歯科医療機関における効果的な院内感染対策の促進に関する研究

文献情報

文献番号
201232051A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科医療機関における効果的な院内感染対策の促進に関する研究
課題番号
H24-医療-指定-044
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
泉福 英信(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 高柴正悟(岡山大学大学院歯学研究科・歯周病態学)
  • 苔口 進(岡山大学大学院歯学研究科・口腔微生物学)
  • 小澤寿子(鶴見大学歯学部・歯内療法学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科医療は、治療の際の患者との近接、唾液血液の飛び散りなどから病原体に曝されるリスクが高いためスタンダードプレコーションを徹底して行う必要がある。しかしスタンダードプレコーションの理解率は、一般開業歯科医師で30%前後と低く不十分な状態である。全ての歯科医師に対応できるスタンダードプレコーションを導入させることは急務である。そこで本研究は、今までの研究により構築された院内感染防止プログラムをいかに普及させていくかを課題とし、よりよい歯科医療における院内感染対策システムを促進していくことを目的とし、以下の4つの研究班を組織して研究を行った。「一般開業歯科医療における院内感染対策の評価指標の標準化とその歯科医師への導入プログラムの作成」「歯科用チェアユニット内微生物汚染除去法システムを利用した院内感染対策促進のための検討」「病院歯科における院内感染対策促進のための科学的な評価指標の分析」「評価指標を利用した院内感染対策促進のための細菌学的検査の確立」。
研究方法
一般開業歯科医療における院内感染対策の評価指標の標準化とその歯科医師への導入プログラムの作成では、1年おきに某A県や2年おきに行っている某C県で行っている歯科医療における院内感染対策の意識調査において、この連続的な調査の分析を行うことによって、院内感染対策導入プログラム作製および普及のための参考となるデータおよび情報を得る。作製したプログラムを用いた研修会の開催、書籍化したプログラムおよび PDF fileの配布を行う。また院内感染対策のホームページを作製し院内感染対策導入プログラムのPDFファイル化やダウンロードシステムを構築する。微生物汚染除去法システムを搭載した歯科用チェアユニット内の微生物汚染除去状況の継続評価を行う。また、院内環境汚染状況の簡易検査法の確立の導入についての有効性について検討を行う。
結果と考察
継続的なアンケート調査により、スタンダードプレコーションの理解率は少しずつ上昇しているものの、自分歯科診療医院でのHIVのような感染者の歯科治療意欲が全く上昇していないことが明らかとなった。一方、自院以外では治療できる歯科医師が増えている。これは、自院における院内感染対策に自信がないことやHIV感染者の歯科治療を行うと他の患者が来なくなる恐れを意識していることが考えられる。スタンダードプレコーションの理解が防護用メガネの着用、マスクの着用、グローブの着用、ハンドピースの患毎の交換、スタッフへの院内感染対策の教育、院内感染対策マニュアルの作成、研修会への参加、B型肝炎ワクチンの接種、口外バキュームの設置と強く関連していた。スタンダードプレコーションを理解させることが、院内感染対策を普及する上で最も有効な手段であると考えられる。院内感染対策の導入率が低い歯科医師は、「年齢50歳以上」、「1日患者数35人以下」、「口腔外科を標榜しない」の歯科医師で、スタンダードプレコーションを理解させるとハンドピースの患毎の交換など改善することが明らかとなった。このような歯科医師を対象とした研修会においてスタンダードプレコーションを理解させることが重要となってくる。全国規模の統一された院内感染対策を進めていくためには、院内感染対策を教育できる指導者養成の講習会が必要である。院内感染対策の普及のためのホームぺージ、ホームページでは研究成果をPDF化し、情報を得やすいようにした。過酸化水素を用いた微生物汚染除去法システムを搭載した歯科用チェアユニットは、内部の微生物汚染を継続的に除去できることを確認した。また院内におけるタバコシバンムシの生息状況など新たな院内環境の指標の作製を検討した。これらを総合的に網羅し、指導者育成、ネットワークづくりを行うことにより、日本全体における院内感染対策のレベルアップを図って行くことができると考えられた。
結論
「年齢50歳以上」、「1日患者数35人以下」、「口腔外科を標榜しない」の歯科医師が、院内感染対策の導入が厳しいことから、教育を目的とした卒後研修会の開催が重要である。そのため、全国規模の研修会の開催システムの構築が必要である。そのためには、講師の育成を目的とした講習会の開催が重要であると考えられた。そのために各地区の歯科医師会、行政、大学とネットワークを構築し、研修システム構築することが重要である。ホームページや書籍化したプログラムおよび PDF fileの配布を利用した見る聞く機会を増やす努力も重要であることが明らかとなった。これらを踏まえ、院内感染対策を促進するためには、歯科医療機関を取り巻く社会に存在する社会的因子を考慮しながら,院内感染対策促進のための科学的な評価指標に関わる観点を整理していくことが重要だあることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232051Z