いわゆる「健康食品」と医薬品との併用に関わる安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201234002A
報告書区分
総括
研究課題名
いわゆる「健康食品」と医薬品との併用に関わる安全性評価に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
永田 清(東北薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松永 民秀(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 )
  • 細川 正清(千葉科学大学 薬学部 )
  • 頭金 正博(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
19,635,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康食品は副作用がないとの先入観から、毎日一定量、場合によっては過剰に摂取することがある。そのために、食事として取る食物中の化学物質よりも、常に多量の化学物質が体に取り込まれることになり、その結果、医薬品と相互作用を起こす可能性が高くなることが懸念される。一方、食品による医薬品との相互作用は、薬力学的に起こるものより薬物代謝酵素が関与するものの方が多く発生すると考えられている。しかしながら、医薬品とその他の多くのいわゆる「健康食品」との薬物代謝酵素が関わる相互作用についての情報はほとんどない状態である。従って、これらの情報を医療の現場に提供することが本研究の目的とである。
研究方法
平成24年度に行った研究
① 薬物代謝酵素活性阻害および誘導能の測定と定量化
② ヒトiPS細胞の肝・腸管上皮細胞への分化の検討
③ ヒトiPS細胞から肝に分化した細胞における薬物代謝酵素誘導評価
④ 培養細胞を用いた細胞障害の評価
⑤ 病院カルテを用いた健康食品の使用状況の後ろ向き調査
⑥ 定量化された薬物代謝酵素活性阻害および誘導のデータベースの構築
結果と考察
健康食品による薬物相互作用の調査について、アンケート調査結果から243品目の健康食品の使用が確認されたので、これらの薬物代謝活性阻害および誘導の評価を行った。酵素誘導は約200品目の製品の検討を行ったが、CYP3A4とCYP1A1の誘導について予測以上に多くの健康食品が酵素誘導(CYP3A4とCYP1A1を合わせると40%)を引き起こすことが明らかとなった。誘導の強さには差が認められたが、CYP3A4で1 μMリファンピシン濃度が示す誘導よりも強い誘導が認められたダイエット健康食品(ダイエットパワー、フォースコリー(以上DHC)、春秋ウコン粒およびガジュツパウダーは、ヒトにおいて相互作用が起こることが予測された。また、CYP1A1の誘導については、4 μMオメプラゾール濃度が示す誘導よりも強い誘導が認められたLutin, イチョウおよびLife pakは、ヒトにおいて相互作用が起こることが予測された。また、マルチビタミン剤でも誘導が認められ、含有成分には大きな差がないにもかかわらずその程度は商品間で大きく異なっていた。恐らく、ビタミンの含有量あるいはそれ以外の化合物によって異なったと予測された。一方、細胞毒性を示す健康食品が調べた製品の20%において見いだされた。特にダイエットを目的とした健康食品やグルコサミンにおいて強い細胞毒性が認められ、今後の詳細の検討が必要である。
 iPSから肝臓への分化は、種々の幹細胞マーカータンパク質の発現から推測すると胎児肝細胞にまでは達したと考えられる。本研究において肝臓特異的転写因子を強制発現することにより薬物代謝活性を示す細胞の分化に成功した。特にHNF6とHNF4の共同発現によりCYP3A4およびCYP1A2の高い発現が認められた。しかし、発現の増加の認められないP450分子種も存在し、さらなる検討が必要である。小腸への分化についても成功したが、高い薬物代謝活性を有する細胞への分化にはさらなる工夫が必要であると考えられた。本研究において行った健康食品の使用調査、研究結果および文献調査はデータベース化して、ホームページに掲載することを想定し準備をしてきたが、本研究班の中で健康食品の製品名をそのまま公開することは問題にはならないかとの議論がなされた。特に細胞障害のある製品については、このまま公表するとメーカー側からのクレームが予測される。ホームページへの掲載と公開については、慎重に検討していきたい。
結論
アンケート調査結果から243品目の健康食品の使用が確認されたので、これらの薬物代謝活性阻害および誘導の評価を行った。酵素誘導については現在までに約200品目の製品の評価を行った。その結果、程度に差はあるものの約40%の商品に誘導が認められた。また、約20%の製品において細胞障害が観察された。ヒトiPS細胞の肝・腸管上皮細胞への分化にいては、薬物代謝活性を有する肝細胞への分化に成功した。さらに、小腸の細胞(腸管上皮細胞)に近い機能を有する細胞への分化にも世界で初めて成功した。また、本研究成果の公開するためのデータベース化の基礎構築が完了した。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

