ニュートリゲノミクス解析に基づく機能性食用油の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201234036A
報告書区分
総括
研究課題名
ニュートリゲノミクス解析に基づく機能性食用油の安全性に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 由紀子(独立行政法人国立循環器病研究センター 病態ゲノム医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩井 直温(独立行政法人国立循環器病研究センター 病態ゲノム医学部)
  • 大原 直樹(金城学院大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,854,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、特定保健用食品(トクホ)の植物油全3品目の有効性、安全性について解析評価するものである。それぞれ、生活習慣病モデル動物およびその起源動物(正常動物)に植物油を摂取させ、生活習慣病患者あるいは予備軍のヒトの食生活指導、健常者への予防指導のための情報源を得ることを目的とした。本研究の1年目である今年度(平成24年度)は、脳卒中モデルラットを用いた。
研究方法
トクホの植物油であるヘルシーコレステ(HR)、ヘルシーリセッタ(HC)および健康サララ(KS)を用いた。HRは中鎖脂肪酸強化、HCおよびKSは植物ステロール強化植物油である。これらを、AIN93G精製粉末飼料の脂肪源である大豆油(7w/w%含有)と置き換える配合の飼料を準備するために、AIN93G無脂肪精製粉末飼料に、7w/w%HR、HCまたはKSを添加した特殊飼料を調製した(それぞれHR、HCまたはKS飼料)。また対照(Cont)飼料としてAIN93G精製飼料を用いた。各飼料の脂肪酸組成およびステロール類含量を測定した。
雄性SHRSPおよびWKYラットを用いた。収縮期血圧および体重をもとに各系統とも4群に分け、それぞれCont群、HR群、HC群およびKS群とし、各飼料を4週間自由摂取させた。摂取期間中は体重、血圧測定、尿検査を行い、摂取期間終了後は、剖検、器官重量測定、サンプル採取、血液生化学検査、肝臓トランスクリプトーム解析を行った。
凍結保存したSHRSPの精巣をリン酸緩衝液中に分散させてステロイド類をエーテル抽出し、常法に従い精製した。サンプル中のステロイド(プレグネノロン、アンドロステンジオンおよびテストステロン)を同定した。
結果と考察
HRを添加した飼料には、Cont飼料には含まれない中鎖脂肪酸(カプリル酸およびカプリン酸)が含まれていた。また、植物ステロール強化を謳っていないが、含有する植物ステロール量はCont飼料中の約2倍であることがわかった。HCおよびK飼料では植物ステロールの含量が多く、β-シトステロールの割合が高かった。
これらを4週間SHRSPおよびWKYラットに自由摂取させると、全動物の一般状態に変化はなく、体重および摂餌量に群間差は認められなかったことから、これらの植物油には、一般状態を悪化させるような作用が認められなかった。
「身体に脂肪がつきにくい」HRを添加したHR飼料の摂取は、SHRSPおよびWKYラットにおいて体重および内臓脂肪(精巣周囲)に影響を与えなかった。これらに対する影響を調べるには摂取期間延長や高脂肪食負荷を与える等の条件を変えることが必要かもしれないが、肥満状態ではない動物の体重を減少させる等の有害作用は無いことが明らかとなった。
「コレステロールが高めの方に適する」HCまたはKSを添加したHC飼料またはKS飼料の摂取は、SHRSPでHDLコレステロールレベル上昇と、それに伴う総コレステロールレベルの上昇を誘導した。SHRSPはWKYラットと比較しコレステロール値が低いが、動脈硬化の危険度を示す動脈硬化指数(AI)は高かった。SHRSPのHC群のAIは、Cont群と比較して低値を示した。このことから、HC摂取は、動脈硬化の危険度を低減させる作用を有することが示唆された。
SHRSPのHCおよびKS群の摂取第3週以降の拡張期および平均血圧が高くなった。KS群の心重量が増加したこととの関連、およびSHRSPのHCおよびKS群、WKYラットのHRおよびHC群での相対肝臓重量の増加に関しては、進行中の解析結果とあわせて次年度に報告する。
SHRSPの肝臓のトランスクリプトーム解析では、Cont群と比較して、発現が4倍以上変化した遺伝子数は、群によって大きな違いがあることが分かった。現在詳細な解析を進めている。
SHRSPのHC群の精巣中プレグネノロンは、Cont群と比較して上昇した。またHR群およびKS群でもプレグネノロンの上昇傾向が認められた。さらにこれら3群とも、アンドロステンジオンおよびテストステロン濃度は上昇傾向を示したことから、ステロイドホルモン代謝への影響についてはさらに検討が必要である。
結論
SHRSPおよびWKYラットにトクホの植物油3種(HR、HCおよびKS)を7w/w%含有する飼料を4週間摂取させたところ、これまでに得られた結果からは顕著な有害作用が認められないことが明らかとなった。また、WKYラットと比較して、動脈硬化の危険度を表すAI値が高いSHRSPに対してHCを摂取させると、AI値が低くなることがわかった。一方、SHRSPで認められたHCおよびKS摂取第3週以降の拡張期・平均血圧の上昇、相対肝臓重量の増加、精巣ステロイドホルモン代謝への影響等に関しては、現在進行中の解析の結果と合わせて次年度にまとめる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201234036Z