樹(藤田保健衛生大学共同利用研究施設)
  • 杉林堅次(城西大学薬学部)
  • 尾上誠良(静岡県立大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2013年3月より、欧州にて化粧品成分に対する動物実験禁止、および化粧品の販売禁止が実施されており、わが国で販売される新規化粧品や医薬部外品(薬用化粧品等)等においても、動物実験代替法(代替法)を用いた化粧品成分の安全性評価に関する国際協調を急がねばならない。この国際協調を重視した化粧品・医薬部外品における安全性試験法の再評価に関する研究として、試験法の国際調査を行うとともに、研究開発、バリデーションを含む評価、ヒトパッチテストの再検討と使用試験および使用試験の情報管理統括に関する研究を行った。
研究方法
化粧品・医薬部外品における安全性試験の中で、まだ代替法が未開発の分野を中心に動物をもちない代替法(in vitro試験)の開発を進めた。また、動物実験は使えない場合を想定してヒト試験の充実を図るため、ヒトパッチテストと使用試験を比較検討するとともに、副作用情報の収集方法を検討した。これらの検討に加え、欧米で開発される試験法の情報収集を入手しながら、国際協調を重視し、医薬部外品・化粧品の安全性評価試験法の再評価を鑑みた。
結果と考察
試験法の調査においては、動物実験を行った原料を配合する化粧品のEUにおける販売が禁止される2013年3月の延期問題に関連した調査を行った。
試験法の開発および評価として、皮膚刺激性試験に関しては、いくつかの化学物質の動物皮膚および3次元培養ヒト皮膚モデル中濃度を比較した結果、3次元培養ヒト皮膚モデルの特徴を理解して用いる必要があると推定された。
眼刺激性試験に関しては、 SIRC-CVSアッセイの国際バリデーション実行委員会を組織し、バリデーションを実施した。高い施設内および施設間再現性を確認できた。また、3次元角膜モデルとしてLabCyte CORNEA-MODEL24を用いた眼刺激性試験代替法のプロトコルを検証するため、共同研究を実施し、プロトコルの問題点を確認できた。さらに、現行試験法の問題点を解決するため、不死化遺伝子を導入して作製した新規不死化角膜上皮細胞を用いて、細胞毒性試験よりも低濃度において細胞に対する影響を検出できる遺伝子(cyclin-D1, snail-1, keratin-3)の選出および三次元角膜再構築モデルの作製法と曝露実験プロトコルの概案を確立した。
光毒性試験に関しては、reactive oxygen species (ROS) アッセイが他施設間バリデーションにより使用する solar simulator が異なったとしても,適切にキャリブレーションすることによって信頼性の高い光安全性評価法であることを確認できた。また、ROSアッセイの難水溶性薬物への適合性が低い問題を回避するために界面活性剤を加えた micellar ROS assay を構築した。 83 種のモデル化合物を用いて,高い予測性ならびに頑健性を得られた。
ヒトパッチテストの再検討と使用試験において、パッチテストは再現性のある試験系であり、実使用を想定した連続塗布試験結果との間に相関性を認めることから、市販外用医薬品における皮膚安全性の予測手段になりうることが示唆された。副作用情報収集のため、Office365を用いて茶のしずく石鹸による副作用の情報共有サイトを作成し、利用状況を調査した。またサーベイランスへの応用として接触皮膚炎症例調査サイト、CTG図の判別調査サイトを作成し、使用試験の情報管理システムとしての有用性を確認した。
結論
化粧品・医薬部外品における安全性試験の中で、皮膚刺激性・眼刺激性・光毒性試験において、まだ代替法が未開発の分野を中心にin vitro試験の開発、改良およびバリデーションを進めることができた。また、パッチテストと実使用を想定した連続塗布試験の相関を確認できるとともに、副作用情報の収集方法を開発できた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201235001B
報告書区分
総合
研究課題名
国際協調を重視した化粧品・医薬部外品における安全性試験法の再評価に関する研究
課題番号
H22-医薬-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター薬理部新規試験法評価室)
研究分担者(所属機関)
  • 大野泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 松永佳世子(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 杉浦伸一(名古屋大学 医学系研究科医療システム管理学寄付講座)
  • 杉山真理子(日本化粧品工業連合会 技術部会 動物実験代替専門委員会)
  • 山本直樹(藤田保健衛生大学 共同利用研究施設)
  • 杉林堅次(城西大学 薬学部)
  • 尾上誠良(静岡県立大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2013年3月より、欧州にて化粧品成分に対する動物実験禁止、および化粧品の販売禁止が実施されており、わが国で販売される新規化粧品や医薬部外品(薬用化粧品等)等においても、動物実験代替法(代替法)を用いた化粧品成分の安全性評価に関する国際協調を急がねばならない。この国際協調を重視した化粧品・医薬部外品における安全性試験法の再評価に関する研究として、試験法の国際調査を行うとともに、研究開発、バリデーションを含む評価、ヒトパッチテストの再検討と使用試験および使用試験の情報管理統括に関する研究を行った。
