第11次都道府県へき地保健医療計画の実行支援とその評価に関する研究

文献情報

文献番号
201232009A
報告書区分
総括
研究課題名
第11次都道府県へき地保健医療計画の実行支援とその評価に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
梶井 英治(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 隆浩(長崎大学 医学部)
  • 谷 憲治(徳島大学 医学部)
  • 井口 清太郎(新潟大学 医学部)
  • 今道 英秋(自治医科大学 医学部)
  • 澤田 努(高知県高知市病院企業団立高知医療センター 地域医療科)
  • 神田 健史(自治医科大学 医学部)
  • 森田 喜紀(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 第11次へき地保健医療計画の内容には、依然、ばらつきが見られ、へき地保健医療の一層の充実には、さらなる実行支援を行う必要があると思われた。そのため、研究者らは「都道府県第11次へき地保健医療計画の進捗状況調査」や、「全国へき地医療支援機構等連絡会議の支援」、「都道府県個別訪問による技術的支援」等による促進・阻害因子、そして特徴的事例の抽出・分析や、計画の実行を支援する研究を行った。
研究方法
 平成24年度は以下の(1)~(3)を行った。
(1)都道府県第11次へき地保健医療計画の進捗状況調査
 へき地を有する43都道府県のへき地保健医療行政担当者に自記式アンケートを郵送して行った。「へき地医療支援機構・へき地医療拠点病院・へき地診療所の実態」、「第11次へき地保健医療計画の進捗状況」、「へき地歯科医療について」、「へき地看護について」、「へき地保健医療対策に関する協議会の設置と活動状況」、「地域医療支援センターについて」、「住民に対する取組」について、それぞれ設問を作成した。平成24年7月2日に対象都道府県に依頼、締切りは平成24年9月7日とした。
(2)全国へき地医療支援機構等連絡会議の支援
 平成24年10月12日に開催された全国へき地医療支援機構等連絡会議で、都道府県第11次へき地保健医療計画の進捗状況調査の結果を基にして、全参加者をへき地医療に関するテーマごとに6グループに分けてグループワークを行った。そのファシリテートを行い、具体的解決策の深化や新たな気づきを促した。
(3)都道府県個別訪問による技術的助言
 平成25年1・2月に、研究分担者・協力者で都道府県個別訪問を行い、へき地保健医療計画担当者、へき地医療支援機構担当者と面談した。事前に用意したチェックリストを用いて進捗状況を把握し、技術的助言を行った。また、計画を実行する上の促進・阻害因子や特徴的事例を抽出した。
結果と考察
 「都道府県第11次へき地保健医療計画の進捗状況調査」では、およそ半数の都道府県が、へき地医療従事者を育成・確保するための後期研修プログラムやドクタープールに取組んでおり、さらに多くの都道府県でへき地医療支援機構の設置やへき地保健医療対策に関する協議会の開催が行われていることが明らかとなった。一方、へき地医療での看護師確保や、へき地保健医療計画に住民・患者の視点を反映させるための取組に関する調査では、都道府県と市町村の連携や役割分担という新しい視点で検討する必要があることが示唆された。
 「全国へき地医療支援機構等連絡会議の支援」では、グループワークのファシリテートを行った。ドクタープールやへき地医療への動機づけ、へき地医療従事者を育成するためのキャリアデザイン等、各グループで課題に対する方策などの議論が深められ、課題への認識の深化や取組への新たな気づきを得ることができた。そして、各グループにおける議論の内容を参加者で共有することができた。
 「都道府県個別訪問」では、へき地を有する都道府県を訪問した。その結果、都道府県内の他組織との関係性・地元大学の理解・へき地医療支援機構の働きが促進因子として抽出された。一方、組織間の不十分な連携・拠点病院の診療機能低下・医師等の専門医志向・へき地医療での歯科や看護の低調な取組が阻害因子として抽出された。また、少数ではあったが地域枠卒業医師のキャリアデザインや住民を巻き込んだ取組が促進因子となっている都道府県もあった。他に、訪問時に各都道府県の特徴的事例の抽出や技術的助言を行うことができた。他組織との関係性が促進因子の1つである要因として、関係者間での多様性および対話が考えられた。同じく全国へき地医療支援機構等連絡会議で行われたグループワークでも、多様性と対話を重視しており、その結果として調査では見られなかった課題の認識・解決策についての深化を得ることができた。
結論
 第11次都道府県へき地保健医療計画の実行に関する促進因子では、「他組織との関係性」が最も重要であった。今後、この促進因子を踏まえて、へき地保健医療への取組に関する都道府県格差を解消するためには、各都道府県で多様な参加者で構成されたへき地保健医療対策に関する協議会の開催に取組み、個々の実情に応じたテーマを設定し、へき地保健医療計画の進捗状況の把握や評価を行い、次の施策へ反映させることが望まれる。
 また、医療の受益者であり参加者でもある住民の視点をへき地保健医療対策に取り入れる必要がある。そのためには、従来のように都道府県を主体とした施策だけでなく、住民団体の支援といった市町村が主体となる役割を明確にし、都道府県と市町村との役割分担を推進する新たな視点が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232009Z