ナノ食品の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201234017A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ食品の安全性確保に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 総合評価研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノマテリアルの食品や食品容器包装への応用としては、シリカ、銀+無機微粒子、ナノクレイ、白金ナノコロイドなどが現在使用されている。そのうち、ナノクレイは国内で年間250トン使用されていると報告されており、銀+無機微粒子の年間50トンよりも使用量も多いがその毒性影響についての情報は限られている。本研究では、ナノクレイの毒性影響の有無について検討することを目的としている。
研究方法
研究方法としては、1)ナノクレイのラット13週間反復投与毒性試験、2)毒性試験を実施したナノクレイ粒子のサイズ、形状、分散および組成について走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡による観察および3)食品・食品容器分野におけるナノクレイの用途調査による暴露評価のための基礎的情報収集を実施した。
結果と考察
1)については、H23年に動物試験の終了した天然ナノクレイであるベンゲルフレークおよびベンゲルクリアについて、病理組織学的検査を実施し、最終評価を行った。飼料中濃度0.04%、0.2%、1.0%及び5.0%のベンゲルフレークおよびベンゲルクリアをF344雌雄ラットに13週間反復投与した結果、いずれも投与に関連した毒性影響は認められず、本試験条件下における無毒性量(NOAEL)は雌雄ともに5.0%(ベンゲルフレークの雄:4.01 g/kg/day、雌:3.97 g/kg/day、ベンゲルクリアの雄:3.91 g/kg/day、雌:3.96 g/kg/day)と判断した。また、より安定的・均一な物性を示す精製物と考えられる2種の合成および精製ナノクレイである、スメクトンおよびクニピアについてもラット13週間反復投与試験を実施している。現時点では、経過中一般状態には著変はみられていないが、体重増加について、雄ではいずれの群にも群間に差異は見られないが、雌では7週時点において、スメクトンは0.2% 以上、クニピアは1% 以上投与群において有意(p<0.01)な高値を示している。摂餌量の増加は雌雄とも5%以下であり、体重あたりのカロリー摂取はほぼ同等であったにもかかわらず、体重増加の亢進を誘導していたことになり、飼料の吸収効率などに影響している可能性が示唆される。今後、投与を継続し、全身諸臓器の毒性影響について検討を行うことにより、安全で有効な使用を進める上で重要なデータが得られると考える。2)については、スメクトンおよびクニピアについて、粒子サイズ、形状、分散および組成について電子顕微鏡を用いて検討した。走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡による解析から、クニピアおよびスメクトンの凝集は見られず、単体で存在していた。粒径は、最小値は共に10μmであったが、最大値と平均値は、飼料との混合により原体よりも低下しており、挫滅により粉砕されると考えられた。全体にクニピアよりもスメクトンの方が、小さい傾向にあったが、試料によっても巾があると考えられた。また、クニピアは層状に重なった板状構造を示し、スメクトンはスポンジ状の構造をした小型球状構造を示しており、その壁構造の厚さは、数nm~10nm であった。さらに、クニピアは縁がめくれあがる構造が観察された。今回実施した化学組成の検討では、クニピアはケイ素についでアルミニウムが多く、スメクトンはケイ素についでマクネシウムが多く含まれており、組成が異なっていた。3)については、食品包装容器材に係わるガスバリア技術の現状、食品分野(容器、農薬、飼料、健康食品)の実態調査と対応する食品分野におけるナノクレイの使用状況を取り纏めた。食品包装として使用されているガスバリア性軟包装フィルムのうち、ナノクレイが使用されている製品の割合は1.3%程度であり、飲料用PETボトル(172.1億本)のうち、ナノクレイが使用されているのは0.06%程度で、使用量はそれほど高くない状況であった。食品添加物の清澄剤としてナノサイズ成分も含まれると考えられるベントナイトの使用においては、製造過程で除去されることや食品衛生法における残留基準値(0.50%未満)を考慮すると曝露の可能性は低いと考えられた。
結論
これまでのところ、食品添加物規格のナノクレイについては、健康上の問題となる毒性は見られない可能性が高いと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201234017Z