研究方法
化粧品・医薬部外品における安全性試験の中で、まだ代替法が未開発の分野を中心に動物をもちない代替法(in vitro試験)の開発を進めた。また、動物実験は使えない場合を想定してヒト試験の充実を図るため、ヒトパッチテストと使用試験を比較検討するとともに、副作用情報の収集方法を検討した。これらの検討に加え、欧米で開発される試験法の情報収集を入手しながら、国際協調を重視し、医薬部外品・化粧品の安全性評価試験法の再評価を鑑みた。
結果と考察
試験法の開発および評価においては、皮膚刺激性試験代替法として、培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL24を用いた試験法のバリデーションを実施し、この報告書をOECDに提出した。本試験法は2013年4月にOECD TG439に追記された。また、3次元培養ヒト皮膚モデルは、ヒト摘出皮膚や動物摘出皮膚と異なり、角層バリア能が脆弱であり、また、皮内カルボキシエステラーゼ活性が低いことが明らかとなった。さらに、3次元培養ヒト皮膚モデル内のconcentration-distance profileや薬物の皮膚中濃度が動物摘出皮膚と大きく異なる結果から、偽陽性および偽陰性反応を生じる原因の一つであることが明らかとなった。
眼刺激性試験代替法として、短時間暴露(STE)法のバリデーションを実施し、バリデーション報告書をOECD事務局に提出した。SIRC-CVSアッセイについては、phaseⅠ~Ⅱの国際バリデーションを実施し、高い施設内および施設間再現性を確認できた。3次元角膜モデルLabCyte CORNEA-MODEL24を用いた眼刺激性試験代替法のプロトコルを検証するため、共同研究を実施し、プロトコルの問題点を確認できた。
また、不死化遺伝子を導入して作製した新規不死化角膜上皮細胞を用いて、NOAEL(無作用量)の検出を含めた試験法(二次元培養モデルと三次元角膜再構築モデル)を検討し、新しい眼刺激性試験代替法を開発した。山本が作出した不死化ヒト角膜上皮細胞(iHCE-NY)を用いた二次元培養における曝露実験プロトコルを確立した。さらに細胞毒性試験よりも低濃度において細胞に対する影響を検出できる遺伝子(cyclin-D1, snail-1, keratin-3)の選出およびiHCE-NYを用いた三次元角膜再構築モデルの作製法と曝露実験プロトコルの概案を提示した。
光毒性試験代替法として、光化学的試験方法である reactive oxygen species (ROS) アッセイの信頼性ならびに頑健性を精査するため,他施設間バリデーションを実施した。 solar simulator が異なったとしても,信頼性の高い光安全性評価法であることを確認できた。また、ROSアッセイの難水溶性薬物への適合性が低い問題を回避するために界面活性剤を加えた micellar ROS assay を構築した。83 種の化合物を用いて,高い予測性ならびに頑健性を得られた。 
ヒトパッチテストの再検討と使用試験において、陽性および陰性コントロールを置いた健常人の予知パッチテストを施行し、パネル間の易被刺激性の指標に有用である可能性が示唆された。さらに、市販の外用医薬品を用いて、パッチテスト結果の再現性を確認するとともに、実使用を想定した連続塗布試験を実施し、その関係性を検討した。その結果、パッチテストは、再現性のある試験系であり、実使用を想定した連続塗布試験結果との間に相関性を認めることから、市販外用医薬品における皮膚安全性の予測手段になり得ることが示唆された。
情報管理統括の観点から、インターネットを用いた情報収集・共有、管理の可能性を検討した。その結果、短期間で全国から情報を収集でき、データの加工・公表もスムーズに行うことができた。
結論
化粧品・医薬部外品における安全性試験の中で、皮膚刺激性・眼刺激性・光毒性試験において、まだ代替法が未開発の分野を中心に動物をもちない代替法の開発、改良およびバリデーションを進めることができた。また、パッチテストの有用性を再確認するとともに、使用試験の情報管理法を開発できた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201235001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
3次元培養ヒト皮膚モデルの角層バリア能が脆弱であること、およびその原因として、皮内カルボキシエステラーゼ活性が低いことが明らかとなった。不死化遺伝子を導入して作製した新規不死化角膜上皮細胞を用いて、低濃度において角膜細胞に対する影響を検出できる遺伝子(cyclin-D1, snail-1, keratin-3)を明らかにした。
臨床的観点からの成果
ヒトパッチテストと使用試験の比較から、パッチテストは、再現性のある試験系であり、実使用を想定した連続塗布試験結果との間に相関性を認めることから、市販外用医薬品における皮膚安全性の予測手段になり得ることが示唆された。
ガイドライン等の開発
本研究班でバリデーションを行ってきた培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL24がIn Vitro 皮膚刺激性試験として、2013年7月にOECD テストガイドライン No.439に追記された。光毒性試験代替法ROSアッセイは、本研究班でのバリデーションを経て、2014年 ICH S10光毒性試験ガイダンスに掲載された。
その他行政的観点からの成果