文献情報

文献番号
201234002B
報告書区分
総合
研究課題名
いわゆる「健康食品」と医薬品との併用に関わる安全性評価に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
永田 清(東北薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松永 民秀(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 )
  • 細川 正清(千葉科学大学 薬学部 )
  • 頭金 正博(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、いわゆる「健康食品」の使用実態を調査した上で、申請者らが構築した薬物代謝酵素活性阻害及び酵素誘導評価法を用いて、薬物相互作用を同時に評価するところにある。また、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)を肝細胞あるいは小腸内皮細胞に分化させ、より正確な薬物相互作用評価法の構築を目指すことである。
研究方法
行った研究方法
① アンケート及び文献調査によるいわゆる「健康食品」のリスト作成
② 測定法及び定量化についてのプロトールの設定とハイスループット化した測定法の樹立
③ ヒトiPS細胞の肝・腸管上皮細胞への分化の検討
④ 病院カルテを用いた健康食品の使用状況の後ろ向き調査
⑤ 定量化された薬物代謝酵素活性阻害および誘導のデータベースの構築
結果と考察
アンケート調査は、1000名以上の健康食品の使用状況から、来局者の多くは健康食品の効果の有無には関わらず、日常的に健康食品を服用していることが明らかになり、健康被害の経験者は3%存在していた。しかしながら、薬局来局者を対象とした調査においては、アンケート回答者本人の主観的意見のみであるため、健康食品と医薬品との相互作用を十分に抽出できていない可能性が考えられた。そこで、信州大学医学部との共同研究として、入院患者の年齢、性別、原疾患名、持参した健康食品名及び持参あるいは処方された医薬品名を抽出し、健康食品の使用との関わり調査を行った。 
健康食品による薬物相互作用の調査について、酵素誘導は約200品目の製品の検討を行ったが、予測以上に多くの健康食品が酵素誘導(CYP3A4とCYP1A1を合わせると40%)を引き起こすことが明らかとなった。誘導の強さには差が認められたが、CYP3A4で1 μMリファンピシン濃度が示す誘導よりも強い誘導が認められたダイエット健康食品は、全般に相互作用が起こることが示された(図5)。また、マルチビタミン剤でも誘導が認められ、含有成分には大きな差がないにもかかわらずその程度は商品間で大きく異なっていた。恐らく、ビタミンの含有量あるいはそれ以外の化合物によって異なったと予測された。一方、細胞毒性を示す健康食品が調べた製品の20%において見いだされた(図5)。特にダイエットを目的とした健康食品やグルコサミンにおいて強い細胞毒性が認められ、今後の詳細の検討が必要と思われる。
iPSから肝臓への分化は、肝臓特異的転写因子を強制発現することにより薬物代謝活性を示す細胞の分化に成功した。しかし、発現の増加の認められないP450分子種も存在し、さらなる検討が必要である。小腸への分化についても成功したが、高い薬物代謝活性を有する細胞への分化にはさらなる研究が必要であった。本研究において行った健康食品の使用調査、研究結果および文献調査はデータベース化して、ホームページに掲載することを想定し準備をしてきたが、本研究班の中で健康食品の製品名をそのまま公開することは問題にはならないかとの議論がなされた。特に細胞障害のある製品については、このまま公表するとメーカー側からのクレームが予測される。ホームページへの掲載と公開については、慎重に検討していきたい。
結論
アンケート調査結果から243品目の健康食品の使用が確認されたので、これらの薬物代謝活性阻害および誘導の評価を行った。酵素誘導については現在までに約200品目の製品の評価を行った。その結果、程度に差はあるものの約40%の商品に誘導が認められた。また、約20%の製品において細胞障害が観察された。これらをデータベース化して公開できれば、薬物の相互作用を回避するための貴重な情報を提供できることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201234002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究において、ヒトiPS細胞に間特異的胎児肝あるいはより成人の機能に近い肝細胞の作成に成功した。本年度はこの細胞に肝臓特異的な転写因子を導入することで、一部の薬物代謝活性を示すことに成功した。また小腸の細胞(腸管上皮細胞)に近い機能を有する細胞への分化についても、本研究にて世界で初めて成功し、その内容は論文として発表した。
臨床的観点からの成果
本年度は、薬物代謝酵素活性阻害について研究を進め、ダイエット系健康食品2種、ウコン系健康食品1種、コラーゲン系健康食品1種、にんにく系健康食品1種、その他(プロポリス含有)健康食品1種においてCYP活性の強い阻害および誘導が認められ,これらのCYPにより代謝される薬物との併用は、相互作用を引き起こすことが予測された。また、風邪やインフルエンザの予防に広く用いられている板藍根が、CYP3A4、CYP1A1およびCYP1A2を強く誘導することを明らかとした。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
共同通信社を通じて本研究内容は日経、産経および地方版の新聞等に紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
人工多能性幹細胞を肝細胞へ分化誘導する方法
詳細情報
分類:
特許番号: 2012-247010
発明者名: 松永民秀、岩尾岳洋、近藤祐樹、吉橋幸美
権利者名: 松永民秀
出願年月日: 20121119
特許の名称
人工多能性幹細胞を腸管上皮細胞へ分化誘導する方法
詳細情報
分類:
特許番号: 2013-036434
発明者名: 松永民秀、岩尾岳洋
権利者名: 松永民秀
出願年月日: 20130226

