野生鳥獣由来食肉の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201234021A
報告書区分
総括
研究課題名
野生鳥獣由来食肉の安全性確保に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高井 伸二(北里大学 獣医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 門平 睦代(帯広畜産大学 畜産フィールド科学センター)
  • 青木 博史(日本獣医生命科学大学 獣医学部)
  • 村田 浩一(日本大学生物資源科学部 動物資源科学科)
  • 前田 健(山口大学 共同獣医学部)
  • 小野 文子(社団法人 予防衛生協会)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
野生動物肉の利用に関しては、重要な3つの課題がある。第1はサーベイランスである。野生動物の病原体保有状況を把握することは容易ではない。野生動物の生態、分布密度、構成及び特性を理解し、得られたサンプルから母集団の状況を推定する必要がある。汚染状況公表し、危機感のみを煽ることは問題の解決にはならない。このためにはサーベイランスモデルを作成する疫学者や野生動物生態学者の助けがいる。第2は人への危害や農作物の被害を減少させ、適正な野生動物数を維持すること(sustainable hunting)である。生態系や野生動物の保護・保全と、リスク回避措置としての野生動物捕獲・駆除のバランスを取らなければ地方行政は成立しない。行政経験者、野生動物専門家の助けが必要となる。第3は野生動物肉の安全性の確保及び非可食部分の廃棄による環境汚染の防止策である。推定では約25万頭の鹿、10万頭の猪が毎年捕獲されている。しかし、食用に利用されるのは1割以下に過ぎない。ほとんどは埋却・遺棄されている。これは野生動物肉を適正に利用するためのシステムが整っていないためである。
本研究ではトップダウン方式で調査、研究を進める。すなわち野生動物の生態学者、各野生動物の専門家、行政経験者、疫学者、診断の専門組織などをチームとし、現地調査やアンケート調査を通じて全体像を把握する。行政のネットワークを利用し、モデル地域で野生動物の採材、病原体保有状況の調査、疫学的背景に基づく科学的な野生動物由来肉のリスク評価を行い、適正なリスク管理措置をガイドライン化し、野生動物由来の食肉の安全性と質の保証を確保することを目指す。
研究方法
リスクプロファイルの作成と検証を主目的とする。1)リスクシナリオ作成。対象動物は猪、鹿、及び雉などの野鳥。感染病原体としては23年度3)のデータを利用。例えば猪では、ウイルスとしてE型肝炎、ブタインフルエンザ等、細菌はサルモネラ、レプトスピラ、ブルセラ、エルシニア、カンピロバクタ―、クリプトスポリジウム等、寄生虫はトキソプラズマ、トリヒナ、住肉胞子虫等。疫学者を中心に感染経路、暴露リスク、感染・発症率等のリスクシナリオを作成する。2)平成23年度の4)の実績をベースに、疫学調査方法の検討を進める。具体的には北海道、神奈川県、長野県、山口県等を中心に、パッシブサーベイランスとしての野生動物死亡例調査(general surveillance)及び、アクティブサーベイランスとしてハンターからの材料入手(target surveillance)を進める。サンプリング方法、規模、診断法などを確立し、リスクシナリオの検証を進める。3)現在、野生動物の病原体診断を専門に行う機関は存在しない。サル類を対象にウイルス、細菌、寄生虫の検査実績を有する機関に野生動物病原体検査センター(wildlife serum reference center)としての機能を果たせるよう、基盤技術開発、技術移転を行う。4)この分野に関して経験の豊富な食品医薬品研究所や環境省の協力を得て、本研究で得られた成果をデータベースとして保存するための検討を行う。
結果と考察
平成24年度に得られた研究成果について不用意に社会へ公表することは、特に人獣共通感染症の起因となる病原微生物を取り扱っていることから風評被害なども想定されるので、行政機関などとも連携して、疫学的背景に基づく科学的な野生動物由来肉のリスク評価を行い、適正なリスク管理措置をガイドライン化し、野生動物由来の食肉の安全性と質の保証を確保することを目指しながら、成績の適切な社会へのフィードバックを計画している。
結論
平成24年度は、平成23年度に引き続いて野生動物の生態学者、各野生動物の専門家、行政経験者、疫学者、診断の専門組織のチームが、7つの項目について現地調査やアンケート調査を通じて全体像を把握し、イノシシ・シカの検体からの細菌・ウイルス・寄生虫の検索並びに病理学的検索、病原体診断および抗体測定法の開発、海外の衛生管理規制の調査、した。24 年度計画はほぼ達成できた。3回の班会議において、年次計画、中間報告などで進捗状況を確認した。平成25年度は更に一段レベルアップした現地における病原体保有状況の調査を実施する。最終的に疫学的背景に基づく科学的な野生動物由来肉のリスク評価を行い、ガイドラインを作成し、適正なリスク管理措置を提言する。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201234021Z