歯科医師国家試験における技術能力の客観的評価に関する研究

文献情報

文献番号
201232025A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科医師国家試験における技術能力の客観的評価に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-018
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 力(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大内章嗣(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 山本 仁(東京歯科大学口腔超微細構造学講座)
  • 古谷野 潔(九州大学大学院歯学研究院歯学部門口腔機能修復学講座)
  • 金田 隆(日本大学松戸歯学部放射線学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科医学・医療技術の進歩等に伴い、歯科医師として習得すべき知識や技術が大幅に増加するなかで、講義等に費やす時間の増加により、臨床実習時間の減少や質の低下が指摘されており、歯科医師国家試験に合格しても、臨床研修を実施するための基本的技術能力が担保されていないのではないかと危惧されている。そこで本研究では、現在の臨床実地問題が、歯科医師としての基本的技術能力を評価しうるものであるかの検証を行うとともに、より的確に技術能力を反映しうる臨床実地問題の出題方法・出題形式、解答形式等を検討することを目的とした。
研究方法
2年計画の初年度である平成24年度は現行の臨床実地問題と臨床技術能力の関係を検討することを目的に、近年の歯科医師国家試験で出題された臨床実地問題をベースとした模擬臨床実地問題を作成し、4歯科大学・歯学部の6年生のうち、調査研究参加への同意を得られた145人を対象に模擬試験を実施した。また、学生本人の同意のもと、各大学において修了判定に用いられる臨床実習成績のうち、絶対的評価が行われている素データの提供を受け、調査協力歯科大学・歯学部において模擬試験結果と臨床実習成績とのデータ・マッチングおよび匿名化処理を行った。匿名化・マッチング後のデータを用いて、各模擬問題の正答状況と各大学の臨床実習成績素データから算出した臨床実習成績(偏差値)との関連を統計的に分析した。研究の実施にあたっては各大学・歯学部の倫理審査会の承認を得た。

結果と考察
 模擬試験結果と臨床実習成績(偏差値)の相関分析の結果、全体の正答率と保存系、補綴系の2領域の正答率において臨床実習評価(偏差値)と有意な相関があり、現行の臨床実地問題は臨床実習における評価を識別するものとして有効であることが示された。
 また、診断に関する設問など、問題の内容により5つのカテゴリーに分類した正答率と臨床実習評価(偏差値)との関連では、「診断に関する設問」、「治療方針に関する設問」、「治療に必要な基礎知識に関する設問」の3つのカテゴリーにおいて有意な相関が認められた。
 各問題の正答率により分類した分析の結果では、正答率が85%以上95%未満、75%以上85%未満、65%以上75%未満のグループにおいて臨床実習評価(偏差値)との間に有意な相関が認められた。
 さらに、各問題毎に、臨床実習評価(偏差値)に対する識別指数(φ)を算出したところ、識別指数0.2以上を示す10問が抽出された。一方、各問題毎に臨床実習評価(偏差値)の関連についてPearsonの相関分析を行ったところ、有意(p<0.05)な相関を示す3問が抽出された。これらの問題は正答率が比較的高く、臨床実習や日常歯科臨床において経験することの多い症例を題材としたものが大半を占めていた。
 今回の結果を踏まえ、次年度の模擬問題作成等に反映し、より的確な臨床実地問題の出題方法・出題形式、解答形式等の検証・検討に生かしていく。
結論
 過去の歯科医師国家試験で出題された臨床実地問題をベースとした模擬臨床実地問題を作成し、4歯科大学・歯学部の6年生145人を対象に模擬試験を実施した。模擬試験の結果と各大学で修了判定に用いられる臨床実習成績から算出した臨床実習評価(偏差値)の関連性を分析したところ、
1)全体の正答率と保存系、補綴系の2領域の正答率において臨床実習評価(偏差値)と有意な相関が認められた。
2)診断に関する設問など、5つのカテゴリ別にみた正答率と臨床実習評価(偏差値)との関連では、①診断に関する設問、②治療方針に関する設問、⑤治療に必要な基礎知識に関する設問の3つのカテゴリにおいて有意な相関が認められた。
3)各問題の正答率により階級別に分類すると、正答率が85%以上95%未満、75%以上85%未満、65%以上75%未満のグループにおいて正答率と臨床実習評価(偏差値)の間に有意な相関が認められた。
4)各模擬問題毎に臨床実習評価(偏差値)に対する識別指数(φ)を算出すると、識別指数0.2以上を示す10問が抽出された。
5)各模擬問題の正誤状況と臨床実習評価(偏差値)の関連性についてPearsonの相関係数による分析を行った結果、有意(p<0.05)な相関を示す3問が抽出された。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232025Z