緩和ケア病棟における鍼灸治療介入の客観的評価ならびに緩和ケアチームにおけるシステム化に関する調査研究

文献情報

文献番号
201232031A
報告書区分
総括
研究課題名
緩和ケア病棟における鍼灸治療介入の客観的評価ならびに緩和ケアチームにおけるシステム化に関する調査研究
課題番号
H24-医療-一般-024
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
篠原 昭二(明治国際医療大学 鍼灸学部伝統鍼灸学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 糸井 啓純(明治国際医療大学 外科)
  • 神山 順(明治国際医療大学 外科)
  • 和辻 直(明治国際医療大学 鍼灸学部伝統鍼灸学教室 )
  • 斉藤 宗則(明治国際医療大学 鍼灸学部伝統鍼灸学教室 )
  • 関 真亮(明治国際医療大学 鍼灸学部伝統鍼灸学教室 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
H22,23年度に某病院緩和ケア病棟において鍼灸治療の介入研究を行なったところ、1)がん性疼痛およびモルヒネ等の使用によっても十分な鎮痛効果の得られない種々の疼痛に対して、85.7%のケースで明らかな鎮痛効果が得られた。さらに、2)易怒、不眠、消化器系愁訴、しびれ、倦怠感、浮腫等に対しても改善効果のあることが示唆された。また、3)通常の鍼刺激では治療後の発熱や愁訴の増悪を招来する可能性があることから、愁訴別の微少刺激による治療方式を考案し治療介入した結果、有害事象の発生率は0.2%と極めて低いことが明らかとなった。
 一方、介入した治療症例数は2年間で35例であり、治療症例を追加して、より客観的なデータを蓄積するためには研究の継続が不可欠である。また、これまで継続的に行ってきた臨床研究の成果を、教育ベースに乗せるためにより詳細なマニュアル化を図るとともに、その内容を臨床的に研修するプロセスが今後不可欠である。
研究方法
これまで行ってきた成果を踏まえて、担癌患者の緩和ケアとしての鍼灸治療の適応の可能性について明らかにする。近医市民病院緩和ケア病棟を中心として、外来および入院患者を対象として、癌性疼痛や抗癌剤の副作用の緩和など、鍼灸治療の応用可能な目的並びに具体的な治療法とその効果等について調査する。インフォームドコンセントの得られた症例に対して、鍼灸治療介入を行い、VASまたはNRS,FS等を用いた主観的評価ならびに、鎮痛剤や麻薬等のレスキューの使用状況等の投与量を比較することによって、鎮痛効果を比較する。また、個々の症例を通して、治療法のマニュアル化および症例を一定のフォーマットで要約して症例集積用サーバーに保存して閲覧が出来るように配慮する。
 なお、鎮痛効果を評価するための指標として、睡眠ポリグラフを用いて客観的評価を行いうるかどうか検討した。
結果と考察
平成24年6月から25年3月末までの間に15症例(男11名、女4名)を対象として、鍼灸治療介入の有用性の検討ならびに適応の評価を行った。平成22、23年度の調査結果において、鍼治療1回当たりの効果持続時間では1日以内が57%を占めたことから、週に4日間の治療介入を提供した。その結果、著効9例(31%)、やや有効5例(17.5%)、不明3例(10.3%)、無効3例(10.3%)であり、治療効果が得られた者は全体の62%となった。また、有害事象の発生頻度は15例に対する延べ175回の鍼治療のうち、2回(1.14%)であった。また、レスキューの服用でコントロール可能であったことから、生命に及ぼす危険性は極めて少ない安全な治療法であると考えられた。
さらに、緩和ケアチームの中に鍼灸師が参加して治療介入を行うことによって、薬物治療のみではペインコントロールが不十分な症例に対して、62%の症例において鎮痛効果を得たことは、苦痛を訴える患者にとって有用な治療手段の一つと考えられる。また、鍼灸治療は既存の西洋医学的な治療を妨げること無く、併用しても患者にとって身体的、精神的に負担や苦痛をほとんど与えることなく併用が可能である点は、特筆すべきメリットであるとも言える。さらに、鍼灸師の介在は、スピリチュアルケアや既存の医療スタッフと患者の間に存在する溝を埋める役割も果たす可能性がある症例も経験した。
結論
1)平成24年6月から25年3月末までの間に15症例(男11名、女4名)のべ175回の鍼灸治療介入を実施した。また、週に4回病院を訪れて、治療介入を行うことによって、より細やかに苦痛に体する対応が可能となった。特に患者や患者家族からの治療上の相談や不安、不満感を提示されるようになったことから、そういった情報をチームカンファレンスにフィードバックが出来るようになり、より円滑なケアが可能となった。2)集積し得た症例は、累積データで50例に達した。これらの症例は、ファイルメーカーで一定のフォーマットで閲覧できるよう、専用サーバーに保存した。3)同時に、治療法の症状別のマニュアルを作成し、緩和ケアを今後実施するための参考として資するよう配慮した。次年度の症例も含めて、より内容の豊富な緩和ケア鍼灸治療マニュアルを作成していく予定である4)緩和ケアはチーム医療で実践されている。したがって鍼灸治療において経験豊富なだけでなく、チーム医療が実践できるスタッフ出ることが要求される。そこで、緩和ケアのための鍼灸師向けのカリキュラムを策定した。今後パイロット的に実施して、より円滑で実践的な内容にグレードアップしていく予定である。5)鍼治療の客観的評価法として、睡眠ポリグラフ(ソムノスター)を購入した。しかし、主治医および患者より同意を得ることが極めて困難であったことから、健常成人での検討に応用したい。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232031Z