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kumagai T, Suzuki H, Sasaki T, et al.,
Polycyclic aromatic hydrocarbons activate CYP3A4 gene transcription through human pregnane X receptor
Drug Metab Pharmacokinet , 27 (2) , 200-206  (2012)
原著論文2
Sasaki T. Takahashi S, Numata Y, et la.,
Hepatocyte nuclear factor 6 enhances the expression of the CYP3A4 gene in hepatocyte-like cells differentiated from human induced pluripotent stem cells
Drug Metab Pharmacokinet , 28 (3) , 250-259  (2013)
原著論文3
Iwao T, Toyota M, Miyagawa Y, et la.,
Differentiation of human induced pluripotent stem cells into functional enterocyte-like cells using a simple method.
Drug Metab Pharmacokinet , 29 (1) , 44-51  (2014)
原著論文4
Kondo Y, Iwao T, Nakamura K, et la.,
8. An efficient method for differentiation of human induced pluripotent stem cells into hepatocyte-like cells retaining drug metabolizing activity
Drug Metab Pharmacokine , 29 , 237-243  (2014)
原著論文5
Kondo Y, Iwao T, Yoshihashi S,Kondo Y, Iwao T, Yoshihashi S, et la.,
7. Histone deacetylase inhibitor valproic acid promotes the differentiation of human induced pluripotent stem cells into hepatocyte-like cells.
PLoS On , 9 (e104010) , 1-11  (2014)
原著論文6
佐々木崇光、熊谷 健、佐々木 瞳、 その他
6. 調剤薬局来局者を対象とした健康食品の使用実態調査とその情報に基づいたCYP2D6活性阻害評価
医療薬学 , 40 , 488-499  (2014)
原著論文7
永田 清、熊谷 健、佐々木崇光
健康食品と医薬品の併用は薬物相互作用をおこす?
医薬品相互作用研究 , 38 , 23-30  (2014)
原著論文8
熊谷 健、佐々木崇光、佐藤 裕、その他
4. 培養細胞を用いた健康食品と医薬品との薬物相互作用の網羅的調査
東京都病院薬剤師会雑誌 , 64 , 14-22  (2015)
原著論文9
Sato Y, Sasaki T, Takahashi S, et la.,
3. Development of a highly reproducible system to evaluate inhibition of cytochrome P450 3A4 activity by natural medicines.
J Pharm Pharm Sci , 18 , 286-297  (2015)
原著論文10
Inami K, Sasaki T, Kumagai T, et la.,
2. Simultaneous evaluation of human CYP3A4 and ABCB1 induction by reporter assay in LS174T cells, stably expressing their reporter genes.
Biopharm Drug Dispos , 36 , 139-147  (2015)
原著論文11
Kumagai T, Aratsu Y, Sugawara R, et la.,
ndirubin, a component of Ban-Lan-Gen, activates CYP3A4 gene transcription through the human pregnane X receptor.
Drug Metab Pharmacokinet , 31 , 139-145  (2016)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2016-07-29

収支報告書

文献番号
201234002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,500,000円
(2)補助金確定額
25,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,151,539円
人件費・謝金 9,300円
旅費 1,963,690円
その他 3,510,481円
間接経費 5,865,000円
合計 25,500,010円

備考

備考
10円は利息である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-14
更新日
-