本研究班の班員を中心に検討してきた「皮膚感作性試験代替法及び光毒性試験代替法を化粧品・医薬部外品の安全性評価に活用するためのガイダンス」が平成24年(2012年)4月26日に、「皮膚感作性試験代替法(LLNA:DA、LLNA:BrdU-ELISA)を化粧品・医薬部外品の安全性評価に活用するためのガイダンス」が平成25年5月30日に、厚生労働省医薬食品局審査管理課より、事務連絡として公表された。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
38件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
154件
学会発表(国際学会等)
44件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kojima, H., Takeyoshi, M., Sozu, M., et al.
Inter-laboratory validation of the modified murine local lymph node assay based on 5-bromo-2’-deoxyuridine incorporation
Journal of Applied Toxicology , 31 (1) , 63-74  (2010)
原著論文2
Naoki Yamamoto & Koji Hirano & Hajime Kojima, et al.
Cultured human corneal epithelial stem/progenitor cells derived from the corneal limbus
In Vitro Cell.Dev.Biol.-Animal , 46 , 774-780  (2010)
原著論文3
Kano, S., Todo, H., Furuki, K., et al.
Comparison of Several Reconstructed Cultured Human Skin Models by Microscopic Observation: Their Usefulness as an Alternative Membrane for Skin in Drug Permeation Experiments
Altern. Animal Test. EXperiment , 16 (2) , 51-58  (2011)
原著論文4
Seto, Y., Hosoi, K., Takagi, H., et al.
Exploratory and Regulatory Assessments on Photosafety of New Drug Entities
Current Drug Safety , 7 , 140-148  (2012)
原著論文5
Onoue S, Hosoi K, Wakuri S. et al.
Establishment and intra-/inter-laboratory validation of a standard protocol of reactive oxygen species assay for chemical photosafety evaluation.
Journal of Applied Toxicology  (2012)
原著論文6
Kojima, H., Ando, Y., Idehara, K., et al.
Validation Study of the In Vitro Skin Irritation Test with the LabCyte EPI-MODEL24
Altern Lab Anim. , 40 , 1-18  (2012)
原著論文7
Kojima H, Hayashi K, Sakaguchi H, et al.
Second-phase validation study of short time exposure test for assessment of eye irritation potency of chemicals.
Toxicology In Vitro , 27 (6) , 1855-1869  (2013)
原著論文8
Kojima H, Katoh M, Shinoda S, et al.
A catch-up validation study of an in vitro skin irritation test method using reconstructed human epidermis LabCyte EPI-MODEL24
Journal of Applied Toxicology  (2013)
原著論文9
Onoue S, Kojima H.et al.
Intra-/inter-laboratory validation study on reactive oxygen species assay for chemical photosafety evaluation using two different solar simulators.
Toxicology In Vitro , 28 (4) , 515-523  (2013)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,700,000円
(2)補助金確定額
7,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,848,661円
人件費・謝金 135,900円
旅費 2,089,643円
その他 1,626,462円
間接経費 0円
合計 7,700,666円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-