食品添加物の規格の向上と使用実態の把握等に関する研究

文献情報

文献番号
201234003A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の規格の向上と使用実態の把握等に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽二(金沢大学学際科学実験センター トレーサー情報解析分野)
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部 )
  • 大槻 崇(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
6,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食の国際化により、食品の安全性確保のために重要性を増した、食品添加物の規格の向上及び使用実態の把握を目的として、以下の研究を行った。
アルギン酸類の食品添加物公定書収載の定量法には、水銀を用いた装置が使用されていることから、水銀を排除した試験法の検討を行った。赤外スペクトル(IR)は食品添加物の確認試験として有用であることから、再現性のある標準IRについて検討した。絶対定量法である定量NMR法(qNMR)は、分析値の国際単位系(SI)へのトレーサビリティが確保された絶対定量法であるため、食品添加物の定量への適用性について検討した。また、香料の安全性評価に基づいた規格設定のため、構造活性相関手法を基にした遺伝毒性予測研究を行った。さらに、食品添加物並びに香料化合物の使用量調査及び摂取量の推定、食品添加物と食品成分との複合作用による副生成物の解明、諸外国の香料規制に関わる調査研究を行った。
研究方法
1)アルギン酸類の定量法:USPで用いられている水銀バルブ不使用の装置を用いた蒸留-滴定法、ナフトレゾルシノール法(比色法)及び加水分解物のHPLCにより定量を行った。2)赤外吸収スペクトル(IR)法:減衰全反射(ATR)法により液体及び固体試料の測定を行った。3)定量NMR法(qNMR):qNMRを用い、アゾキシストロビン等の定量を行った。4)香料化合物の遺伝毒性予測に関する研究:フラクチュエーションAmes試験(FAT)の結果に基づき、構造活性相関手法(SAR)による遺伝毒性予測の妥当性を調べた。5)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量推定:食品添加物製造(輸入)業者を対象に指定添加物及び既存添加物の使用量に関する調査を行った。6)香料化合物の使用量調査等:平成23年度の使用量調査結果を基に、欧米で同時期に実施した調査結果と比較、検討・考察した。7)諸外国の香料規制に関わる調査研究:各国・地域の香料の表示等の調査を行った。8)次亜塩素酸Na等処理による副生成物の解明:生鮮食品を次亜塩素酸Na及び次亜塩素酸水で処理し、GC/ECD法を用いてハロ酢酸の分析を行った。
結果と考察
1)アルギン酸類の定量法:USPの装置で、蒸留時間を3時間とした結果、いずれの試料についても良好な結果が得られた。比色法については、水不溶性のアルギン酸塩には適用できず、HPLCでは、試料を完全に単糖まで酸分解することが困難であり、得られた含量は非常に低いものであった。2)赤外吸収スペクトル(IR)法:固体試料や揮発性の液体試料をATR法により測定する場合に生じる問題点を明らかにした。3)定量NMR法(qNMR):アゾキシストロビン等の定量について、真度、精度、直線性を評価した結果、いずれも良好であり、有効な分析法であることが判明した。4)香料化合物の遺伝毒性予測に関する研究:SARの予測結果が一つもしくは二つ陽性だった43品目についてFATを実施した結果、SARの陽性判定のFATとの一致率(感度)は、DEREK、MCase、AWORKSの順に11%、10%、4%、陰性判定のFATとの一致率(精度)は同じく、81%、77%、70%と算出され、予測性を上げるためにはSARのモデルのアラートについてカスタマイズの必要があると考えられた。5)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量推定:指定添加物については、平成22年度を調査対象に再・追加調査を実施し、既存添加物については、平成23年度を調査対象として、全国453箇所の事業所に調査票を送付した。6)香料化合物の使用量調査等:日米欧の中では、日本で使用されている品目数が最も多く、総使用量に関しては、日本が一番少ないことが明らかとなった。また、比較的大量に使用される化合物の傾向は三極とも類似していることがうかがえた。7)諸外国の香料規制に関わる調査研究:各国・地域の香料の表示(製品への表示、最終食品への表示、アレルギー表示、GMO表示)について各国の情報を得た。8)次亜塩素酸Na処理による副生成物の解明:次亜塩素酸Naによる生鮮食品の殺菌処理ではジクロロ酢酸やトリクロロ酢酸の生成が見られたが、次亜塩素酸水によるカット野菜の殺菌処理では副生成物は検出されなかった。
結論
アルギン酸の定量法の改良、IR及びqNMRの検討並びに香料化合物の遺伝毒性予測に関する研究は食品添加物の規格の向上に寄与し、食品添加物摂取量調査、香料化合物の使用実態調査、諸外国の香料規制に関わる調査及び次亜塩素酸Na処理による副生成物の解明は食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、食品の安全の確保に資すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201234003B
報告書区分
総合
研究課題名
食品添加物の規格の向上と使用実態の把握等に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽二(金沢大学学際科学実験センター トレーサー情報解析分野)
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部 )
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部 )
  • 大槻 崇(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食の国際化により、食品の安全性確保のために重要性を増した、食品添加物の規格の向上及び使用実態の把握を目的として、以下の研究を行った。
