新人看護職員研修制度開始後の評価に関する研究

文献情報

文献番号
201232047A
報告書区分
総括
研究課題名
新人看護職員研修制度開始後の評価に関する研究
課題番号
H24-医療-指定-040
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 幾美(日本赤十字看護大学 看護学部看護学科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤川 謙二(日本医師会)
  • 西澤 寛俊(全日本病院協会)
  • 小松 満(全国有料診療所連絡協議会)
  • 洪 愛子(公益社団法人 日本看護協会)
  • 熊谷 雅美(済生会横浜市東部病院)
  • 西田 朋子(日本赤十字看護大学 看護学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、新人看護職員研修制度開始後の研修の実態及び研修に対する意識や実施上の課題を明らかにし、新人看護職員研修の更なる普及方法を検討することである。平成24年度は、①文献検討により、新人看護職員研修制度の現状および課題に関する研究の動向を把握する、②新人看護職員研修事業を行っている小規模医療機関等への面接調査により新人看護職員研修に関する課題を明らかにする。③病院、有床診療所の研修責任者、教育担当者、実地指導者、新人看護職員への質問紙調査により、研修体制、研修に対する意識、各役割での教育ニーズ、研修の成果等を明らかにすることを目的とした。
研究方法
 文献検討は医学中央雑誌Web版Ver.5データベースを用いて、2007年から2012年までの論文を対象に抽出された63文献のうち、新人看護職員研修制度の現状および課題について把握することのできた57件の文献を対象に、文献区分と概要をまとめた。面接調査は7施設から協力が得られ、研修責任者8名、新人看護職員8名のデータが得られた。そのうち、3施設については、看護部長2名と教育担当者1名に対して補足的なインタビューが行った。質問紙調査は無記名自記式質問紙による郵送調査とし、病院1800施設、有床診療所200施設を標本数とし、そこに勤務する①研修責任者、②教育担当者、③実地指導者、④新人看護職員を対象とした。
結果と考察
 文献検討の結果、研究報告7件、実践報告28件、解説22件であった。研究報告については、看護技術の評価として看護実践能力の評価や到達度を評価する文献があるものの、いずれも一施設における報告であり、全国調査はなかった。実践報告については、自施設における新人看護職員研修の現状を報告する文献が多く、特に新人看護職員研修ガイドライン策定後、新たに研修制度を構築した報告は、200床以下の施設に多かった。300床以上の施設では、すでに実施している新人看護職員研修について、ガイドラインを活用して見直しと改善を図った報告であった。解説については、2009年に新人看護研修制度の努力義務化した後、策定された「新人看護職員研修ガイドライン」の特徴について解説する文献が多かった。
 面接調査の結果、新人看護職員は新人看護職員研修制度が努力義務化されたことについて十分理解していない現状があったが、時期毎の細やかな技術等のチェックがあることを実感していた。研修責任者に対する面接では、「補助金がつくのであれば有効に活用すべきである」「技術の到達目標を共通認識しやすく評価しやすくなった」「研修に必要な物品購入がしやすい」「外部講師を呼びやすくなった」「外部研修に新人やスタッフを出しやすくなった」等の意見が聞かれた一方で、「技術到達目標は部署によっては使いにくい現状がある、自施設の現状を反映できない部分がある」など“到達目標や項目の妥当性”、“他の医療機関との連携”、「各役割に求められる能力をつけるための研修を自施設内だけで実施するのは人材的にも困難である」など、“指導者層のレベルアップやそのための研修実施に対する課題”についての意見等が聞かれた。さらに、今以上に施設や人材整備をしていくためには、努力義務ではなく義務化する方向で行政が検討を進める必要があるという意見もあった。
 質問紙調査については、回収数(回収率)は①研修責任者700件(35.0%)、②教育担当者725件(26.6%)、③実地指導者670件(24.5%)、④新人看護職員625件(22.9%)であった。研修責任者と教育担当者に対してはガイドラインが周知され、その内容の理解も進んでいたが、実地指導者や新人看護職員に対しては周知が十分ではなく、その内容の理解にも課題が残されていた。また、新人看護職員研修の努力義務化による影響として「新人看護職員の育成に関する看護職全体の意識」や「新人看護職員の育成に関する看護部以外の意識」、「備品」という観点でよくなったと評価している者が多かった。ガイドラインに対しては、到達目標の妥当性が高くない技術項目や経験できない技術項目もあり、見直しについての課題が示された。
結論
新人看護職員研修の努力義務化により、新人看護職員を育成することへの全職員の意識の向上や備品の整備を評価している者が多い一方で、ガイドラインの周知については課題が残されていることが明らかになった。また、到達目標が明記されたことで新人看護職員研修の実施や評価の基準が明確化し、質の担保に対する安心感が増したが、項目によっては実施頻度が少ない等の観点から到達目標およびガイドラインを見直す必要性が示唆された。この成果を受けて、「新人看護職員研修制度」をさらに普及させるための方略、「新人看護職員研修ガイドライン」の見直しに対して、具体的な提案をし貢献できるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201232047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,950,000円
(2)補助金確定額
4,950,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 379,692円
人件費・謝金 307,430円
旅費 256,440円
その他 3,756,926円
間接経費 250,000円
合計 4,950,488円

備考

備考
補助金に対して488円の利息がついたため、その分を支出している。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-