中性脂肪蓄積心筋血管症に対する中鎖脂肪酸を含有する医薬品の開発

文献情報

文献番号
201231167A
報告書区分
総括
研究課題名
中性脂肪蓄積心筋血管症に対する中鎖脂肪酸を含有する医薬品の開発
課題番号
H24-難治等(難)-一般-066
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
平野 賢一(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 土井 健史(大阪大学 大学院薬学研究科)
  • 植田 初江(国立循環器病研究センター 病理部)
  • 惠 淑萍(北海道大学 大学院保健科学研究院 )
  • 間賀田 泰寛(浜松医科大学 メディカルフォトニクス研究センター)
  • 裏出 良博(大阪バイオサイエンス研究所)
  • 千葉 俊明(琉球大学 大学院医学研究科)
  • 橋本 守(大阪大学 大学院基礎工学研究科)
  • 財満 信宏(近畿大学 農学部応用生命化学科)
  • 瀬川 波子(福岡大学 医学部)
  • 加藤 良仁(興和株式会社製品戦略部 )
  • 高木 敦子(国立循環器病センター分子薬理部  )
  • 谷本 昭英(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
33,630,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中性脂肪蓄積心筋血管症 (TGCV) は、心筋及び冠状動脈に中性脂肪が蓄積する結果、青年~壮年層において重症心不全、不整脈、冠動脈硬化症を来す予後不良の疾患である。原発性TGCVの原因として、細胞内トリグリセリド(TG)分解酵素であるATGLの遺伝的欠損が知られているが、その病態形成には心筋細胞内TG含量の増加が関与していると考えられている。本研究の目的は、強力な細胞内TG含量低下作用を有するカプリン酸を主成分とする医薬品を開発することである。
研究方法
1) TGCV診断法の開発i)ATGLリパーゼ活性の測定法の開発を行った。ii)続発性TGCV症例の腎動脈を用い、病理学的検討を行った。2)カプリン酸投与方法の検討i)マウスを用い、飼料へのカプリン酸添加の摂食に対する影響を検討した。ii)TG10をマウスに経口投与し、小腸灌流法を行い、門脈およびリンパ管灌流液内でのカプリン酸含有TG(キメラTG)を測定した。3)トリカプリンの安全性の確立i)ビーグル犬にTG10 150および1500mg/kgを7日間反復投与実験し、その毒性を検討した。4)カプリン酸の薬物動態に関する検討i)長鎖脂肪酸のトレーサーである[123I]BMIPPを用いて、マウス心のイメージングが可能であるかを検討した。さらにATGL欠損マウスを用いて、ATGL欠損および中鎖脂肪酸TG(MCT)投与の[123I]BMIPPによるイメージングに与える変化を観察した。ii)C-11-カプリン酸を作成し、その体内動態を検討した。iii)Orbitrap質量分析計を用いて、細胞内、組織内、血清中のカプリン酸及びその代謝物のモニタリング系(定性 LC/MS法)を構築した。5)続発性TGCVモデル動物の確立i)ATGL欠損症患者由来iPS細胞および正常iPS細胞をNOD/SCIDマウスに移植し、奇形腫を形成させた。ii)ストレプトゾトシン投与によりマイクロミニブタの糖尿病モデルが作成できるかを検討した。6)原発性TGCVの国際臨床試験を視野に入れ、国際症例登録システムの構築を開始した。(倫理面への配慮)本研究は、「世界医師会ヘルシンキ宣言」(2008年ソウル修正版)及び「臨床研究に関する倫理指針」(平成20年7月31日改訂版)に従い、行った。
結果と考察
1)TGCVの診断法の開発i)ATGLリパーゼ活性測定系の開発:COS1細胞に発現させたヒトHis6-ATGL蛋白のリパーゼ活性を検出できた。今後、多核白血球などでのATGL活性の測定法をすることで、ATGL欠損症のより簡易な診断法を開発することを目標としている。ii)続発性TGCVの病理学的検討:糖尿病患者由来腎動脈内膜において、平滑筋へのTG蓄積を示すことができた。2)カプリン酸投与方法の検討i)カプリン酸4%含有食では摂食の減少を認めた。したがって、カプリン酸そのものを経口で投与するのでは、投与量に制限があるものと考えられた。トリカプリン(TG10)の形で投与する、製剤をカプセル化するなどの工夫が必要と考えられた。ii)TG10投与マウスの小腸リンパ管灌流液内にTG10およびキメラTGを検出した。経口投与されたTG10は、大部分が口腔内・胃で加水分解され、カプリン酸の形で小腸から門脈に入り、肝臓でβ酸化により消費される。本研究により、経口投与されたTG10の一部は、TG10およびキメラTGの形で小腸リンパ管に入り、最終的に体循環に入っていくことが示唆された。口腔内・胃での加水分解を免れる工夫として、腸溶性カプセルを利用するなどの方法を用いることによって、よりbioavailabilityの高い製剤を開発する予定である。3)トリカプリンの安全性の確立i)イヌでのTG10の安全域は1500mg/kgの7日間反復投与よりは高いと考えられた。4)カプリン酸の薬物動態に関する検討i)ATGL欠損マウスでは、心筋への[123I] BMIPP集積の増加を認めたが、MCT含有食により、この増加は抑制された。ii)α-C-11-カプリン酸を作成し、そのマウス体内での動態をみることに成功した。今後、カプリン酸の動態のより詳細な把握が可能となるシステムを開発していく。5)続発性TGCVモデル動物の確立i)ATGL欠損症患者由来iPS細胞により形成された奇形腫内の平滑筋細胞に中性脂肪蓄積を認め、ヒトATGL欠損症の病態の奇形腫内での再現を確認した。ii)マイクロミニブタ糖尿病モデルの作成に成功した。げっ歯類はヒトと脂質代謝が大きく異なるので、続発性TGCVのモデル動物の確立が必要と考えている。
結論
TGCVに対する中鎖脂肪酸を含有する医薬品の開発のため、安全性・投与方法に関する検討を行った。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231167Z