アルギン酸類の食品添加物公定書収載の定量法には、水銀を用いた装置が使用されていることから、水銀を排除した試験法の検討を行った。赤外スペクトル(IR)は食品添加物の確認試験として有用であることから、再現性のある標準IRについて検討した。絶対定量法である定量NMR法(qNMR)は、分析値の国際単位系(SI)へのトレーサビリティが確保された絶対定量法であるため、食品添加物の定量への適用性について検討した。また、香料の安全性評価に基づいた規格設定のため、構造活性相関手法を基にした遺伝毒性予測研究を行った。さらに、食品添加物並びに香料化合物の使用量調査及び摂取量の推定、食品添加物と食品成分との複合作用による副生成物の解明、諸外国の香料規制に関わる調査研究を行った。
研究方法
1)アルギン酸類の定量法:USPで用いられている水銀バルブ不使用の装置を用いた蒸留-滴定法、ナフトレゾルシノール法(比色法)及び加水分解物のHPLCにより定量を行った。2) IR法:減衰全反射(ATR)法により液体及び固体試料の測定を行った。3)定量NMR法(qNMR):qNMRを用い、アゾキシストロビン等の定量を行った。4)香料化合物の遺伝毒性予測に関する研究:フラクチュエーションAmes試験(FAT)の結果に基づき、構造活性相関手法(SAR)による遺伝毒性予測の妥当性を調べた。5)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量推定:食品添加物製造(輸入)業者を対象に指定添加物及び既存添加物の使用量に関する調査を行った。6)香料化合物の使用量調査及び摂取量に関わる調査研究:記入アンケート方式により調査を実施し、欧米で同時期に実施した調査結果と比較、検討・考察した。7)諸外国の香料規制に関わる調査研究:当該国政府・省庁の調査報告書等を参考に各国・地域の香料規制の調査を行った。8)次亜塩素酸Na等処理による副生成物の解明:生鮮食品を次亜塩素酸Na及び次亜塩素酸水で処理し、副生成物の分析を行った。
結果と考察
1)蒸留-滴定法は蒸留時間の延長により良好な結果が得られたが、比色法は水不溶性の試料には適用できず、HPLCで得られた含量は非常に低いものであった。2)香料化合物45品目の確認試験のための測定法を検討し標準IRを設定した。また、ATR法についてはそのATR法の有用性を示したが、ATR法による固体試料や揮発性の液体試料のIR測定の際に生じる問題点も明らかにした。3)食品添加物5品目の定量法にqNMR法を適用し、真度、精度、直線性を評価した結果、いずれも良好であり、有効な分析法であることが判明した。4)SARにより陰性と予想された検体についてのFATの一致率は高かったが、複数のSARで陽性と予想された検体での一致率は低く、複数のソフトを使用しても精度は上がらないという結論を得た。5)指定添加物については第9生産量統計調査を基にした摂取量調査をまとめ、第10回調査を行い、既存添加物については第4回生産量統計調査をまとめ、第5回調査を開始した。6)香料化合物数は前回調査に比べ減少したが、使用量は増加した。日米欧の中では、日本で使用されている品目数が最も多く、総使用量に関しては、日本が一番少ないことが明らかとなった。また、比較的大量に使用される化合物の傾向は三極とも類似していることがうかがえた。7)各国・地域の香料の規制(定義、主剤、副剤、抽出溶媒、表示)について各国の情報を得た。8)次亜塩素酸Na処理の副生成物の量は食品の種類により異なっており、副生成物の経口暴露量を推計したところ、いずれも耐容一日摂取量若しくは実質安全量を下回ることが確かめられた。また、次亜塩素酸水処理では副生成物は検出されなかった。
結論
アルギン酸塩類定量法の代替法として、USP法の改変法による定量が適用可能であることを明らかにした。IR法については確認試験の標準IRを設定する一方、ATR法を添加物の確認試験に利用するためには、品目毎に測定条件の調査が必要であると結論した。定量NMR法については、定量用標準物質への適用に向けた基礎的データが得られた。香料化合物の遺伝毒性予測は、一つのSARのソフトに絞り、香料を対象にカスタマイズすることが効率よい安全性評価につながることが示唆された。これらの研究は、食品添加物の規格の向上に寄与するものであり、食品添加物摂取量調査、香料化合物の使用実態調査、諸外国の香料規制に関わる調査及び次亜塩素酸Na処理による副生成物の解明では食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、食品の安全の確保に資すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201234003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国際整合性が確保された分析法の構築を目指し、国際単位系へのトレーサビリティを確保した定量核磁気共鳴法(qNMR)の構築を目的として、食品添加物の規格試験用定量用標準物質の絶対定量について検討した。その結果、qNMRが規格試験用定量用標準物質の絶対定量法として実用的であることを見出した。また、確認試験として汎用されている赤外吸収スペクトル(IR)法について、日本国での規格基準向上のため、外国とは環境の異なる日本国において、再現性の良いIRを得るためのIRの測定法を確立し、標準IRを作成した。
臨床的観点からの成果
臨床的研究は行っていないため、成果はない。
ガイドライン等の開発
フルジオキソニルの指定の際、規格試験用定量用標準物質の純度分析法にqNMRが初めて採用された(平成23年8月31日 厚生労働省告示第307号)。
その他行政的観点からの成果
本研究で作成された46品目の標準赤外スペクトルは第9版食品添加物公定書に採用されることが、第6回 第9版食品添加物公定書検討会において了承された。また、生産量統計を基にした食品添加物の摂取量の推定については、食品安全委員会添加物専門調査会における添加物に関する食品健康影響評価の際の参考資料として活用されている。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kubota H., Sato K., Sasaki N., Kawamura Y., et al
Formation of volatile halogenated compounds in fresh-cut cabbage treated with sodium hypochlorite
Jpn. J. Food Chem. Safety , 19 (2) , 94-103  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201234003Z