慢性活動性EBウイルス感染症の発症機構解明と新規治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201231147A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性活動性EBウイルス感染症の発症機構解明と新規治療法開発に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-046
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 成悦(独立行政法人国立成育医療研究センター 母児感染研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森尾友宏(東京医科歯科大学)
  • 清水則夫(東京医科歯科大学)
  • 新井文子(東京医科歯科大学)
  • 木村宏(名古屋大学)
  • 児玉栄一(東北大学)
  • 今留謙一(独立行政法人国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性活動性EBウイルス(EBV)感染症(CAEBV)について、1) 原因遺伝子の探索、2) 新規治療薬の検索、3) CD4+ T細胞を標的とする新規治療法の検討、4) EBV由来microRNA (miRNA) のバイオマーカーとしての応用、5) 成人症例に対する骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(RIC)の探索的臨床研究、6) EBVによるT/NK細胞の増殖誘発機構解明を主な目的とした。
研究方法
1) 原因遺伝子の探索は次世代シークエンサーによるエクソーム解析によった。2) 新規治療薬の検索は、EBVチミジンキナーゼ発現細胞に対する選択的毒性を指標とするスクリーニングによった。3) 新規治療法の検討は、CAEBVモデルマウスに対する抗CD4抗体の治療効果を指標として行った。4) 血漿中miRNAは逆転写後にリアルタイムPCR法を用いて測定し、EBV関連疾患との関連を検討した。5) 成人症例に対するRICの探索的臨床研究は、東京医科歯科大学において倫理委員会の承認を得て行った。6) 増殖誘発機構の解析は、CAEBV由来のEBV感染T/NK細胞株とin vitroでEBVを感染させたヒトT細胞株を用いて行った。
結果と考察
1) 今年度はCAEBV患者およびその父母の合計6名からDNAを採取し全エクソン領域の配列を決定した。現在バイオインフォーマティクス解析により原因遺伝子の探索を進めている。2) EBVがコードするチミジンキナーゼによりリン酸化されてはじめて細胞毒性を発揮する薬物をスクリーニングする実験系を開発した。この系をもちいて、EBV感染細胞に対して選択的毒性を有する薬物S-FMAUを見いだした。S-FMAUをCAEBVなどEBV関連疾患の治療薬として応用するための基盤研究を計画している。3) CAEBVモデルマウスに抗CD4抗体を投与することにより、末梢血EBV DNA増加と体重減少の阻止、延命効果などの治療効果が認められ、CD4+T細胞を標的とする治療法の可能性が示された。今後、CD4+ T細胞が産生する分子の中から標的分子を絞り込む必要がある。4) CAEBV患者ではmiR-BART2-5pとmiR-BART5が、伝染性単核症患者ではmiR-BHRF1-1とmiR-BHRF1-2が血漿中に有意に上昇していたため、バイオマーカーとしての応用を検討している。5) 成人7症例に対するRICの成績を検討したところ、5例が寛解を得、3年全生存率は71.4%であったことから、RICは成人CAEBVにも有効であると考えられた。6) EBVがコードするmiR-BART9や、EBVが宿主細胞からの発現を誘導するβインテグリン、INF-γ、IL-6、TNF-αなどがEBV感染T及びNK細胞の増殖に重要な役割を果たすことが示唆されたため、治療標的分子としての応用が考えられた。
結論
CAEBV原因遺伝子の探索を進めた。血漿中EBV miRNAをCAEBVのバイオマーカーとして利用する可能性を示した。新規CAEBV治療薬候補を見いだすと同時に、新たな分子標的候補を同定した。RICは成人のCAEBVに対しても有効でることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231147Z