希少難治性神経疾患の疫学、病態解明、診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201231181A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性神経疾患の疫学、病態解明、診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中川 正法(京都府立医科大学 大学院・医学研究科・神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 蜂須賀 研二(産業医科大学医学部 リハビリテーション医学)
  • 山下 敏彦(札幌医科大学 医学部 整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は先行研究の結果を踏まえて、神経内科医、整形外科医、リハビリテーション医、CMT患者会と協力して、CMTの治療・ケア・研究に関する情報を医療関係者とCMT患者が共有するシステムとCMTの病態解明と治療法開発を主目的とする。

研究方法
①国内外のCMT患者診療状況の調査、②CMTに関する啓発活動(CMT診療マニュアルの普及、啓発パンフレットの作成、ホームページの充実、CMT公開講座の開催、CMT相談活動)、③就労支援活動、④ロボットスーツHALⓇ(CYBERDYNE 株)のCMT患者への装着および改良の取り組み、⑤CMT1A患者に対するアスコルビン酸投与前後での末梢神経軸索興奮性(Qtracによる測定)の検討、⑥CMT患者の手・足変形に対する外科的療法、リハビリテーション、装具療法のガイドライン化への取り組み、⑦関連研究班との共同によるCMTの遺伝子診断・分子疫学研究の推進、⑧CMTの病態解明・治療法開発。
結果と考察
① CMT患者を対象とした自己記入式アンケート調査:131名のCMT患者から回答を得た。発症年齢は平均27.1歳であったが、若年層と40歳台の二層性のピークが存在した。初発症状は76.2%が下肢症状であった。76.1%の患者がmodified Rankin scale (mRS) 0-3であり、車椅子レベルの患者は約2割であった。回答者の35.7%が就労中、15.1%は主婦、8.7%は就学中であり、60%のCMT患者は何らかの社会活動に参加していた。②CMTに関する啓発活動:CMT診療マニュアルの普及のために、CMTに関連する演題を日本整形外科学会、日本神経学会、日本末梢神経学会等で発表した。また、CMT友の会の会合等に出席し、CMT研究の最新の情報を知らせると共に、本マニュアルのCMT患者・家族への普及を行った。先行研究班のホームページ(http://www.cmt-japan.com/index.html)を引き継いで、今年度のCMT市民公開講座などの情報の公開を行った。 本年度は、札幌会場平成24年10月8日、岡山会場平成24年11月4日、東京会場平成25年1月20日で行った。東京会場は58名で過去最高の参加数となった。③就労支援活動:CMT患者が就労する上での医学的問題点の問い合わせに対応した。④ロボットスーツHALⓇ(CYBERDYNE 株)のCMT患者への装着および改良の取り組み: 厚労省難治性疾患克服研究事業「神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための 新規医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボットに関する治験準備研究班」(研究代表者中島 孝先生)と共同で取り組んだ。⑤CMT1A患者に対するアスコルビン酸投与前後での末梢神経軸索興奮性(Qtracによる測定)の検討:アスコルビン酸20mg/kg/日、48週間の経口投与前後でのQtracを用いた末梢神経軸索興奮性を5例のCMT患者について検討中である。⑥CMT患者の手・足変形に対する外科的療法、リハビリテーション、装具療法のガイドライン化への取り組み:CMT患者の足部の3次元的アライメントや靭帯の役割を解明する目的で、CTによる3次元画像解析と、未固定人体標本を用いた足関節靭帯の生体力学的研究を行った。⑦関連研究班との共同によるCMTの遺伝子診断・分子疫学研究の推進:臨床的に遺伝性ニューロパチーが疑われた自験例75例(男41例、女34例)について遺伝子解析をおこなった。遺伝子解析では73例中、PMP22重複が28例(38%)と最も多く、NFL変異3例、MFN2変異4例、EGR2変異2例、MPZ変異3例、PMP22欠失2例、DNMT1変異1例、TTR変異1例、TFG変異1例など計51例(70%)に遺伝子異常を認めた。今後、エキソーム解析を含めた詳細な検討を計画している。⑧CMTの病態解明・治療法開発:遺伝子異常が明らかなCMTに関して、京都大学iPS研究センターと共同研究が進行している。
結論
本研究では、神経内科医、整形外科医、リハビリテーション医およびCMT患者会と協力して、「CMT診療マニュアル」の普及、ホームページの充実と研究内容の公開、国内におけるCMT患者の療養状況の調査、ロボット技術のCMT患者への活用、CMTの分子疫学研究、CMT遺伝子関連iPS細胞の研究、CMTに関する公開講座、CMT相談活動(遺伝カウンセリングを含む)などを行った。本研究は、CMTに関する医療関係者の理解度の向上、CMT患者の療養環境の整備・向上および就労を含む自立支援、CMTの分子疫学の解明・新規治療法への発展に確実に寄与し、適切な医療資源の活用を通じて国民全体の医療福祉に貢献するものである。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231181Z