文献情報
文献番号
201232010A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科疾患の疾病構造及び歯科医療需要等の変化に応じた新たな歯科医療の構築に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 尾崎 哲則(日本大学歯学部)
- 小坂 健(東北大学大学院歯学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢期の地域住民における口腔機能低下の現状と、今後の歯科医療の供給体制を支える20歳代の歯科医師のキャリア動向、ならびに歯科補てつ物製作におけるチームコミュニケーションの現状を明らかにすることにより、超高齢社会における歯科医療の需要と今後の歯科医療の提供体制の在り方について検討を行った。
研究方法
①高齢期の地域住民における口腔機能低下リスク保有状況の検討:調査対象者は、宮崎県北部地域に居住する585名の自立高齢者と北海道後志地域に居住する288名の自立高齢者である。誤嚥リスクの評価には、我々が開発した地域高齢者誤嚥リスク評価指標(DRACE)を用いた。
②20歳代歯科医師のキャリア展望に関する調査研究:対象者を全国の臨床研修歯科医師2,323名とし、1,029名より回答を得た。調査にあたっては、自記式質問紙を用いた留置調査を実施し、「将来の開業の意向」、「開業医の子弟かどうか」ならびに「今後、重点的に取り組みたい領域」等について、現時点での将来展望を調べた。
③歯科補てつ物製作における歯科医師と歯科技工士間のコミュニケーションの現状に関する調査:東京都歯科医師会に加盟している歯科診療所管理者2,000名と、東京都歯科技工士会に加盟している歯科技工所管理者825名の両者に対して、自記式質問紙を用いた留置調査を行い、歯科技工指示書の記載・保管状況、現有スタッフ、歯科技工指示書による情報共有についての評価等の項目について把握した。歯科診療所管理者調査の回収率は29.6%、歯科技工所管理者調査の回収率は18.6%であった。
②20歳代歯科医師のキャリア展望に関する調査研究:対象者を全国の臨床研修歯科医師2,323名とし、1,029名より回答を得た。調査にあたっては、自記式質問紙を用いた留置調査を実施し、「将来の開業の意向」、「開業医の子弟かどうか」ならびに「今後、重点的に取り組みたい領域」等について、現時点での将来展望を調べた。
③歯科補てつ物製作における歯科医師と歯科技工士間のコミュニケーションの現状に関する調査:東京都歯科医師会に加盟している歯科診療所管理者2,000名と、東京都歯科技工士会に加盟している歯科技工所管理者825名の両者に対して、自記式質問紙を用いた留置調査を行い、歯科技工指示書の記載・保管状況、現有スタッフ、歯科技工指示書による情報共有についての評価等の項目について把握した。歯科診療所管理者調査の回収率は29.6%、歯科技工所管理者調査の回収率は18.6%であった。
結果と考察
高齢期の自立高齢者の誤嚥リスク保有者は、前期高齢者では35.6%、後期高齢者では42.6%に達しており、加齢とともに誤嚥リスク保有者率は有意に増加した。健康な自立高齢者においても、後期高齢期では4割以上の者で誤嚥リスクを有することより、特に後期高齢者においては、誤嚥リスクを定期的にモニタリングする必要性が示唆された。
今後の歯科医療を担う臨床研修歯科医師において、将来的に開業したいと回答した者は40.3%であり、やや開業したいと回答した26.1%の者を含めると、7割弱の者が開業医を目指しており、相対的にキャリアパスの幅は小さいと考えられた。需要が増加すると考えられる分野としては高齢者歯科や在宅医療等が高率であったが、今後取り組みたい分野としては歯科医療は予防歯科や歯周病を挙げたものが多かった。
歯科補てつ物製作におけるチームコミュニケーション調査では、歯科技工指示書のみで十分な情報共有が図られていると回答した者の割合は、歯科技工所管理者では歯科診療所管理者と比較して有意に低く、約四分の一のみであった。これらの結果より、質の高い補てつ物製作のためには、ICTなどを活用して患者の口腔内情報を補う必要があると考えられた。
今後の歯科医療を担う臨床研修歯科医師において、将来的に開業したいと回答した者は40.3%であり、やや開業したいと回答した26.1%の者を含めると、7割弱の者が開業医を目指しており、相対的にキャリアパスの幅は小さいと考えられた。需要が増加すると考えられる分野としては高齢者歯科や在宅医療等が高率であったが、今後取り組みたい分野としては歯科医療は予防歯科や歯周病を挙げたものが多かった。
歯科補てつ物製作におけるチームコミュニケーション調査では、歯科技工指示書のみで十分な情報共有が図られていると回答した者の割合は、歯科技工所管理者では歯科診療所管理者と比較して有意に低く、約四分の一のみであった。これらの結果より、質の高い補てつ物製作のためには、ICTなどを活用して患者の口腔内情報を補う必要があると考えられた。
結論
後期高齢者の今後の増大を踏まえると、口腔機能面に着目した歯科医療ニーズは非常に大きく、対応が急務であることが誤嚥リスクの現状評価から明確になった。しかし、臨床研修歯科医師のキャリア展望はやや保守的であり、摂食・嚥下等への関心は相対的に低い傾向にあった。一方、歯科補てつ物製作における歯科医師と歯科技工士間での認識については乖離が認められ、歯科技工指示書のみでは十分な情報共有がなされていない現状が明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2013-05-07
更新日
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